1 緩和ケアの原則
2 アドバンス・ケア・プランニング,緩和ケアにおける意思決定と倫理
3 コミュニケーション
4 生命予後の予測
5 痛み
6 呼吸器症状
7 せん妄
8 消化管における問題
9 血液系の問題
10 代謝,電解質,内分泌
11 神経学的問題
12 心理的,あるいは 精神的な苦痛
13 全人的苦痛,スピリチュアリティ,希望,尊厳,スピリチュアルケア
14 緩和ケアにおける救急
15 非癌性疾患:その他の疾患
16 多種多様な問題
17 種々の介入
18 終末期の難治性苦痛への緩和的鎮静
19 最後の数日から数時間 (臨死期)
20 悲嘆と死別
監訳者序文
カナダでこの本の元となる “The Edmonton Aid to Palliative Care”という緩和ケアマニュアルが,初めて発行されたのは,今から20年前のことです。Bruera先生が,エドモントンの地域緩和ケアプログラムを立ち上げた直後のことでもありました。それは,『エドモントン緩和ケアマニュアル』 として翻訳されました。その4年後には,“Alberta Hospice Palliative Care Resource Manual”として,事実上の第2版が出ました。私が,現笹川記念保健協力財団の支援で,エドモントンでの海外ホスピス研修を行わさせていただいたときは,これが,標準マニュアルでした。それがさらに発展して,2008 年に“Pallium Palliative Pocketbook”として,いよいよカナダ国内の標準化された緩和ケアマニュアルとなったのです。分厚くなり,有料化されたのが,1つの変化です。87頁だったものが,参考文献を除いても,2016年の第2版では455頁になっています。それはまた,手弁当ではとても賄いきれない質と量ということでもあります。邦訳の緒言にもありますように,基本的には,Jos Pereira先生が主著者として書き上げ,それを誰がどこをチェックしたかを匿名化しその道の人々が検証してまとめています。
すでに,わが国でもたくさんの緩和ケアの本が出ていますが,国をあげてというのは類を見ないと思います。また,peer reviewに徹しているところも敬服するしかありません。記載されている薬物については,考え方の違いや認可の有無などで,多少相容れないところもあります。それには目をつぶっても,難しい家族との対応や本当は日本にもある文化の違いなども含め,小生にはとても一次緩和ケアとは思えない領域まで踏み込んで書かれています。多くの皆さまにお目通しいただければ幸いです。訳文で意味が不明なところがあれば,遠慮なく,ご連絡ください。誠意をもって丁寧に答えてまいりたいと存じます。
なお,小生がエドモントンで12年前に教わったtrajectory lineは,illness trajectoryという言葉で定着しています。その当時,奇跡が起きてほしいが鬼籍に入るということで, 「病の軌跡」と勝手ながら訳しました。この書では,その訳を用いていることをお断りします。
末筆ながら,MEDSiの編集を務めていただいた綱島敦子さん,小生との監訳を主として務めあげてくださった大中俊宏先生はじめ監訳委員(Review Committee)の方々に厚く御礼申し上げます。
2017年7月 丹波嘉一郎