第 1 章 がんの分子生物学への入門
第 2 章 DNA構造と安定性:変異と修復
第 3 章 遺伝子発現の調節
第 4 章 増殖因子シグナル伝達とがん遺伝子
第 5 章 細胞周期
第 6 章 増殖の抑制とがん抑制遺伝子
第 7 章 アポトーシス
第 8 章 がん幹細胞,自己複製と分化の経路の制御: 大腸がんと白血病に焦点をあてて
第 9 章 転移
第10章 血管新生
第11章 栄養とホルモンが遺伝子に及ぼす影響
第12章 がん免疫と免疫療法
第13章 感染性因子と炎症
第14章 技術,薬剤および診断の発達 .
訳者の序
本書は,Lauren Pecorinoによってきわめてわかりやすく書かれた「がんの分子 生物学」の教科書である。本書はまた,生命科学分野の研究者,臨床家,製薬関 係者などにとって最適の入門書であり,しかも最新情報も得ることが可能だ。今 回の改訂においても,全章にわたって詳細な情報のアップデートが行われてい る。たとえば,免疫療法には多くのページがさかれて解説の充実が図られ,血管 新生,感染性因子と炎症などは,新たに独立した章として解説されている。
この本の最大の特色は,一人の著者によるゆるぎない視点から,多くの異なる 分野の研究成果と今後の発展性について,論理的にしかも読者フレンドリーにま とめられていることである。旧版に寄せられた読者の賛辞もここによるもので あった。さらに,今回の日本語版第3版(原書第4版,2016年出版)を翻訳す るにあたり,がん研究のめざましい進展を実感するとともに,改めて確認したこ とがある。それは,がん研究のゴールは治療戦略の実現にあり,ひたすらそのベ クトルの上に本書は執筆されているということである。現在のがん研究は(他の 医学研究分野でも同様だが) ,正にこの潮流の中にあり,それを当然のことと考 える人は多いであろう。しかし,著者の姿勢は,原書第1版(2005年出版)から, 一貫して変わらず,そうなのである。本書の素晴らしい先見性に感服するととも に,この翻訳に携わることができて誇らしい,と思った次第である。
最後に,今回もまた,メディカル・サイエンス・インターナショナル社の方々, 特に藤川良子氏,水野資子氏の激励,ご配慮に感謝する。
2017年盛夏 日合 弘/木南 凌
2021-07-13
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
p. 82の下から3行目
(誤)Rafはシグナル変換因子
(正)Rafはシグナル伝達因子
p. 91の上から9行目
(誤)シグナル変換因子
(正)シグナル伝達因子
p. 91の上から12行目
(誤)したがって,変換因子からの増殖シグナルは
(正)したがって,シグナル伝達因子からの増殖シグナルは