泌尿器領域の日常診療で遭遇する機会の多い疾患を中心に、画像の読影・診断を解説。考えながら学び記憶することを重視し、はじめに症例画像を提示する形式を採用。症例は3段階のレベルに分け、適宜類似疾患や鑑別疾患の画像を提示するなど、読者の理解度に応じた効果的な知識の習得ができるよう配慮。国際的な膀胱癌のMRI新基準“VI-RADS”を収載。放射線科、泌尿器科の研修医から専門医まで、泌尿器画像の読影力の向上に資する臨床テキスト。
1章 総論
2章 腎良性腫瘍
3章 腎悪性腫瘍
4章 腎血管障害,血流障害,移植
5章 炎症性腎疾患,びまん性腎疾患
6章 腎盂・尿管病変
7章 後腹膜
8章 副腎疾患
9章 男性内生殖器(前立腺,精嚢)
10章 男性外生殖器(精巣,陰茎)
11章 膀胱,尿道
12章 小児・先天異常
13章 腎尿路外傷,後腹膜血腫
14章 リンパ節
15章 IVR
今から20年近く前になるが,メディカル・サイエンス・インターナショナル社から「ケースレビュー泌尿生殖器の画像診断」の翻訳を依頼され,監訳したことがあった.これは米国の専門医試験を受ける前のレジデント,フェローを対象とした症例提示―問題―問題解説形式の本であったが,当時はまだ4列のMDCTが出始めたばかりで,MRIの拡散強調画像もなかった.その後,各領域に各種の新しい撮像方法,造影方法が日常臨床に浸透するなかで,日本の専門医試験受験者を主な対象に,診断専門医,指導医も含めて日常臨床の一助になるような内容の本の発刊を当時の編集者の正路 修氏と相談したところ,まずは専門の泌尿器から始められたらとの助言を受け,2017年の松山市の医学放射線学会秋季大会の会場の一隅で内容がほぼ決定した.
本書の他の成書と異なる特徴をあげると,次のようになる.
1) 症例提示+問題形式である.試されることに緊張感を感じ,記憶の中に深くとどめるようにこの形式をとった.これは読者の対象に診断専門医の面接試験受験のレジデントを含みその対策として,診断専門医,指導医クラスの復習の意味もある.
2) 症例を難易度別に3段階に分類している.個々の症例の難易度をレベル1:入門症例(専門医面接受験を想定した),レベル2:実力症例(専門医の実力を伸ばす症例),レベル3:挑戦症例(指導医クラスの復習のための症例)に分け,症例が泌尿器画像診断でどの位置を占めているかの指標とするために分類した.このようにそれぞれの症例の適切な対象者を明示したが,必ずしもこのレベルに拘る必要はない.症例の難易度の目安程度にしていただければ十分である.
3) 希少疾患は最小限にとどめた.日常臨床で遭遇することの少ない稀な症例はできるだけ参考症例やNoteに記載するようにした.
4) 症例と解説によりそれぞれ2~4ページにまとめ,それぞれの症例のポイントとなる画像のほかに適宜,類似症例,鑑別症例の画像を掲載した.
5) 必要な章では,入門者用に基本的な画像解剖や疾患分類など各章の総論的な内容を冒頭に記載した.
大阪医大のスタッフを中心に,大阪大学とその関連施設,奈良医大の泌尿器領域の専門家の諸氏の協力を得て1年以上かけて完成した内容である.皆の熱意が感じられる,思いの外に中身が濃厚な冊子となった.
本書が日常診療における放射線科医の画像診断のレベル向上の一助になれば,喜びの至りである.また,画像診断に興味がある泌尿器科医にも読んで頂ければ幸いである.なお,本書と並行して姉妹書となる産婦人科疾患編も執筆が進行中であることを申し添える.
最後に,超多忙の日常臨床の毎日から貴重な時間を捻出してくれた各章の執筆者諸氏,前回と同じように完成にあたり常に激励していただいた編集部の正路 修氏に深謝する.
2019年3月
凛とした白梅の綻ぶ頃
鳴海 善文
2019-04-26
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
11ページ 表1-2の下の表外注
(誤) FSE:fase spin echo法(高速スピンエコー法)
(正) FSE:fast spin echo法(高速スピンエコー法)