Ⅰ章 脳 Ⅱ章 頭頸部
Ⅲ章 脊 椎
Ⅳ章 胸 部
Ⅴ章 腹 部
Ⅵ章 骨盤部
Ⅶ章 四 肢
解剖学は古くから今日まで医学の基本であり続け,CT・MRI を主とした画像診断は現代医療の要となっている.解体新書,ダ・ヴィンチ,ミケランジェロの解剖図譜の例を待つまでもなく,人体深層の実態把握のために困難な探究が行われてきたが,科学技術の進歩はこの分野でも大きく様相を変化させた.メスの力を用いずに,人体内部の形状が光の下に照らしだされ,“個人ごとの解剖図” が実用のため容易に作成される.
CT・MRI の元データからワークステーションによりつくられる3 次元立体画像は,初期の患者への説明,手術シミュレーションへの応用から,最近の飛躍的な精度向上により適応範囲が広がり,診断にすら用いられるようになっている.全体像把握には最適な観察法である.しかし,現在の撮影室,読影室,診療室で診断の際に圧倒的に多く行われる行為はモニター上での体軸横断面スクロールである.冠状断面,矢状断面も解剖構造によってしばしば使われる.まず割って見て,病態を直接的に観察できる断層面を子細に見,そしてそれを立ち止まりながら連続的に観察する.立体構造を無意識下に想像してなされる高度の作業である.
本書の最大の目的は,各臓器構造そして臓器間の関連が理解しやすい3 次元画像から,この診断に最も有用な断層面をよりやさしく深く理解し学ぶことにある.実際に元画となった2 次元画像と,これよりつくられた3 次元画像との相互関係を通してである.
CT・MRI とその断層面は,機械的配置を避け,それぞれの部位で診断に適するものを柔軟に選択掲載した.また解剖学的構造と生理学的役割,そして重要な病理学的事項の略解も理解の補助のため随所にNOTE とし配した.さらに解剖学的用語の語源も可能なかぎり挿入し,解剖学という古い学問への尊敬と,医用画像を通じて想像する世界を,今いる閉ざされた病院内の小部屋を超え拡げてほしいとの願いも込めた.
本書は杏林大学医学部と保健学部の教員,医師,技師を中心としてつくられたものだが,株式会社AZEと東芝メディカルシステムズ株式会社,そしてメディカル・サイエンス・インターナショナル編集部の正路修氏,後藤亮弘氏の多大な協力なしでは上梓できなかった.医療は直接患者に接する病院職員にとどまらず,薬品,機器,教育出版関係者など多業種にわたる医療人のチームワークで成り立つ.その基本となる画像解剖にかかわる人々の世界は広くて深い.本書が,近い将来仲間となる学生を含めたすべての医療人へ,この魅力尽きない画像解剖学を広く深く学ぶ手掛かりをお示しできればこの上ない幸いである.
2014 年1 月
杏林大学医学部 放射線医学教室 教授
似鳥 俊明