Part I 術前
Part II 合併疾患
Part III モニタリング
Part IV 全身麻酔
Part V 特殊手術の麻酔
Part VI 心血管手術と胸部外科手術
Part VII 脳神経外科麻酔/神経集中治療
Part VIII 区域麻酔
Part IX 術後の急性痛
Part X 小児
Part XI 産科
Part XII クリティカルケア
Part XIII 早見表
3 年前の秋,最初に本田先生から監訳の話が出てきたときは,またいつもの妄想癖が始まった,と聞き流していた。暫くすると,編集諸氏を巻き込んで再燃させてきたので,本気かしら? とも思ったのだが,彼らの顔つきを見ていると,これは要注意とすぐにわかった。直観的に,この本を気に入っているが,具体的に翻訳するための計画を立てている気配がない。大変なことに巻き込まれる前に,きちんと断る理由を見つけよう。そう思って,初めて原書をパラパラとめくってみたのだった。
大変なことになる,とわかっていながら,結局承諾してしまったのは,私自身が,この本を指導書として使いたい,と思ってしまったからである。本書のメリットは,麻酔の教科書として守備範囲が広いこと,基礎を網羅していること,コンパクトにまとまっていることである。この点において,同類の教科書は見当たらない。これがわれわれが従来の書籍に屋上屋を架すという暴挙に出た理由である。
かくして,各章それぞれ,エキスパートの先生方からのご賛同と多大なるご尽力を得て,大変なことが成し遂げられるに至った。面識もない著名な先生方のご協力を得られたのは,本田先生と編集諸氏がはかり知れない人脈を駆使して下さった故であり,この場を借りて,すべての先生方に心からの感謝を申し上げたい。結果として,原書に劣らない,臨床の現場の息遣いが伝わるような教科書となったと感じている。
この10 年余りで,日本語の麻酔の教科書は飛躍的に充実し,洋書をひも解かなければ得られない知識はほとんどなくなってしまった。また,かつて,後で調べようと思うことと,もう絶対に調べないこととはほぼ同義であったが,インターネットは多大な恩恵をもたらした。逆にいつでも調べれば簡単にわかってしまう時代,私たちの頭からは常識や基礎知識,というべきものまで抜け落ちてきた。二つ以上の知識を組み合わせて頭の中で理論を構築する力,未来を予測する力などは,基礎知識が網羅されてこその応用力だが,指導医クラスの医師でも心もとなくなっているのが現状ではないだろうか?
ひとつひとつのテーマに関しての深い掘り下げは他書に譲り,最新の知見はインターネットに譲る。卒年にかぎらず,麻酔科医がそれぞれひとり1 冊買っていただく必要もない。1 施設に1 冊で良いから,麻酔科控室に置き場所を作り,皆で読んでいただきたい。まずスタッフ全員で通読し,基礎知識として共有していただきたい。
簡単な教科書と感じるのであれば,すべて,内容をそらんじてみていただきたい。
ひとり10 回ずつくらい通読すれば,知識が血の通った言葉として口をつくようになることと思う。また,麻酔科医だけでなく,周術期医療にかかわる看護師,救命現場の医師,看護師,病棟看護師,ひいては外来部門の看護師などなどにも,本書の一部をパラパラとめくっていただきたい。
あとは,余白の部分に,オリジナルの文献や,最新の知見に関しての糸口,各施設ごとの決まりごとなど,各施設で書き込んでいってはいかがだろうか(日本の現状にそぐわない記述もこの本ではそのまま翻訳している)。
若手の医師たちが,朝のカンファレンスで答に行き詰まったとき,麻酔中に問題に直面したとき,術前評価を外科医たちとどう議論しようかと作戦を練るときに,指導医たちが,このページを見ておきなさい,とその場で開いて見せられるような存在に,この本を育ててゆきたいと考えている。
歴史に学ぶこと,経験を積み重ねること。未来を切り開く良い麻酔科医になる最短の道のりは,この二つを確実に日々繰り返すことである。本書が,より多くの麻酔科医にとって,その一助となれば幸いである。
編集諸氏に怒られる前に,本書がぼろぼろになる前には,もう1 冊買い直す,ということも申し添えておきたい。さらには本書が初版のみで終わることなく,改訂を繰り返して,本当の意味でのText Book に成長することを祈りたい。
2015 年8 月
大畑めぐみ
小生が医者になった頃に比べると,書店の棚に麻酔関係の邦文書籍がきわめて多く並んでいる昨今である。一方で,専門にかかわらず,洋書の姿が激減している。流通の利便性が向上したことも一因だろうが,某書店で聞くと,“ 読む人がいない,買う人がいない,置いても売れない” と確かに日本語で知識が容易に吸収できればそれにこしたことはないだろうが,会議も英語,社内の会話も英語だと云々する趨勢に逆行するような気もする。巷に溢れる,麻酔学の教科書,マニュアル等々の良書にあえて“ 屋上屋を架す” ように本書を邦訳した理由は若手諸氏が好むビジュアルが優れていること,麻酔だけにかかわらず,日々の臨床を行う基礎となる生理学的事項や他科専門領域の記述も優れていた,冗漫な記述が少なく,的確な図表にコンパクトにされていることなどである。
無論,難点も少なからずあり,本書中でのみ通用するような略語を多用していること,記述された公式などの誤りなど散見された。が,こうした難点を含めても,本書のような“Guide” いわゆる辞書的な本を世に出す意味合いは高いと思われる。原書も900 頁を超える力作,邦文訳も大部ではあるが,文字離れが危惧される今日この頃,日常臨床の向上のために本書を“ 辞書” がわりに手垢で汚していただけると幸いである。
2015 年8 月
本田 完
2015-12-01
xiiiページ 下から2行目 訳者 鈴木邦夫 担当章
(誤) (38, 209)
(正) (38, 209, 217)
2015-12-01
xiiiページ 下から1行目 訳者 鈴木誠也 担当章
(誤) (206)
(正) (206, 214, 215)