循環器疾患ディベート II - Evidence and Experience Based Medicine -

Pro/Conのディベートを通して、「プロの思考」を学ぶ
反響を呼んだ前作に続く、超辛口の一人ディベート集第2弾。循環器診療の周辺事情、循環器内科医が診る関連病態・疾患に照準を当て、各章のテーマに対してPro/Con/個人的見解に分けて、それぞれが拠って立つエビデンスの検討を中心に辛辣で過激な討論を展開する。EBMの実践に重要な「臨床研究・文献に対するリテラシー」という視点に貫かれた議論を読み進めるうちに、さまざまな局面に通じる普遍的な姿勢が浮かび上がる。循環器内科医、EBMを念頭に診療を行いたいすべての医師に「プロの考え方」を指南。
¥3,850 税込
著:佐々木達哉 医療法人正和病院循環器内科
ISBN
978-4-8157-0129-1
判型/ページ数/図・写真
A5変 頁228
刊行年月
2018/8/22
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Ⅰ 抗血栓関連
1 NVAFでは血栓リスクが低くても抗凝固が必要
2 抗血小板薬投与時にはPPIを併用するべき
3 アスピリンは心血管疾患の一次予防には使用すべきではない
4 慢性透析例へのワルファリンは禁忌である
5抗凝固薬服用中の脳出血発症後,抗凝固薬療法は早期に再開する
Ⅱ 糖尿病,代謝性疾患関連
1 糖尿病合併高血圧の第一選択薬はRAS抑制薬である
2 無症候性の高尿酸血症でも尿酸値は下げるべきである
3 SGLT2阻害薬は心血管イベントを抑制する
4 GLP-1受容体作動薬は心血管イベントを抑制する
5 糖尿病は厳格にコントロールしてはいけない
Ⅲ 高脂血症,動脈硬化関連
1 PCSK9阻害薬は適応を広げるべきである
2 薬剤でHDLを上げても効果はない
3 中性脂肪はフィブラート系薬剤でしっかり下げるべし
4 炎症を抑えると動脈硬化進展は抑制できる
5 脂質摂取・吸収への介入は虚血性心疾患イベントを減らす
Ⅳ 心不全周辺事情
1 睡眠時無呼吸に介入すると心不全は改善する
2 CoQ10は心不全に有効
3 スタチンは心不全治療薬になる
4 大動脈弁狭窄進行抑制にスタチンは有効である
5 DPP-4阻害薬で心不全が起こりやすくなる
Ⅴ 救急処置関連
1 感染性心内膜炎予防には口腔ケア,特に歯みがきが基本である
2 中心静脈穿刺は鎖骨下静脈より内頸静脈のほうがよい
3 過換気症候群にペーパーバッグ法はしてはいけない
4 急性心原性肺水腫では気管内挿管よりもまずNPPV
5 敗血症性ショックへのβ遮断薬投与は有効

閑話休題
■ とは言っても,結果ではなくて過程
■ 医学統計で知っておくべき指標平均値と中央値(1)
■ 医学統計で知っておくべき指標平均値と中央値(2)
■ 医学統計で知っておくべき指標RRRとARR(1)
■ 医学統計で知っておくべき指標RRRとARR(2)
■ 医学統計で知っておくべき指標RRRとARR(3)
■ 医学統計で知っておくべき指標疫学調査と介入試験
■ 51対49でも勝ちは勝ち
■ 苦手意識
■ 恣意的なバイアス
■ 勘違い

 続編である。なので,循環器診療のコアではなく,多くは循環器診療の周辺事情について議論してみた。最近はパッと見てパッとわかるカラフルな本が主流で,本書のような考えるためのネタを示すだけで答えのない地味な本は流行らない。文章ばかりで図や表がないので,前著は 「変な小理屈の羅列ばかりでは眠前にちょうどよかろう」とも揶揄された。しかし,著者はそれでよしとしている。引っかかったところは自分で調べればいいだけの話で,調べる手立ては現代では豊富にある。そもそも,見開いてパッとわかりやすいような本なら他にいくらでもあるからでもある。  それよりも,前著の致命的な勘違いや単純ミスを今頃になっていくつか見つけた。著者としては,このままにしておくのは寝覚めが相当に悪い。とはいっても,そんなことを発表しながら歩いて回るのもおかしいので,前著を出していただいた出版社に続編出版をお願いし,そのなかで修正することにした。気持ちが悪いので早々に修正する。
・p.27, 18行目:凝固阻止因 → 凝固阻止因子
・p.35, 16行目:QRS幅が広い心房細動があるが → QRS幅が狭くて洞調律の
・p.168, 本文の4行目:カルペリチド1.67γ → ニコランジル1.67γ
・p.172, 12行目:カルペリチドは投与しない → カルペリチドは通常量では投与しない
 穴があったら入りたいというのは,こういうことである。前著をお持ちの方は,早々に赤ペンで訂正していただきたい。お詫びに,今回の続編では専門外の内容にも怯まずに独りよがりな暴論を吐いておいた。ただし,嘘は書いてはいないが本心でもないので,真に受けて恨み骨髄とばかりに夜道などで後ろから刺さないようにしてもらいたい。かわりに,勇み足になりがちな「閑話休題」は姿勢を正して精一杯まじめに書いた。これで勘弁願いたい。
 本書でも前著と同様に,原文を読めば誰でも自ずとツッコミどころが容易くわかるようなところは,わざと言及しなかったところがある。むしろ著者としては,他人の書いたサマリーを鵜呑みにせずに,批判的な目をもって原文に当たるということを奨励したい。そういう手間をかけないと,表面的に一般に言われていることの真相は一切見えてこない。真相を探るための手間は,端折るところではない,と著者は信じているからである。 マニュアルやクリニカルパスはそれなりに有用なので,それらを守っていればとりあえずは合格点は取れるであろう。それでよしとするならばそれでもよかろうが,そこまでである。我々は,合格点を取るということだけのために日々過ごしているのではないのである。

2019-04-15

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

201ページ 4〜5行目
(誤) 28日死亡率の結果のARRは61%
(正) 28日死亡率の結果のARRは31%

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