そうだったのか!症例でみる循環器病態生理

臨床の文脈でみる循環器基礎医学。シリーズの集大成!
「不整脈」「薬理学」「ゲノム医学」「発生・再生」に続く、シリーズ集大成となる病態生理をテーマとした第5弾。心不全、虚血性心疾患、高血圧、不整脈、血栓症の5つのパートに分けて循環器領域でよく遭遇する患者像を提示し、疾患や症状の背景で何が起こっているのかをわかりやすく解説する。症例を通じて基礎医学的理解を深めることで、日常診療に根拠と自信をもたらす一冊。
¥4,950 税込
著:古川哲史 東京医科歯科大学難治疾患研究所 生体情報薬理分野教授協力:上嶋德久 (公財)心臓血管研究所付属病院循環器内科 心不全担当部長
ISBN
978-4-89592-911-0
判型/ページ数/図・写真
A5変 頁176 図・写真73
刊行年月
2018/3/20
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Part Ⅰ 心 不 全
1. 心不全におけるANP治療
2. 心不全におけるドパミン治療とドブタミン治療
3. CRT:有効例と無効例
4. 心不全におけるトルバプタンの使用
5. 利尿薬で生じる低カリウム血症と高カリウム血症
6. フロセミドによる高尿酸血症
7. 肺水腫に対する利尿薬治療
8. 高齢者のHFpEF
9. 心不全に伴う低栄養と心臓悪液質
10. 心不全と運動

Part Ⅱ 虚血性心疾患
1. 不安定狭心症から心筋梗塞への移行
2. AMI発症後の再灌流施行までの時間
3. ステント留置後のDAPT治療
4. ニトログリセリンが効きにくい女性の狭心症
5. 明け方に発症する異型狭心症
6. HDL─cholが高い患者の心筋梗塞発症
7. 肉食と心筋梗塞
8. 食事療法無効の高LDLコレステロール血症
9. スタチンと横紋筋融解症
10. ストレスと心筋梗塞発症

Part Ⅲ 高 血 圧
1. 食塩感受性高血圧の治療方針
2. 降圧薬からの離脱と入院食
3. ACE阻害薬で生じる空咳

Part Ⅳ 不 整 脈
1. 心房粗動治療とⅠ群抗不整脈薬
2. カルベジロール治療による喘息の悪化
3. 心房細動にみられる家族性
4. 心房細動に合併する心原性脳塞栓
5. 心房細動治療としての肺静脈隔離術
6. 不整脈原性右室心筋症の発生学的理解
7. QT延長症候群:遺伝性と薬物性

Part Ⅴ 血 栓 症
1. アスピリンの増量と心筋梗塞
2. 不安定なワルファリンの効果
3. ワルファリンの無効例
4. ワルファリンとエゼチミブの併用によるPT-INR上昇
5. 抗血小板薬と抗凝固薬併用中の脳出血発症
索 引

