第1版 1950年・T.R. Harrison
けれども,それに続く50 年間に,テキストの外では革命が起きていた。教育の中で病態生理学と生化学が占める割合が,次第に高くなってきたのである。これらのテーマは,身体構造の不可逆的な変化というよりは,機能の可逆的な変化に関するものであったから,定石ではなく理性にもとづいて治療を行おうと思ったら,病態生理の知識が絶対に必要だった。それにもかかわらず,内科学テキストの構成はジブラルタルの岩のように頑固に変わらなかった。
患者は普通,何の病気か分からない状態で内科医のもとにやって来る。彼らはただ,不調を訴えたり,症状を呈したりしているだけである。多くの患者には,異常な身体的徴候が見られる。こうした疾患の症候や徴候,特に症状は,基礎にある疾患の最初の手がかり,すなわち,診断の手がかりになる。ゆえにテキストは,内部疾患の主な症候を理解することからはじまり,その次に,具体的な疾患について論じなければならないはずだった。
出版社側の2 人は,このアイディアに強く賛同した。これは予想どおりの反応だった。十分に義理は果たしたと感じた私は,次に,自分が編集主幹を引き受けるなら絶対に必要だと考える条件をあげた。それは,どう考えても出版社が受け入れるはずのない条件だった。
私はまず,編集チームのメンバーは自分で選びたいと言った。このグループで,その本の大部分,ひょっとすると全部を執筆することになるが,個々の編者が必要とみなす場合には,自由に執筆者を選べるものとする。編者や執筆者を選ぶ際には,本の知的な価値のみを考慮する。これまでの医学の教科書や大系書の編集では,売り上げを伸ばすために,できるだけ広い地域にわたる,ほとんどすべての医学校から,最低1 人の執筆者を選ぶことが重視されてきたようだが,自分はそんな慣例にしたがうつもりはない。
- 第1版 1950年・T.R. Harrison
- 第2版 1954年・T.R. Harrison
- 第3版 1958年・T.R. Harrison
- 第4版 1962年・M.M. Wintrobe
- 第5版 1966年・M.M. Wintrobe
- 第6版 1970年・M.M. Wintrobe
- 第7版 1974年・M.M. Wintrobe
- 第8版 1977年・G.W. Thorn
- 第9版 1980年・K.J. Isselbacher
- 第10版 1983年・R.G. Petersdorf
- 第11版 1987年・E. Braunwald