骨折・脱臼などの骨・関節外傷の画像診断の基本的な内容を、箇条書きスタイルで簡潔にまとめた手引書。骨折を正確に記述し、他科の医師とコミュニケーションをとる際に必要な「正しい用語の使い方」を習得できる。MRIが導入されて以来変化した骨外傷の新しい概念(MRIでしか見えない骨折・骨髄変化)についても言及。部位ごとで、多岐にわたる理解の難しい骨折の分類は最小限にとどめ、知識確認のためのクイズや模式図などを多用することで、通読でき、短時間で要点をつかめる。放射線科医・整形外科医はもちろん、初めて骨折の画像診断を学ぶ医学生、および救急医療に関わる研修医必読の一冊。
1 章 骨外傷に関する語彙の構築
2 章 骨折・脱臼診断の部位別リスト
3 章 特殊な名称の骨折
4 章 外傷以外に原因のある骨折
5 章 小児骨折の特殊性
6 章 骨折と見誤りやすい正常変異と非外傷性変化
7 章 画像診断に必要な治療の知識
8 章 まとめとクイズ
序
骨外傷の画像診断は放射線診断の基本であり,なかでも骨折の単純X線撮影による評価は基本中の基本といってもよいものである.しかし,残念ながら,実際にはそれを十分に経験することがないままに研修期間を終わり,それ以降にかなり痛い思いをして学ばなければならないことが多いようである.骨折治療は,急性期に適切に診断・治療されることがもっとも理想的である.骨折診断など簡単などと夢ゆめ思うなかれ.本書に示されているように,画像診断がもっとも容易なのも骨折であるが,もっとも困難なのも骨折である.
30年前の著者のニューヨークの救急病院での研修医時代は,救急の当直は救急室に付随した読影ステーションでの次から次へと送られてくる救急症例の読影が,研修医の責任分担の大きな部分であった.当時はスタッフのカバーは今日の米国の研修医ほどに手厚くなく,院内では畏怖の対象であった頸椎外科の大家William Fielding整形外科部長の目を逃れるようにやってくる整形外科研修医とともに,シャウカステンだけが明るい穴蔵のような読影室で,骨外傷の単純X線写真をみながら折れているかいないかの議論をしていた.
当時,予備知識の不十分な学生や研修医に有力な武器となったのが,Robert Schultz著Language of Fractureという300ページ前後の小さな教科書であった.骨折の分類,定義,特殊な名称の骨折など基礎的な内容が網羅されており,通読でき,イラストが十分にあり,さらに必要な事項を繰り返し参照できる点で非常に役に立ったのを覚えている.現在,私の本棚にあるのは1990年の第2版であるが,いまだに価値を保っている.骨外傷画像診断の名著はほかにも多く,尊敬するLee RogersのRadiology of Skeletal Trauma(3版を数える)は,今日も十分な情報を含んだ通読可能な教科書かつ参考書としての価値を失っていない.またRockwood & Greenのように版を重ねた骨折に関する名著も存在する.それに,日本語の外傷の画像診断を扱う教科書も出現している.
そのようななかで本書の目的はただ1つ,Language of Fractureのように,初めて骨折の画像診断を学ぶ学生と研修医の通読可能な手引きとなることである.初めにみた医師が適切に対処することがもっとも重要な骨折治療において,救急医療に関わる研修医に,もっとも簡単でもっとも難しい骨折の画像診断を適切に行って欲しいのが著者の願いである.
なお,本書の肖像のイラストは妻恵子が公表されている肖像画や写真から作成したものである.多くの名前の付いた骨折はX線より長い歴史を持っている.
2012年3月
江原 茂
2012-05-14
31ページ IV.骨折をめぐる問題 9行目
(誤)治療
(正)治癒
2012-05-14
35ページ 図2-2 見出し,37ページ 図2-6 見出し
(誤)Andersson
(正)Anderson
2012-05-14
42ページ 6.腰椎(T11以下)の骨折・脱臼 見出し
(誤)b.粉砕骨折
(正)b.破裂骨折
2012-05-14
43ページ 図2-14 見出し
(誤)粉砕骨折
(正)破裂骨折
2012-05-14
64ページ クイズ7解答 問1
(誤)横走する骨折線
(正)斜走する骨折線
2012-05-14
135ページ クイズ12 問1
(誤)正面像
(正)側面像
2012-05-14
139ページ 覚えておきたい知識 最終行
(誤)ハムストリングス膝腱
(正)ハムストリングス(膝腱)
2012-05-14
150ページ 図6-1 説明文 上から3行目
(誤)os vasalianum
(正)os vesalianum