メモ
メモ1 前負荷と後負荷
メモ2 ループ利尿薬とアミノグリコシド系抗菌薬の飲み合わせ
メモ3 身をもって実感した食塩感受性

ここに「そうだったのか!症例でみる循環器病態生理」をお送りします。本著は,「そうだったのか!」シリーズの第5冊目,最終巻となります。
シリーズ最初の本「そうだったのか!臨床に役立つ不整脈の基礎」(共著)は2012年10月5日に発売されました。千葉大学の中谷晴昭先生から,「不整脈を基礎的な知見から説明する本を出版するのですが,協力してくれない?」との話があり,不整脈の基礎なら自分の専門だし,やってみようということで始まりました。「そうだったのか!臨床に役立つ不整脈の基礎」を発行した後,編集部から「これを,基礎医学的な知見を臨床の先生方にも活用していただけるようなシリーズにしたいのですが,ご協力いただけませんか?」という打診があり,それはいくらなんでも荷が重すぎるということでずっとお断りさせていただいていました。そのうち自分の行っている基礎研究のテーマが心血管疾患のゲノムや発生に関することに発展し,これを多くの先生方にお伝えしたいと思うようになり,「では,年1冊のペースで5冊のシリーズということでやりましょう」とシリーズ化が決まりました。実は,これが苦難の日々の始まりでした。日本循環器学会年会に合わせて出版することにしたのですが,そのためには初稿を8月末までに上げる必要があります。そんなわけで夏は正念場となり,医学部の授業や実習などがなく自由に時間が使えるはずが,毎日執筆活動に追われる日々となってしまいました。ここ6年間は夏休みを1日もとっておらず,最初は文句を言っていた家族も今ではすっかりあきらめています。何度,安請け合いをしたことを後悔したかわかりません。
循環器学会と並ぶ自分の主戦場が薬理学会であったことから2冊目は「薬理学」,3冊目と4冊目は自分の研究の展開に合わせて,「ゲノム医学」と「発生・再生」をテーマにしました。編集部との打ち合わせで,5冊目はこれらの集大成として心血管疾患に対して病態生理からアプローチしようということになりました。4冊を出したところで,それなりに臨床の先生方にも読んでいただいている感触はあったのですが,主に基礎医学に興味のある先生に限られている印象でした。そのような勉強熱心な先生方は,このような本がなくても自発的に勉強されたことでしょう。「基礎医学に特に興味はないけれども,ちょっと手にしてみたら基礎医学も面白い,基礎医学を知ると臨床がより良いものになるのでは」と思ってもらいたい,というのが最大のモチベーションでした。でも,このような基礎医学に特段興味のない臨床家の先生方には自分が期待していたほど「浸透した」という実感が得られませんでした。何が原因なのか,何を改善したらいいのかと思いあぐねている間に,予定を1年過ぎてしまいました。ある日,4冊目までは,基礎医学的な知識を知っていただいて,これを日常臨床に活かしていただければという「基礎⇒臨床」の流れになっていることに気がつきました。すなわち,自分たち基礎医学研究者の目線でのアプローチだったのです。これを逆にしたらどうだろう?…すなわち,臨床の先生方がたどる流れに合わせて,症例から入り,これに基礎医学的知見をどのように反映させて考えたらいいのかという「臨床⇒基礎」の流れにしたらどうだろう,という思いに至りました。そこで,自分の大学院講座を修了し今は心臓血管研究所付属病院の心不全担当部長をしている上嶋徳久先生と内輪の忘年会で会ったときに,酔いで判断力が鈍っているすきに口説いて症例を提供してもらうことにしました。「こんな症例が欲しいんだけど」と30くらいのケースをお願いしましたが,そのほとんどを提供していただき,本書が完成することになりました。上嶋先生にはいくら感謝しても足りません。
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本書は,5冊シリーズの集大成に位置付けられるということで,不整脈,薬理学,ゲノム医学,発生・再生のすべての側面が少しずつ含まれています。これらの内容は重複がないように,前著で説明したことはごく簡単な説明にとどめてあります。もし,もっと詳しく知りたいと思っていただけたなら,本文中にこれは前著のうちどれに載っているかを記載していますので,前著を参照していただけたらと思います。5冊のシリーズを通して,臨床の先生方の診療の幅が広がり,ひいては国民の皆さまのお役に立てることを心から願っています。
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最後に,1年遅れになってしまいましたが,シリーズ5冊を完走することができ,感無量です。もう死語になっているかもしれませんが,女子マラソンの有森裕子選手が,バルセロナオリンピックの銀メダルに続いてアトランタオリンピックで銅メダルを取ったときに述べた名言「自分をほめたい」を自分にも送りたい気持ちです。でも,これは何度も挫折しそうになったのを,ときには温かく,ときには厳しく励まし続けてくれた編集者の染谷繁實氏がいなくては達成できなかったことであり,この場を借りて心から感謝申し上げたいと思います。
読者の皆さまの日常診療がより豊かになること,皆さまとまたいつか接点をもつことができることを願っています。
2018年2月
古川哲史

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