第1章 筋腱付着部と支配神経
第2章 MRI断層解剖
第3章 一般的な上肢MRI検査法
第4章 スポーツ障害
第5章 神経絞扼
第6章 外傷
第7章 腫瘍と腫瘍類似病変
第8章 炎症性疾患,変性性疾患,その他の疾患
序
最初にこの教科書の執筆の話をいただいたのは,かれこれ3年以上も前のことである.ただテーマは「上肢の画像診断」で,私の得意分野ではあったが,上肢全体を網羅する教科書となると心もとなく,またすべてを一からやるのも初めての経験で不安だらけであった.そこで当時よく学会などで一緒に仕事をさせていただいていた橘川 薫先生に声をかけ,共著という形で引き受けることとなった.結果的にこの選択は大正解であった.
いざ制作を開始すると2人の原稿作成へのアプローチが正反対であることがわかった.私は「彫刻作成」(編集担当の後藤氏曰く)のように,章全体の大まかなイメージを最初に考え,それにそって思うがまま一気に章全体を書き上げ,それから何度も推敲を重ねて細かい修正を繰り返し,妥協点までもっていくという「感覚的」アプローチであったが,橘川先生の制作スタイルは「精密機械作成」のごとく,一テーマ,一段落ずつを無駄のない表現,理詰めで論理的かつ着実に一字一句を積み上げていく「理性的」アプローチであった.当初は文体でどちらが書いたものかすぐわかる内容であった.
初稿が完成した際,どちらかのスタイルに合わせて文章変更するか,あるいはスタイルの違いはある程度そのままに,本全体の文言や語句のみを統一するか,という選択に迫られた.結果,われわれは後者のスタイルをとった.
むろんこのような制作スタイルに賛否はあるだろうし,そもそも教科書作成にオリジナリティは必要ないのかもしれない.ただわれわれが目指したものは,文章・内容・構成において,いかに読者の興味を引き,面白く読んでいただくか,の一点だけであった.そして後者はそのスタイルにピタリと当てはまるものであったと確信している.
本書の編集にあたり,われわれの間を行き来し,コンセプトを理解し,最高に満足できるものに仕上げていただいたメディカル・サイエンス・インターナショナル編集部の後藤亮弘氏には心より御礼を申し上げたい.
最後に本書が「一施設一冊」の必携本として読み継がれていくものになれば,筆者としてこれ以上の喜びはない.
2017年2月
筆者を代表して
岡本嘉一