所見から考える画像鑑別診断ガイド

放射線科医なら手元に置きたい力強い味方

読影すべき画像を前にして鑑別診断を自在に並べ上げ,高い確率で正しい診断にたどり着く——そんなノウハウを疾患別に解説したハンドブック。原著は20年以上にわたり、放射線科専門医試験対策の参考書として世界的に知られたロングセラー。改版ごとに鑑別リストの充実が図られ、小児放射線分野を追加されるにいたり、画像診断全般をカバーする内容となった。放射線科医にとって、試験準備のみならず、日常の読影にも備忘録的に活用できる必携の書であり,鑑別診断のうっかりした見落としなどを防ぐ格好のガイド。

¥6,600 税込
原著タイトル
Aids to Radiological Differrential Diagnosis, 5th Edition
原著者
Stephen G Davies
訳:南 学 筑波大学臨床医学系放射線医学 教授
ISBN
978-4-89592-708-6
判型/ページ数/図・写真
A5変 608頁
刊行年月
2012/4/1
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Part 1
1 骨
2 脊椎
3 関節
4 呼吸器
5 心血管系
6 腹部・消化管
7 胆,肝,脾,膵
8 副腎・尿路・精巣
9 軟部組織
10 乳腺疾患とマンモグラフィ
11 顔面・頚部
12 頭蓋骨・脳
13 婦人科・産科領域
14 小児科領域
15 統計の評価一般的に用いられる用語の解説

Part 2
疾患のアルファベット順リスト

訳者序文

 1986年4月、Wisconsin州Milwaukee。
 Milwaukee医科大学放射線診断部の読影室で、私は大きな焦りと劣等感を感じていた。運よく奨学金を得て念願のアメリカ留学ができた私であったが、そこで目の当たりにしたものはアメリカの確立された放射線診断研修システムの効率のよさと臨床教育に対するスタッフの熱意、そしてそれに答えるレジデントの貪欲さであった。スタッフが1枚のX線写真をビューボックスにかけると、指名された自分と同年代の放射線科レジデント1年目が(当時私は放射線科医としては4年目であった)鑑別診断を立て板に水のごとく、すらすらと並べ上げる。そしてスタッフに誘導されながらとはいえ、多くの場合、正しい診断にたどり着く。日本にいた頃はFelsonの赤本(Gamuts in Radiology、1977年版、現在の青い版の旧版)をたまには見るものの、「いつか時間がたてば自然と頭に入っていくだろう」と高を括って私自身はあまりまじめに覚えようとはしなかったのが、目の前のレジデントたちは必死でそれをやっている。彼らは暇さえあれば暗い読影室でビューボックスの明かりをもとにいつも指定された教科書を勉強している。それが例えお経のようであっても、お経も論語もまず覚えることが大事かもしれないのにーーー。
 そんな中、何とか彼らに少しでも追いつこうとして大学の書籍部に本を探しに行って偶然眼にしたのが、本書の初版(1984年出版)、Dr. ChapmanとDr. Nakielnyによる”Aids in Radiological Differential Diagnosis”であった。その内容は前半がGamut形式のリストでところどころに簡単な解説があり、後半は疾患別に詳しく画像所見が述べられており、まるで神様が私のために用意してくれた様な本と感じたものだった。しかも値段はなんと$10.45!当時としても破格の安さであり、当然本書はその後、イギリスのみならず世界中の放射線診断専門医試験の準備本として大ヒットとなり、当のFelsonをして「無断で真似をした」と怒らせる結果となった。しかし読者はGamutsとは別に、この様な本をでてくることを長らく待っていたのだ。
 さて、本書は1990年、1995年、2003年、と順調に改訂を続け、2009年にはDr. Daviesが編者となり、第5版が出版された。今回の改訂では、従来の形式を守りながらも情報が最新のものに変えられ、さらに小児放射線診断の分野が新たに加えられ、画像診断全般を見事にまでカバーしたコンパクトな本となった。初版は本文344ページに比べ、第5版では本文は489ページにもなっているが、それでもこれなら覚える気にしてくれる。もちろん今回の版もレジデントのみならず、世界中の放射線科医によって既に利用されている。
 第5版の原著は13名の各分野の放射線診断専門医が書いた共著となっているが、本書の翻訳にあたっては南1人が行った。それは自分自身の知識の整理と共に(一部過去の郷愁もあるが)、全体を通じて翻訳を統一することを最大目標としたためである。このある意味無謀な企てにより翻訳の作業には図らずも非常に多くの時間を要してしまった。特に原著がハンドブックの体裁を取っているため、略語や不完全な分が多く、その解釈に困った部分も多かった。翻訳の下訳においては以前からお手伝いをお願いしている三輪 万里さんに頼んだが、チェックをする度にその翻訳はさぞかし大変だったことが容易に理解できた。また一部、専門領域の先生から見ると誤訳や不十分な訳もあるかと思われる。その責任は監訳者自身になり、そのような誤りについてはぜひともご連絡いただけるとありがたい。
 原著はハンドブックではあるが、英語の教科書や論文を読むのに便利なように、出版社に無理をお願いして名詞には出来る限り英文を併記した(ただし見開きページ内に同じ単語がある場合、2回目以降は省略)。若い先生方はぜひ英単語も一緒に覚えるようにしてほしい。またハンドブックであるため、and/or(および/または)は英語のままにし、/は「または」、±は「~のこともあればそうでないこともある」の意味で用いている。さらに略語については原著では多数の略語が用いられているが、本書ではどのページを開いてもすぐに理解できるように出来る限りその数を少なくした。本書を読む前には必ず一度略語表に目を通しておいてほしい。それ以外にも第1部、第2部の内容が簡単にわかるような目次も加えた。しかし原著にある膨大な量の索引を邦語、英語で揃えるまではできず、索引は重要な語句の邦語を中心に絞らせていただいた。
 本書が日本の画像診断にかかわるすべての先生方、特に放射線専門医を目指す先生方にお役に立てることを心より願っている。日本の放射線診断のレベルは世界的にみても非常に高いものであると思っているが、まだ必ずしも十分に教育体制が整っていないため、general radiologyの点から見て少し不十分な点も見受けられる。本書は必ずしも日本の放射線専門医試験の傾向と合致していないかも知れないが、ある意味、これが世界のグローバル・スタンダードを示していると思われる。ぜひ本書を経文のようにして代表的な事項をマスターしていただければ訳者としては望外の喜びである。それ以上に、そのような基本的修練が鑑別診断のうっかりした落としなどを防ぐ手立てとなり、病める患者さんのより良いマネージメントにつながることと思われる。

雪の降る横浜にて

2012年2月
南 学

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