やっぱりこれだ!
基礎と臨床がつながる!定番アトラス、大改訂
模式図/画像/実体写真を増量、より見やすく、読みやすく
構造だけでなく疾患・症状との結びつきがよくわかる
中枢神経系の構造と機能を、臨床との関連を踏まえ解説した定番アトラス、7年ぶりの改訂。 簡明な説明を加えつつ、脳の模式図をCT/MRI画像や脳の実体写真、染色像と対比して明示。具体的な疾患や症状との結びつきがよくわかる。 改訂にともない疾患に関する記述や図を追加し、カラー写真の比重が増え、臨床関連情報の項目に彩色してわかりやすくするなど内容はさらに充実。定価も値下げを実現。 医学生の神経解剖学講義・実習の副読本、研修医や臨床家の参考書に最適。
第1章 はじめに:本書の特色と使い方
第2章 中枢神経系の外観
第3章 脳神経
第4章 髄膜,クモ膜下槽,脳室と関連する出血
第5章 無染色切片とMRI像による脳の内部形態
第1部 脳の冠状断切片とMRI像
第2部 脳の水平断切片とMRI像
第6章 脳と脊髄の内部構造:機能区分,MRI像,染色切片
第7章 染色切片とMRI像による脳の内部形態:水平断と矢状断
第8章 神経伝導路と機能系:解剖学的な向きと臨床的な向きの図
第9章 中枢神経系の臨床
第1部 脳ヘルニアと椎間板ヘルニア
第2部 脳血管障害による症候群
第10章 解剖学と臨床とのつながり:脳血管造影,MRA,MRV
第11章 練習問題および解答と解説:USMLE形式
神経解剖学は臨床と密にかかわっており,脳の一部に損傷があっ
た場合,出現する症状から病変部位が特定できることが多い。解剖
学的知識を駆使して病変部位を推定しつつ,ついには1 か所にヒッ
トするまで,組み合わせパズルを解くような知的な面白みがある。
神経解剖学の講義ではそのわくわく感を学生に伝えることができな
いかと,常々思っている。
しかしながら,医学生をはじめ多くの学習者にとって,神経解剖
学は苦手意識を持つ科目のようである。確かに,中枢神経系の構造
を把握するには多くの解剖学用語が立ちはだかり,そのうえ三次元
的な構造として理解するにはたいへんな労力を要する。最終的に
は,神経系が複雑なネットワークを構成して機能していることがわ
かる段階にまで到達しないと,臨床の場で基礎知識との連携がとれ
ず,病態の理解に苦しむことになる。解剖と臨床のリンクを念頭に
おいて記された本書は,そのツボをしっかり押さえており,神経解
剖学の知識がいかに臨床の場面に応用されるかということを随所に
示し,神経系のもつ意義や重要性について,よりいっそう理解が深
まるよう工夫されている。
本書(日本語版第5 版)は原著第10 版の翻訳である。今版から,
臨床に関連する情報の記述部分は薄青色の背景で示してあり,損傷
をこうむった場合にどのような症状が現れるかなどについても細か
く記載してあるため,より基礎と臨床の結びつきを感じながら学習
しやすくなった。ある程度の基本的な知識のもとに臨床部分を読み
進めた後に,解剖に戻ってその病態の成り立ちを理解し,より詳細
な知識を得ることで病態の理解をさらに深めることもできる。この
ように興味のわいた臨床部分から基礎を理解するというやり方も可
能であり,最初から,やみくもに構造を理解しようとして行き詰ま
ることを防いでくれる。
今版では,外形と内部構造の標本写真がカラーとなって(第2~5
章),実体に近づいた。また,組織切片像を単に示すだけでなく,それとほぼ同等な像が得られるCT 像やMRI 像を提示し,それら臨
床画像の見え方にあわせて,背腹を反転させた模式図を取り入れて
いる(第6,7 章)。さらに積極的に基礎と臨床のギャップを埋める
工夫として,特に,MRI 像に重ねて伝導路を臨床的な向きで示すと
いう試み(第8 章)は,学習者にとって非常に役立つものと思う。旧
版の出版から6 年以上経過し,この間の画像技術の進歩はめざまし
く,新しく加わった画像はかなり充実したものとなっている。また,
新たにヘルニア症候群と脳血管障害を扱う第9 章が加わり,第8 章
までの基礎から臨床への流れと反対に,臨床症例から基礎へという
流れも提示して理解を促している。本書によって,構造・機能から
臨床へ,あるいは逆に臨床から構造・機能へと関連づけながら,神
経解剖学を統合的に理解していただければと思う。
最後に,本書の発行に至るまでには多くの方々にお世話になっ
た。特に,初版から第3 版までの翻訳を担当された故 山内昭雄先生
(東京大学名誉教授)には心から感謝申し上げたい。訳出時に行き詰
まった際には山内先生の旧版の訳にたいへん助けられた。また,旧
版からも多くのメディカル・サイエンス・インターナショナル社の
方々に大変お世話になった。特に星山大介氏,髙橋諒氏には,本書
完成まで用語統一,細部に至るまでの内容確認などをしてもらい,
発行にこぎつけることができた。これらの方々に改めて感謝の意を
表する。
2020 年3 月
佐藤二美