1. 序 説特発性間質性肺炎とそのなかにおけるIPF/UIPの位置づけ
2. 呼吸器内科医の立場からみた特発性肺線維症の画像診断
I. 慢性線維化性間質性肺炎の病理と画像所見
3. 慢性線維化性間質性肺炎と蜂巣肺の病理
4. 間質性肺炎の画像診断を追求するための肺既存構造
5. 蜂巣肺と牽引性気管支拡張の画像-病理相関および鑑別:3次元表示などの有用性
6. 蜂巣肺のCT診断
7. 慢性間質性肺炎に対するCADの現状と展望
II. IPF/UIPとその周辺疾患の画像診断
8. IPF/ UIPの病理
9. IPF/UIPのCT診断
10. 二次性UIPの画像診断 1) 膠原病とその関連疾患
11. 二次性UIPの画像診断 2) 慢性過敏性肺炎と塵肺
12. 肺気腫合併間質性肺炎診断の問題点
III. IPF/UIPの合併症
13. IPF/UIPの急性増悪のCT診断と病勢評価
14. IPF/UIPの合併症のCT診断
本書は,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)とその周辺の間質性肺炎の画像診断の現状と将来への展望をまとめる目的で企画された.
IPFはその原因が不明で,病理学的にUIPパターンを示す代表的な慢性線維化性間質性肺炎の一型であり予後不良な疾患として知られている.最近,IPF/UIPに関しては,その診断治療を巡っていくつかのトピックがある.診断に関しては,2011年にIPF/UIPの診断・治療に関する国際ガイドラインの刊行,2013年に特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias:IIPs)の国際分類の改訂が行われた.これらのガイドラインのなかでは,IPF/UIPの診断に関して画像診断が非常に重要視されており,multidisciplinary diagnosis(MDD)の重要な要素を占める.しかし,本書のなかでも述べられているように現在のIPF/UIPの画像診断基準は不十分なものであり,今後も診断基準をbrush upしより良い診断基準を構築していかなければならない.
特にIPF/UIPの病理所見のhallmarkである小葉辺縁優位の線維化病変と空間的時間的異時性が画像診断所見ではどのように表現されるかを理解することが重要になろう.またIPF/UIPの重要な画像所見である蜂巣肺の画像診断に関しても,診断における問題点と3次元表示を利用した所見の理解の可能性が期待される.IPF/UIPの診断に際して,過度に蜂巣肺に頼らないことが必要であり,現在の画像所見では蜂巣肺に類似した所見を示す他の病態が多数あることを理解する必要がある.
言うまでもなく,びまん性肺疾患の画像診断の基礎は二次小葉に理解にあるが,従来間質性肺炎は二次小葉を基礎とする画像診断では理解できないものとされてきた.しかし,間質性肺炎の病理と画像の詳細な対比により,間質性肺炎の画像も小葉,細葉を基礎として理解しうることが明らかにされてきた.小葉辺縁優位の線維化を示すIPF/UIPでなぜ小葉中心部に異常を示しうるのかも理解できるようになった.その要点については,間質性肺炎の画像,病理の項目に十分に記載されているので熟読いただきたい.
最近のIPF/UIPを巡る大きなトピックスのひとつに薬物治療の進歩がある.世界に先駆けて本邦で承認された抗線維化薬ピルフェニドン(pirfenidone)の有効性が示されているが,今後多くの治療薬の開発が進むものと思われ,IPF/UIPの予後にも改善が期待される.IPF/UIPの予後が現在より改善されそのmanagementも大きく変化し,診断についても基本的考え方や診断基準の更改が必要となる時代も近づきつつあると期待している.
2015年7月
編者を代表して 酒井文和
2015-11-09
153ページ 図9-2の説明文
2015-11-09
155ページ 図9-4の説明文
2015-11-09
156ページ 図9-6の説明文