1 基本的事項と細胞生理学
2 神経と筋・運動
3 自律神経系
4 血液
5 呼吸
6 酸塩基ホメオスタシス
7 腎臓,塩分と水バランス
8 心血管系
9 熱バランスと体温調節
10 栄養と消化吸収
11 ホルモンと生殖
12 中枢神経系と感覚
13 付録
日本語版の序文
原著第5版の日本語版(2005年)の発刊の際に触れた、現代の情報社会の問題性は,情報最大・叡智最小の形をなしているとの丸山真男(政治学者、1914‐96年)の指摘は12年経った今日、ますます当を得たものとなっている。彼は「情報」は,無限に細分化され得るもので,付加価値が加わって,情報、知識、知性、叡智と昇華されると述べた。知性と叡智を土台に情報を組み合わせたものが知識であり,理性的な知の働きを知性と呼ぶ。叡智とは庶民の知恵とか生活の知恵とかいわれるものに近いという。医学の学習に当たっては知性による知識の構築が、医療の実践には更に叡智が必要と読み替えることはできないだろうか。
昨今の医学の進歩に伴って、情報量が膨大になり、生理学、解剖学といった学問体系は時代遅れで、統合的な学修が必要であるという声がかまびすしい。科学の進歩が解析と総合の反復で、検証を繰り返してきたことを思えば、あながち的はずれな主張ではないが、インターネット上でいくらでも発見できる断片的な情報をひたすら暗記するのはトリヴィアに過ぎない。時には相反する情報をいかに体系的に組み合わせて、自分なりの生命観・人間観という知識を構築する一助として、体系的な系統講義があり、多くの教科書が出版されている。
本書は原著第7版の日本語版である。原著第5版の日本語版はコンパクトな体裁と図版の多用が広く江湖の好評を得て、生理学の学修に活用されてきたことは喜びに堪えない。新しい知見が加わった第7版では、文章と図版の対応に一層の工夫が凝らされており、生理学から生命現象についての知識の構築により役立つものとなった。視点を変えて病態から学ぶ目的では本書の姉妹編である『カラー図解 症状の基礎からわかる病態生理』(松尾 理 監訳,メディカルサイエンスインターナショナル、MEDSi)も紙価を高からしめている。
生理学はヒトの生物学にほかならない。新版も医学・薬学・獣医学・看護・リハビリテーションといった医療系の学科で学ぶ学生諸君に広く役立つと信じる。なんと言ってもヒトほど研究されつくし、正常と病態が知られている生物は他に例がないのであるから。
特色のある本書の翻訳は多数の生理学者の協力とMEDSi編集者の長沢 雅さんの尽力で実現した。本書が多数の読者に愛され、読者と共に歩みつづけることを期待してやまない。
佐久間康夫
東京医療学院大学長
日本医科大学名誉教授
2017年7月21日
2017-11-21
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
P.35 図1.17 C イオンチャネルの制御
図中文字「細胞質」と「間質液」を入れ替えるのが正しい
2017-11-20
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
P.159 図7.2 A 腎血管系
図中文字「糸球体毛細血管」の引き出し線の位置について, 下図で指す部分が正しい。
2017-11-17
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
P.12 左段本文上から24行目
(誤)(→G)
(正)(→F)
P.259 図10.11 B 蠕動反射
図中文字の「輪走筋」と「筋層間神経叢」の位置を入れ替えるのが正しい