ハリソン物語

第1版 1950年・T.R. Harrison

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次に,その他の編集チームのメンバーが検討された。私がBillDock の名をあげると,Fishbein が言った。彼は疑いなく,アメリカ医学界の偉人の1 人であり,卓越した臨床家で,優秀な病理学者である。Dock は博学で,彼の話はたちまち誰をも魅了してしまうが,その半面,無類のおしゃべりで,自分が主役でないと気がすまないタイプの人物なので,チームの一員として仕事をするには向いていないのではないだろうか? そこで私は反論した。自分とBill Dock とはインターン時代の同僚で,以来,20 年にわたる親友でもある。Bill にそうした短所があることは自分もよく承知しているが,彼の長所はそれを補ってあまりある。すると,Fishbeinらは即座に,Bill Dock をチームに入れるかどうかは,自分たちではなく編集主幹が判断することだと言って引き下がった。

私が提案した次の人物はBill Castle だった。ここでまたもやFishbein が口をはさんだ。血液学の分野は,近年,めざましい進歩を遂げていて,この分野の専門家を編者に迎えることは大歓迎である。たしかにBill Castle はこの分野の第一人者だが,これまでの経験から,締め切りを守らないことが分かっている。そこで,彼の代わりにMax Wintrobe を招くのはどうだろう? 今のところ,Wintrobe はCastle ほど有名ではないが,臨床血液学に関する彼の著作は非常に評判が良く,その評判はうなぎ上りだ。彼の文章は明晰かつ簡潔でテキストにはうってつけだし,何よりも彼は締め切りを守る。そこでわれわれは,Max Wintrobe に声をかけることで合意した。

次の問題は,感染症の分野に強い編者を選ぶことだった。私は,Chester Keefer こそはその適任者で,臨床家としても非常に優秀であると言った。この点についてはFishbein も同意したが,Keeferはペニシリン計画に没頭しており,おそらく断ってくるのではないだろうかと言った。けれども,だめでもともとと思って頼んでみることになった。