ハリソン物語

第1版 1950年・T.R. Harrison

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1日のスケジュールは,午前7 時30分から8時までの朝食からはじまり,その後,午後1時まで集中して仕事をした。昼食後には,グループの大半がガイドに連れられて遠乗りをした。グループの中には乗馬の名手もいたが,中にはまったくの初心者もいて,おとなしい馬を割り当てられていた。Bill Resnikにとって,ソリチュード湖までの遠乗りは,忘れられない思い出になった。その日初めて馬に乗った彼は,いきなり(見ようと思えば)足元に深さ600 から900 メートルの谷が口をあけているのを覗き込むことができる狭い崖の道を歩かされて,「僕がどうしてこんな目に?」と言い続けていた。とはいえ,打ち合わせが終わる頃までには,Resnik や他の初心者たちも,それなりに馬を乗り回せるようになっていた。

夕方には,すっかりリラックスしたわれわれは,誰かのキャビンに集まってカクテルを楽しんだ。1 日の活動の後で,体は心地よく疲労していた。食事は豪華ではなかったが,おいしかった。遠乗りと,山の空気と,3 年におよぶ努力の末に本の完成がそう遠くない未来に近づいているという実感が,われわれの食欲を刺激していた。

編者たちがお互いをよく知るようになるにつれ,議論はますます率直なものになり,これまでも決して手加減されることがなかった意見のやりとりは,いちだんと迫力を増した。それでも,編者たちの誰一人として侮辱されたと感じることはなく,相手に対して腹を立て続けることもなかった。どんなに激しい意見の応酬も,ともに楽しむ乗馬とカクテルが深めた友情と敬意に水を差すことはできなかったのだ。