Chapter 1 HIV感染とは
Chapter 2 HIV 感染の診断と評価
Chapter 3 HIV感染の治療
Chapter 4 治療失敗と耐性検査
Chapter 5 日和見感染(OI)の予防と治療
Chapter 6 HIV 感染の合併症
Chapter 7 HIV 感染と妊娠
Chapter 8 曝 露 後, 曝 露 前 予 防
Chapter 9 抗レトロウイルス薬,抗B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)薬,抗 C 型肝炎ウイルス(hepatitisC virus:HCV)薬 サ マ リ ー
米国でよく使われている“HIV Essentials” の翻訳版をお届けできるのはとてもうれしいことです。
HIV / AIDS は1981 年にみつかった病気で,訳者はこの問題と1992 年ごろから取っ組み合ってきました。当時は「死に至る病」であったエイズが,現在ではコントロール可能な疾患になり,天寿をまっとうすることも不可能ではありません。米国など多くの国が全力を傾けて研究を重ねてきたおかげで,この疾患の予後は劇的に改善しました。
まだHIV 感染症の「治癒」は困難な状況です。「治癒したのでは」と考えられていた男の子,いわゆる「ミシシッピ・ベイビー」も2014 年に血液からHIV が検出されてしまいました。効果的なワクチンもまだありません。しかし,それでもこんなに短期間で致死的な疾患の予後を劇的に改善させた事例は,医学史上,きわめて稀有なことです。HIV / AIDS は人間という存在の無力さと,偉大さを同時に教えてくれています。
日本ではHIV / AIDS 患者は数万人規模で存在するといわれ,現在も毎年,新規感染者がみつかっています。予後が改善されたということは,患者が長命になったということであり,新規感染が続いているということは,患者総数は増え続けているということです。今後も(残念ながら)患者は増え続けていくことでしょう。よって,HIV / AIDS にかかわる医療者の数も増やしていく必要があると思います。
劇的な進歩を続けているHIV / AIDS 診療ですが,ここ10 年,15 年程度の治療戦略は基本的には「同じ」だと考えています。細かいバージョンアップは続き,新薬も次々に開発されていますが,パラダイムそのものを根底から変えるような変化は起きていません。HIV 感染やエイズの診断,さらなる感染の予防,CD4 細胞数を高め,HIV ウイルス量を減らすための治療,合併症の予防や治療などざっくり大きなところは同じです。
その「変わらないところ」,コンセプトの部分を理解していただくために,米国でよく使われているテキストを訳出しました。本書のエッセンス「変わらないところ」をぜひ吸い取っていただき,さらに新たな知見も加え続け,HIV / AIDS 診療にコミットしていただく方が1 人でも増えていただければ幸いです。
2015 年9 月
岩田健太郎
2015-11-04
106ページ右段上から15行目
2015-11-04
126ページ左段上から9行目