1章 MRはおもしろい
Part 1 入門(基礎) 編
2章 MRI入門
3章 画像コントラスト
4章 パルス系列
5章 ピクセル・マトリックス・スライス
6章 画質最適化の基本
7章 アーチファクトとその対策
8章 空間エンコード
9章 共鳴現象と緩和現象
10章 MR のハードウェア
11章 品質管理
Part II エキスパート編
12章 いろいろなパルス系列1(スピンエコー系)
13章 いろいろなパルス系列2 (グラジエントエコー系)
14章 パラレルイメージング・その他の新しい撮像法
15章 フローとMRA
16章 心臓MRI
17章 MR スペクトロスコピー
18章 拡散強調画像,灌流強調画像,fMRI
19章 定量的MRI
20章 MRI の安全性
21章 MRI の最新動向
本書はMRIの基礎,原理の入門書である.扱われている範囲は,磁気共鳴現象,パルス系列の基本から始まり,fMRIなど最新の技術まで広く包括的である.以下,本書の特色を具体的にいくつか挙げ,あわせて効率的な読み方のアドバイスとする.
1.実際から始めて原理へ立ち戻って解説している
原題の「Picture to Proton」が表わす通り,まず画像から入り,必要に応じて理論に進むという方針を貫き,放射線技師,臨床検査技師はもとより,臨床医,放射線科医,医学生の誰もが無理なく理解できるように配慮されている.序文に書かれている通り,エンジンの構造を知らなくても車は運転できるが,運転しているうちにエンジンの構造も自ずから理解できるようになり,さらに詳しく車の構造を勉強すればさらに運転も上手になる,という姿勢が本書の基本であり,最大の特長である.
2.読者の学習段階,知識レベルに応じて読める
本書は,基本的な解説を本文に集中し,発展事項はBOXの形で囲み記事として各所にまとめられている.著者も述べている通り,入門者はまずBOXを飛ばして一通り目を通し,2回目以降は適宜興味のあるBOXも読むようにすることで,無駄なく知識を広げることができる.すでに知識のある読者は,そのレベルに応じて必要なBOXを選んで読むことができる.
3.数式を使ってきちんと説明している
MRIの入門書の中には,できる限り数式を使わないで説明するものも少なくない.一見魅力的なアプローチであるが,確固たる物理学の枠組みの上に成り立つMRIのことなのでどうしても無理があり,言葉だけの説明はかえって混乱のもとになりうる.ならば初めから,理解できる範囲の数式を導入する方が見通しもよいし,結局短時間で目的を達することができる.本書はもっぱらこの立場で,冒頭から躊躇なく数式を使ってきちんと「手を抜かずに」説明している.しかしレベルは大学初年級程度の数学にとどまっており,医療に携る読者であれば,必要に応じて教科書を復習すれば充分に理解できる範囲である.
4.相互参照が豊富である
原著には随所に他章,他項への相互参照が記載されているが,訳出にあたってさらにこれを補完,追加した.読者は,多少めんどうでもこの参照を追うことにより,複雑なMRIの知識体系をより立体的,総合的に把握することができる.
なお,本書は原書第3版(2017年発行)の翻訳であるが,原書第1版(2003年)は,神戸大学杉村和朗教授の監訳の下「標準MRI-画像・図から学ぶ基礎と臨床応用」(2004年,オーム社)として訳出されている.その内容は10年以上を経て大きく変化しているが,基本構成はほぼ変わりない.新たな翻訳を快く任せていただいた杉村先生には深く御礼申し上げる次第である.
翻訳にあたっては,放射線科医の百島がまず全文を翻訳し,医師であると同時にFSEやGRASEの開発者でもあるMR研究者の押尾が技術的な面をチェックし,必要に応じて訳注を加えた.最後になったが,常に完璧といえる綿密な編集作業をしていただいた編集部の正路修氏に深謝する.
2018年8月
訳者を代表して 百島 祐貴
2018-12-20
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
90ページ ボックス右段 上から2行目および8行目
(誤) バンド幅±10Hz
(正) バンド幅±10kHz