初学者にとって難解とされるMRIの基礎原理を、全55章で簡潔にまとめたテキスト。左に美しいイラスト、右に明快な解説を配した見開き2頁構成。MRIの原理を短期間に習得でき、撮像の実際に役立つ。なかでも理解が難しい磁化ベクトルの動き、パルス系列の仕組みなどについては、直感的に理解できるアニメーションを弊社ホームページにて視聴できる。入門書・復習書として初学者からベテランまで使え、医療系大学・専門学校の教科書にも最適。
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1 磁気と電磁気
2 原子の構造
3 スピンの配向
4 歳差運動
5 共鳴現象とMR信号
6 コントラストメカニズム
7 緩和メカニズム
8 T1緩和
9 T2緩和
10 T1強調
11 T2強調
12 プロトン密度強調
13 スピンエコー(SE)法
14 高速スピンエコー(ターボスピンエコー)法の原理
15 高速スピンエコー(ターボスピンエコー)法の応用
16 反転回復法(IR)
17 グラディエントエコー(GRE)法の原理
18 グラディエントエコー(GRE)法の臨床応用
19 定常状態
20 コヒーレント型(FISP型)GRE法
21 インコヒーレント型GRE法
22 コヒーレント型(PSIF型)GRE法
23 バランス型GRE法
24 超高速撮像法
25 拡散画像と灌流画像
26 MR機能画像
27 傾斜磁場
28 スライス選択
29 位相エンコード
30 周波数エンコード
31 k空間とは?
32 k空間の充填法
33 k空間と画質の関係
34 データ収集?周波数方向
35 データ収集?位相方向
36 データ収集?撮像時間
37 k空間の軌跡とパルス系列
38 いろいろなk空間充?法
39 信号雑音比(SN比)
40 コントラスト雑音比(CN比)
41 空間分解能
42 化学シフトアーチファクト
43 位相のミスマップ
44 折り返しアーチファクト
45 その他のアーチファクト
46 フロー現象
47 タイムオブフライト法MRA
48 位相コントラスト法MRA
49 造影MRA
50 造影剤
51 磁石
52 RFコイル
53 傾斜磁場コイル・その他のハードウェア
54 MRの安全性?生体作用
55 MRの安全性?ミサイル効果
付録 1(a) 画質の最適化
1(b) パラメータ設定とその影響
2 アーチファクトとその対策
3 メーカー別略号一覧
発展事項
復習問題
MRI用語集
訳者序文
訳者が医学部を卒業したのは30年以上前だが,当時はちょうどMRIの黎明期であった.医師も技師も,それまで慣れ親しんできたX線とはまったく異なるMRIの画像原理にとまどいながら,手探りで勉強している時代であった.まとまった教科書などなかったが,簡単な「MRIの原理」「MRI入門」のような本がいくつかあり,皆それを読んでいた憶えがある.最近は詳しい大部の教科書がたくさんあり,これから勉強を始める若い人たちにとっても恵まれた環境であるが,その一方で当時のような簡単にMRIの基礎を概観できる教科書は少ないように思う.本書の翻訳を打診されたとき,まず気づいたのは,30年前のMRI入門書を思わせる簡潔な構成と,その図版の美しさ,わかりやすさであった.あらためて見回してみると,現在は意外にもこのような簡便な入門書がないと感じ,翻訳を進めた次第である.
本書はMRIの基礎原理の解説書である.その特長は,以下のようにまとめることができる.
1.見開き2ページ,美しいイラストで,MRIの全体像がわかる
原子の構造からMRIの安全性まで,MRIの理解に必要な事項を55章に分けて順を追って解説している.各章はいずれも見開き2ページからなり,左ページにはユニークで美しいオリジナルのイラストが掲載されている.このイラストを見るだけで,とりあえず概略がわかるようになっている.より詳しい,しかし簡潔な解説が,右ページに書かれており,さらにそのエッセンスが各章末に表形式のキーポイントとしてまとめられている.
2.実際にMRIを撮像する初心者にやさしい記述
著者はイギリスで後進の指導,教育に携わる放射線技師であるが,このため厳密さを多少犠牲にしてでもわかりやすく説明しようとする姿勢が随所に現われている.MRIの撮像は,常に時間と画質のトレードオフを念頭に置き,様々なアーチファクトの低減に配慮する必要があるが,本書は初心者が実際に撮像にあたる場合,いかにアーチファクトの少ない高画質の画像を短時間に撮像するか,という点に特に力をいれて解説している.
3.実用的な付録が充実
巻末の付録は「画質の最適化」,「略語一覧」,「用語集」からなる.いずれも,数多くのパラメータをいかに設定するか悩み,意味不明の略語や専門用語にとまどう初心者が,直面する問題をすぐ解決できる配慮が行き届いている.なお日本語版には,原書のウェブページに掲載されている「発展事項」と「復習問題」も本の中に収載した.「発展事項」は各章の解説を補完する知識が示されており,復習問題」では必要最低限の知識を確認することができる.
4.直感的な理解を助けるアニメーション
MRIの原理のなかでも理解が難しい磁化ベクトルの動き,パルス系列の仕組みを中心に,美しいアニメーションが用意されており,これによって図や言葉ではいまひとつわからない部分が,直感的に理解できる.本書の読者はこれを出版社のホームページに設けられた動画ページから利用することができる.
このように本書は,MRIの原理を短期間に理解し,かつその理解がMRI撮像の実践に結びつくように仕組まれている.これからMRIを勉強しようとする放射線技師,放射線科医,臨床医の入門書として必ずや役立つものと考える.
なお,翻訳はおもに放射線科医の百島が担当し,技術的な問題の検討,確認をMR研究者の押尾が担当した.最後になったが,編集部の正路修氏には,企画から最終校正まで常に完璧ともいえる綿密な編集作業をしていただいた.あらためてここに深甚の謝意を表するものである.
2017年1月
訳者を代表して 百島 祐貴
2023-06-08
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
復習問題 解答 p.133 Chapter 4
誤 「① C ② C ③ D」
正 「① C ② B ③ D」
2021-09-15
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
42 化学シフトアーチファクト p.84 図42-1の図説明文
誤 「受信バンド幅が広いとピクセルあたりのバンド幅も広くなり」
正 「受信バンド幅が狭いとピクセルあたりのバンド幅も狭くなり」
2017-06-19
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
p.69 左段 受信バンド幅の設定
この項, 上から12行目の数式
(誤)0.0325×256=128ms
(正)0.03125×256=8ms
2017-04-18
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
p.03
表1.2 キーポイント 下から2行目
(誤)磁場内で電導体を移動すると, 電荷が発生する.
(正)磁場内で電導体を移動すると, 電流が発生する.