Part 1 他科からのコンサルテーション
Part 2 虚血性心疾患
Part 3 不整脈
Part 4 心不全
Part 5 血管疾患,その他
序 文
我々の循環器内科は都心の大学附属病院に属するにしては,多様な循環器疾患を受け入れて診療にあたっている。日々の臨床に追われて,自分たちの循環器内科診療を振り返ることがなかなかできなかったが,今回は医局を上げて第一線の医師の執筆により本書が発刊に至り,また,これまでの医療を俯瞰することが可能となったことは,おおいなる喜びである。循環器領域は心臓から種々の血管病変までとかなり守備範囲が広いが,本書ではcommonな疾患からrareな疾患や病態に加えて,都内でも有数のERを有する本学ならではのemergency疾患まで幅広く,リアルワールドの症例を網羅できたと感じている。
少し解説を加えると,入院から退院までの期間,受け持ちチームが入院時カルテを完成し,日々SOAPを更新し問題を解決して退院に至るプロセスが時系列であるためか,自然にその躍動感のある流れを,リアルワールドを体感できる。患者からのアナムネーゼ聴取,身体所見の診察はもちろんであるが,血液データ,心電図,X線写真,エコー図が鮮明に示され,また症例ごとに血管造影・血管内エコー図・シンチ像・MRI像・PET像・心内心電図・同3Dマッピング像などクリアな画像がカラーで表示され,かつ解説もわかりやすいので,いささか専門的なことでも理解できるように読者は導かれる。本書のなかで処方される薬物治療は,リアルワールドの標準治療の1つとして参考になるし,非薬物治療には先端的なものが多数含まれており,本邦での現在の先端医療が体験できるものと自負するものである。新しい文献も引用され,また先端的な検査・治療に関しては適宜ポイント解説があるためスムーズに学習できる。
研修医師にはカルテの書き方のお手本となるし,循環器専門医を目指している医師には診療を学ぶツールとして座右の書になるばかりか,申請に必要な症例をまとめるときにおおいに参考になる。一般医家には,本書によって自分が紹介した患者が循環器専門施設でどのように診断・治療されていくのかが追随でき,紹介すべき患者の選択,紹介すべきタイミング,あるいは誤診を避けるための鑑別診断能力が身につく。
本書が現在の循環器臨床のリアルワールドをお示しすることで,読者の皆さんの日常診療の一助になることを心より祈念するものである。
2017年8月 平尾 見三
本書を読まれる方々へ
循環器疾患は心不全,不整脈,虚血性心疾患,末梢血管疾患,その他のまれな疾患と多岐にわたります。そして実際の臨床では,合併症を抱えておりEBMだけでは十分に対応できない症例,術前管理など複雑な状況に対応することも必要になります。
本書ではこのような疾患・病態を抱えた患者に対するマネージメントを中心に,循環器を目指す後期研修医や循環器レジデント,循環器若手医師に読んでいただく目的で作成しました。コンサルトを受けて重症あるいは複雑な患者が集まる大学病院や大規模病院の循環器専門医がどのような診療を行っているか,本書から知識とイメージをつかんでほしいと願っています。
多くの写真を掲載することで読みやすくしており,初期研修医,総合的な内科診療に携わる先生方,循環器に関連する心臓外科医や麻酔科医,コメディカルの方々にも読んでいただければと存じます。多くの医療者のお役に立つことがあれば,編者・執筆者一同の喜びにもつながると信じております。
足利 貴志