Part 1 INTRODUCTION:読影の基本と正常解剖
1 章 骨軟部領域の単純X線写真
骨関節の単純X 線写真の基本原理
骨関節の単純X 線写真の検査方法およびレポート作成の基本
骨関節の単純X 線写真の正常解剖
手
手関節
肘関節
肩関節
頸 椎
腰 椎
骨 盤
股関節
膝関節
足関節
足 部
Part 2 PATHOLOGY:骨軟部疾患の画像所見
2 章 外 傷
骨関節の傷害
骨折の画像所見
骨折の記述
特殊な外傷
肩関節
肘関節
手関節
股関節
膝関節
足関節・足部
脊 椎
脊椎単純X 線写真で評価すること
イメージの適切性
アライメント
骨
頸椎前方の軟部組織
AP view(正面像)
小児の骨折
小児虐待で起こる骨折
他のモダリティ
3 章 関節炎
変形性関節症osteoarthritis(OA)
関節リウマチrheumatoid arthritis(RA)
結晶沈着性関節症crystal arthropathy
痛風gout
ピロリン酸カルシウム結晶沈着症calcium pyrophosphate disease
乾癬性関節炎psoriatic arthritis(PsA)
軸骨格の脊椎関節炎(強直性脊椎炎)axial spondyloarthritis(ankylosing spondylitis)
4 章 腫瘍および腫瘍類似病変
患者の放射線的な評価
単純X 線写真の基本原則
悪性腫瘍malignant tumour
骨転移bone metastases
多発性骨髄腫multiple myeloma
形質細胞腫plasmacytoma
骨肉腫osteosarcoma
軟骨肉腫chondrosarcoma
ユーイング肉腫Ewing’s sarcoma
良性腫瘍benign tumour
外骨腫(骨軟骨腫)exostosis(osteochondroma)
類骨骨腫osteoid osteoma
腫瘍類似病変tumourlike lesion
単純性骨胞simple bone cyst
感 染
5 章 代謝性骨疾患
骨粗鬆症osteoporosis
骨軟化症osteomalacia
副甲状腺機能亢進症hyperparathyroidism
慢性腎障害による骨ミネラル代謝異常chronic kidney disease metabolic bone disorder(CKDMBD)
ヘモクロマトーシスhaemochromatosis
6 章 感染症
感染経路
原因菌(起炎菌)
骨髄炎osteomyelitis
化膿性関節炎septic arthritis
感染性椎間板炎infective discitis
7 章 非外傷性の小児病変
発育性股関節形成不全developmental dysplasia of the hip(DDH)
ペルテス病Perthes’ disease
足根骨癒合症tarsal coalition
離断性骨軟骨炎osteochondritis dissecans
8 章 その他の骨病変
骨パジェット病Paget’s disease of bone(PDB)
肥厚性(肥大性)骨関節症hypertrophic osteoarthropathy(HOA)
虚血性骨壊死avascular necrosis(AVN)
9 章 人工関節置換
ハードウエアの故障と無菌性のゆるみ
感 染
アライメントの不良と不安定性
人工関節周囲の骨折
Part 3 SELFASSESSMENT QUESTIONS:読影トレーニング18 症例
症例問題
症例問題の解説
訳者序文
骨軟部画像診断は,単純X 線写真が基本である.しかしながら,CT やMRI が発達した今日においては単純X 線写真を最初にみる機会は徐々に失われており,初学者はいきなり関節のMRI やCT から学ぶことが多い.若い放射線科医たちは,全体的な骨のアライメントや年齢別の骨密度の程度,若年者や高齢者の骨の違いを把握しきれないまま,MRI で筋肉や靱帯の名前や位置をひたすら覚えるわけである.こうなると細かな解剖を記憶することが主な仕事のようになり,苦痛ばかりが先行してしまう.
単純X 線写真の読影を学ぶことは,骨軟部領域という大きな森を把握する第一歩である.MRI やCT のみの診断では「木を見て森を見ず」のことわざのごとく,骨軟部画像診断の真の面白さは伝わらない.本書は,単純X 線写真の基本的なことから,CTやMRI での所見を想像させるような興味深く楽しめる教科書であると断言できる.
翻訳するにあたり,日本語には注意し,著者のいいたいことが十分に表現できるように考慮した.また,英語では複数ある同じ意味を示す単語に関しては,日本語においてもさまざまな表現を用いた.さらに翻訳書にありがちな日本語の「固さ」にも配慮し,違和感のないように努めた.本書によって放射線科医だけではなく,医学生,研修医,開業医,放射線技師,理学療法士,看護師など,さまざまな職種の方にも単純X 線写真を学んでいただけるきっかけとなることを願っている.
2018 年8 月
小橋由紋子
原著序文
骨関節の単純X 線写真は,骨軟部領域の画像診断において中心的な役割を担っている.しかし,単純X 線写真の評価や解釈へのアプローチは,なかなか上手く教えられているものでもなく,また簡単に理解できるものでもない.本書は単純X 線写真の極意を提供し,なおかつ医学生,研修医や理学療法士,看護師,開業医,放射線技師などのための理想の本になると思っている.ここには放射線的な解剖だけではなく単純X 線写真による主な疾患の診断の仕方も述べられており,非常に使いやすい体裁になっている.関連性のある臨床所見と他のモダリティの画像の重要性も強調している.単純X 線写真でみられるサインは色づけした画像とペアにし,明確に表した.最初の写真は通常のものであり,2 番目の写真に色づけし,異常所見がわかるようにしている.2 番目の写真をみることで読影の練習ができるようになっている.このアプローチは著者らが何年もの間,医学生や救命救急,整形外科,リウマチ内科などのトレーニングを受けている医師,そして,医療と結びつくような他の職業に対して教えた貴重な経験に基づいている.本書を使うにあたり,読者は単純X 線写真上の手がかりやサインの拾い出しと診断,その後のマネージメントのやり方までをも学ぶことができる.
われわれは読者が,本書によって,骨軟部領域における単純X 線写真の基本的なことから,ごくわずかに認められる幅広い画像所見を,興味深く,楽しめるようになることを願っている.
Andrew K. Brown
David G. King