Bennettの回想 Ivan Bennett
Harrison の頭脳は常にフルスピードで回転していて,新しいアイディアが次から次へと沸いて出てきた。そのほとんどが良いアイディアで,名案としか言いようのないものが多かった。幸い,このすばらしい頭脳から馬鹿げたアイディアが出てくることがごくまれにあり,われわれはここぞとばかり徹底的に彼をやり込め,彼と対等であるような気になったものだった。もちろん,実際には自分たちが彼の足元にも及ばないことを,われわれはよく知っていた。ときどき私は,彼がわざと間抜けなことを言って,われわれとの釣り合いをとろうとしているのではないかと邪推したほどである。私はこれまで,Tinsley Harrison ほど刺激的な人物,彼ほど優れた医師に出会ったことがない。
Bill Resnik は,Harrison の研修医時代からの親友だった(身長が160 cm そこそこだった彼らは,Chester Keefer を加えて「ちびっ子3人組」と呼ばれていた)。緻密で寡黙なResnik は,天衣無縫で騒々しいHarrison と好対照をなしていた。なによりも彼は,Harrisonの情熱をコントロールして生産的な方向に導くことのできる唯一の人間だった。これが可能だったのは,Harrison がResnik を最高の医師と考え,彼を全面的に信頼していたからである。やがて,チームの誰もが彼に頼り,助言を求めるようになった。
たしかにResnik は非常に優れた臨床医で,長年,スタンフォード大学病院で腕を磨き,イェール大学病院の客員医師でもあった(彼の患者には有名人が大勢いた)。彼は,文学と芸術への造詣が深く,世界各地を旅行していた。たいへんなグルメでもあり,打ち合わせの場所や夕食のためのレストランを決めるのは彼だった(実のところ,われわれが彼に頼んでそうしてもらっていたのだが)。それだけではない。Resnik はわれわれの誰よりもよく医学文献を知っていて,われわれの誰よりも優れた教育者で,われわれ全員を合わせたより文才があったのだ!
- 第1版 1950年・T.R. Harrison
- 第2版 1954年・T.R. Harrison
- 第3版 1958年・T.R. Harrison
- 第4版 1962年・M.M. Wintrobe
- 第5版 1966年・M.M. Wintrobe
- 第6版 1970年・M.M. Wintrobe
- 第7版 1974年・M.M. Wintrobe
- 第8版 1977年・G.W. Thorn
- 第9版 1980年・K.J. Isselbacher
- 第10版 1983年・R.G. Petersdorf
- 第11版 1987年・E. Braunwald
- Beesonの回想 Paul Beeson
- Resnikの回想 William Resnik
- Adamsの回想 Raymond Adams
- Bennettの回想 Ivan Bennett
- Ted Phillipsによる最後の補注