Ⅰ章 なぜCTなのか
Ⅱ章 ヘルニア(1)
Ⅲ章 ヘルニア(2)
Ⅳ章 虫垂炎・憩室炎
Ⅴ章 腸炎・腸管虚血
Ⅵ章 消化管穿孔
Ⅶ章 腸管閉塞・イレウス(1)
Ⅷ章 腸管閉塞・イレウス(2)
Ⅸ章 肝・胆・膵疾患
Ⅹ章 大動脈・出血
ⅩⅠ章 泌尿器疾患
ⅩⅡ章 婦人科疾患
初版を上梓してから16年,第2版から9年が経過しました.急性腹症にCT? という時代から,CTが急性腹症の交通整理をする,CTが無ければあの患者さんは助からなかったという時代に変わってきました.CT装置の高速化が進み数分で全身をスキャンでき,簡単に冠状断像や矢状断像を表示できるようになりました.新しい知見も次々と発表されています.というわけで,メディカル・サイエンスインターナショナルの正路修氏の勧めもあり,第3版を上梓する運びになりました.本書は,救急医,放射線科医,外科医のみならず,腹痛を訴える患者さんを診る可能性のあるすべての医師を対象としています.本書の特徴と読んでいくうえで参考になると思われる点を以下に記載させていただきます.
1) 症例:本書はまず症例を提示し,読者に診断と治療方針を考えていただき,画像所見,診断と治療方針を示す,それから当該疾患について解説するという手順になっています.そもそも初版を執筆しなければと思い立ったのは,CTが施行されなかった,遅すぎた,あるいは適切に読影されなかったために,命を落とされた患者さんに立て続けに遭遇したからです.「臨床医は患者さんに学ぶ」という基本を忘れてはいけないという思いから,このような構成になっています.基本症例は100症例ですが,間違いやすい非典型症例,鑑別すべき症例なども並べてあるので,実際には161症例になっています.
2) ノート:本文を理解する上で必須となる解剖,画像所見や疾患について,必要に応じて図表を使って解説しました.ノート1~90まであります.
3) 脚注:簡単な補足事項を示しています.人名については,本国での発音に近いカタカナを併記しました.何て呼べばいいの? ということが少なくないからです.
4) Q&A: 関連事項に関する質問(Q)です.一度考えてからAをご覧ください.
5) キーポイント:各症例で解説した事項のまとめです.心に留めておいてください.
6) 腹膜腔と腹膜外腔:臨床では解剖用語を無視して,腹腔という用語が(一部ではあると思いますが)腹膜腔を指していることがよくあります.腹膜腔と腹膜外腔(後腹膜腔を含む)の区別に混乱がある方は,p.162ノート28,p.163図7,p.177ノート33,p.178図4,および,p.423ノート83,p.425症例94図4をまずご覧ください.
7) イレウス:「閉塞性(機械的)イレウス」に代わって「腸管閉塞」,「機能的イレウス」を指す用語として「イレウス」が国際的に推奨されています.本書では混乱を避けるため,必要に応じて併記するようにしました.
連続する猛暑日のなか,鳴きはじめた蝉の声を聴きながら
2018年8月
荒木 力