0章 MRIの原理、シーケンス、解釈の仕方1章 頭部外傷
2章 頸椎損傷
3章 胸背部・腰椎損傷
4章 肩関節損傷
5章 肘関節損傷
6章 手関節損傷
7章 骨盤、股関節、大腿の損傷
8章 膝関節・下腿の損傷
9章 足関節、足部の損傷
10章 小児および思春期の骨端線損傷・骨端障害
11章 たまたま検査でみつかってしまう腫瘍および腫瘍類似疾患
12章 アスリートの救急疾患:胸腹部を中心に
今年(2016年)はリオデジャネイロオリンピックの年である.南半球での開催は16年ぶり3度目とのことである.近年の日本人アスリートの活躍はめざましい.体操,レスリング,卓球,テニス,陸上競技,水泳といった個人競技に加え,サッカー,ラグビー,バレーボール,シンクロナイズドスイミングなど団体競技でも十分にメダルがねらえると信じている.アスリートがその能力をいかんなく発揮するには本人の才能や努力のほかによい指導者,快適な練習環境,おいしい食事,機能性の高い靴(やユニフォーム)なども必須である.一方,われわれの役割は,このようなアスリートが不幸にも怪我をしてしまった時の早期の発見・診断および治療である.
本書の一番の特長はスポーツに関する骨関節や筋肉の外傷・炎症だけではなく,整形外科領域以外の分野にも言及している点である.執筆にあたり,スポーツドクターとしてアスリートに帯同する多くの整形外科の先生方にインタビューし,アスリートの「予想もしていなかった」,「専門外でちょっと困った」外傷や病気について貴重な意見を頂いた.特に医科の領域ではなかなか踏み込みがたい歯科領域や頭頸部外傷などに力を入れた.また,アスリートも一般の患者と同じように感冒や胃腸炎といった内科疾患が合宿中や試合中に起こりうることもあるため,頻度の高い内科疾患についても言及している.女性アスリートの月経困難症や無月経についての章では,覚えておかなければならない婦人科疾患についてもわかりやすく解説した.靱帯損傷や腱損傷においては,複数の症例でさまざまなシーケンスを用いてどのように観察できるか,比較できるように掲載している.「頑固な痛みがあり,撮影すると実は腫瘍があった」,「たまたま撮影したら腫瘍があった」など,外傷だと思ったら腫瘍による疼痛だったという経験をもつ医師も多いと思うが,このような骨軟部腫瘍についても十分な説明がされていると思う.画像診断には多くのモダリティを用いるが,MRIのどのシーケンスで何をみればよいのかわからないという意見を整形外科の先生方から多く頂くため,最初にMRIの簡単な解説を付け加えている.
本書を上梓するにあたり,何から何まで協力していただいた東京歯科大学市川総合病院放射線部の仲間たちと,常に多くの助言をいただいている東京慈恵会医科大学放射線医学講座の福田国彦教授に感謝申し上げたい.最後に企画から出版に至るまでサポートしてくださったメディカル・サイエンス・インターナショナル編集部の後藤亮弘氏に厚くお礼を申し上げる.
2016年1月
小橋 由紋子