効果部位濃度ってどこの濃度? アイソボログラムってなに?
LiSA好評連載「ふぁ〜まこKD」、新規章を追加し書籍化
静脈麻酔シミュレーションがよくわかる!
麻酔科医が日常的に使用するTCIポンプを使いこなす上で必須となる、静脈麻酔薬の薬物動態・薬力学(PK/PD)に関する知識=「効くしくみ」について解説する。苦手意識を持つ初心者にも理解しやすく、出来る限り楽しく気軽に読めるよう、全14話の若手医師の成長物語の形式で進む。また複雑な数式は避けるなど、随所に工夫を施した。TCIポンプの使用に自信が持てる書。
第1章 大先生,不自由研究をする
血中濃度と分布容積
第2章 大先生,単位の謎にぼやく
消失速度とクリアランス
第3章 大先生,シミュレーションする
コンパートメントモデル
第4章 指導医の特別講義
薬物動態シミュレーション
第5章 大先生,手術で大混乱する
効果部位濃度と薬力学(1) 血中濃度との関係
第6章 大先生と謎のS字カーブ
効果部位濃度と薬力学(2) シグモイド最大効果モデル
第7章 ケンタ君の優秀演題発表
効果部位濃度と薬力学(3) 投与経路とke0
第8章 大先生,学生指導する
target controlled infusionと予測精度
第9章 大先生,真の処理能力が問われる
肝機能異常とクリアランス
第10章 大先生,医学生になりすます?
腎機能低下と静脈麻酔
第11章 大先生,男の価値について考える
薬力学的相互作用
第12章 大先生,テレビデビューする
サイズと薬物動態(1)
第13章 大先生,あまたの失敗症例を報告する
TIVAにまつわるトラブル
第14章 大先生,体を張って指導する
サイズと薬物動態(2)
おまけ シミュレーションアプリの使い方
索引
ゴロで覚える!
血中濃度,薬物量,分布容積の関係
消失速度定数
血中濃度シミュレーションの考え方
薬物動態モデルの選択
薬物の濃度と効果の関係が薬力学である
薬力学パラメータ
ke0
TCIポンプの精度指標
イオン型/非イオン型と乖離型/非乖離型
response surface modelの理解のヒント
肝血流量に代謝が依存する麻酔薬
登場人物紹介①
マンガ 大先生は今日も行く!
スイハラコース produced by Jun Takanezawa
登場人物紹介②
『静脈麻酔薬の効くしくみ』を手に取ってくださりありがとうございます。本書は, LiSA 2018年1~12月号に連載された「ふぁ~まこKD」の内容を修正し,加筆したものです。
テーマである「薬物動態・薬力学(PK/PD)」は,麻酔科学の教科書での解説は数式オンパレードの場合もあり,控えめに申し上げても,大学入試を終えて久しい臨床医にとっては,学ぶには多少の気力が必要な分野だと思います。正直に申し上げますと私は,すべて読み飛ばしていたため,麻酔科医になってしばらくはPK/PDという用語すら知りませんでした。「ふぁ~まこKD」連載のお話をいただいたとき,本当に読んでもらえるのだろうか,大丈夫だろうか,と思ったのですが,結果的に書籍化され,序文を書いています。
静脈麻酔薬は,ほかの診療科で使用されるさまざまな薬物と比較すれば,意識消失や呼吸停止など効果にインパクトがあり,発現や消失も速いといえます。そして何より,麻酔科医が投与量や効果に最大の関心を払っています。したがって,麻酔科医は,臨床経験のなかで,すでにPK/PDの概念を理解しやすい素地を培っていると言えるでしょう。本書は,その日々の経験とPK/PDの普遍的な考え方が結びつくお手伝いをすることを目的としています。ある程度の数式の使用は避けられませんが,可能な限り式が意味することを本文中で解説していますので,数式が並んで意識が遠のきそうな箇所は「空気だけ読んで」いただいてもかまいません。
本書が読者の皆様にとって, PK/PDを身近に感じていただく機会となれば,さらに欲を言えば,この分野で研究を行う入り口になるのであれば,著者としてこれに勝る喜びはありません。
私の留学中に, PK/PDの臨床研究をゼロからご指導くださり,公私ともに支えてくださったメンターのTalmage D.Egan先生(米国ユタ大学麻酔科主任教授)にこの場を借りて御礼申し上げます。そして,本書の執筆にあたり,日常診療の中で多くのヒントを与えてくださいました,村川雅洋主任教授をはじめとした福島県立医科大学麻酔科の皆様に感謝申し上げます。
最後に,連載開始から出版に至るまで終始励ましの言葉をかけつづけてくれたLiSA編集長の江田幸子氏,私の拙い文章に根気よく向き合ってくれた同編集部中澤亜由美氏,本書のイメージにぴったりなイラストを描いてくれた小林紀子氏など,本書の成立にご尽力いただいたすべての方に心からの感謝を申し上げます。
2020年3月11日
小原 伸樹