小児の医療倫理 ケーススタディ

実際にあった41の「ジレンマ」を考えよう

医療従事者、子ども、家族の3者がかかわる小児の倫理的問題では複雑な対応を求められる。「医学的に良い」とされる選択や治療方針に対して実際に反対意見が生じた場合の小児領域特有の41ケースにおいて、倫理の4原則を示しつつ思考のポイントや対立概念をまとめ、最終的な1つの解や「倫理的なジレンマ」についても丁寧に解説する。小児医療の現場で日々葛藤する医師、看護師、コメディカルにより深く考えるための材料を提供する。

¥4,950 税込
原著タイトル
Clinical Ethics in Pediatrics: A Case-Based Textbook
監訳:岡 明 東京大学医学部小児科教授
ISBN
978-4-8157-0167-3
判型/ページ数/図・写真
B5 344頁 図1
刊行年月
2020年1月
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Section 1 小児の医療倫理において核となる問題
1 小児の意思決定:インフォームドコンセント,親の許可,子どもの同意
2 小児の意思決定:思春期
3 推奨される治療の親による拒否
4 思春期患者に対する守秘義務
5 思春期患者の介入拒否(およびノンアドヒアランスの思春期患者)
6 家族の信仰と子どもの医療
7 小児科領域における忠実性と真実性:小児患者や思春期患者への情報開示の差し控え
8 忠実性と真実性:エラーの開示
9 小児に対する「非治療的」介入の希望を受けたとき:男児の割礼
Section 2 生命の始まりにおける倫理的問題:周産期・新生児医療
10 母体-胎児の狭間で
11 胎児治療と周産期医療機関
12 新聞のトップニュースから切り抜いた例より:出産補助技術と多胎妊娠
13 遺伝性疾患,素因,形質を確認するための着床前・出生前の遺伝子検査
14 分娩室での意思決定
15 新生児への生命維持治療の差し控えと中止
16 新生児医療におけるQOL 評価の役割
17 超早産児医療を取り巻く国際的な変化
Section 3 子どもの死:終末期の倫理的問題
18 終末期ケア:生命維持治療をめぐる議論の解決に向けて
19 無益性
20 事前指示とDNR 指示
21 死の判断
22 医師による子どもの死の幇助
23 フローニンゲン・プロトコル
24 死に直面したときの善行の定義:死に逝く子どもの症状マネジメント
Section 4 医療技術と科学の進歩による倫理的問題
25 固形臓器移植におけるドナーあるいはレシピエントとしての未成年者
26 エンハンスメントと小児
27 人工内耳と小児の難聴
28 性分化疾患の小児患者の治療における倫理的問題
29 知的障害をもつ未成年者の不妊手術
30 致死的疾患の小児患者における親の治療介入に関する希望
31 未成年者の遺伝学的検査とスクリーニング検査
32 診療における革新的技術の導入
33 子どもを被験者とする研究
Section 5 子ども,公衆衛生および司法
34 災害,パンデミック発生時の医療資源の配分とトリアージ
35 子どものワクチン接種を拒否する親と学校でのワクチンの義務化:親の自由,児童福祉,公衆衛生のバランスをとる
36 組織として,専門家として,あるいは公衆衛生上の義務の問題:青年ボクシングにおいて医師の守備範囲が問題となった事例
Section 6 小児の倫理にまつわるその他の問題
37 産業界との関係,贈答品,利益相反
38 医学トレーニングへの患者の参加協力
39 小児領域における境界の問題
40 問題がある,能力的に不十分な,または非道徳的な医療提供者への対応
41 倫理委員会とコンサルテーションサービス

訳者の一人である中釜先生が,本書をぜひ翻訳し出版したいといって,本書を紹介してくれまし た。早速読んで深い感銘と共感を覚え,日本にも紹介されるべきだと確信しました。
小児医療の生命倫理は,臨床倫理として多面的なアプローチが不可欠で,しかも小児の特殊性が 倫理的側面にも大きな影響を与えます。現場の人間は,結論のない複雑な問いに対して議論を重ね, 現実的な対応策を決めています。十分な議論を経たか,結論が正しいのかを常に自問しています。
本書では,明日からの臨床現場に役立つ対応法が,モデルケールを提示し読みやすく記載されて います。医療者が直面する倫理的な問題が最初に提示され,どのような論点を確認しながら議論す べきなのか,そして残されている課題は何かについて,これまでの歴史的な背景や議論の推移も含 めて記載されており,読者は読み進めながら頭の中を整理し医療倫理を理解できるような構成で書 かれています。どの章も,分担執筆者が医療現場での体験や実際の議論をもとに執筆している臨場 感があり,当事者たちが医療現場で経験するジレンマにも深い理解が示されています。倫理的原則 を医療現場に押しつけようとする姿勢はなく,現場からの視点を尊重して書かれています。原著の 発行は2011 年ですが,本書で示されている倫理的な課題は現在の日本の小児医療現場で経験する悩 みそのものであり,きわめて今日的な内容となっています。
小児医療の現場に立つ医師,看護師,コメディカルの方にとっても,またこれから医療の道を歩 む研修医看護師や医系看護系の学生にとって貴重な入門書です。カンファレンスやセミナーなどの 題材としても使用すべき本であると思います。
また,生命倫理の専門家の方にもぜひ読んでいただければ幸いです。小児医療は,家族を含めた family-centered medicine です。親に決定権があり,しかし子どもの個も尊重しなければなりませ ん。さらに胎児期から周産期医療は始まっており,そこには常に生命倫理的な課題は内在していま す。現場の医療者の多様な問いが,本書の中には記載されています。
本書の日本語版の刊行が皆様に利用され役立つことを祈念しています。
2019 年10 月
岡 明

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