症状や所見からアプローチする めまいのみかた

単発? 再発? 頭位性? 慢性? それとも高齢者?

めまい診療が苦手な医師、必読!

めまい診療において、単発性や再発性などいくつかの識別しやすい臨床パターンごとに、鑑別の「手掛かり」となる重要な症状・特徴を提示し解説。原著は、神経疾患にも内耳疾患にも精通した神経耳鼻科医が執筆し、危険な神経疾患、QOLを大きく妨げる内耳疾患にも対応。各章の表では、臨床状況に応じためまい疾患の手掛かり症状・所見をひとまとめにして整理。わかりづらいめまいの診察・眼振動画も60点視聴できる。総合診療・一般内科医に加え、脳神経内科・耳鼻咽喉科医にも有用。



 



「症状や所見からアプローチする めまいのみかた」付属動画はこちら(視聴には書籍に記載されているID、パスが必要です)

¥5,060 税込
原著タイトル
Dizziness : A Practical Approach to Diagnosis and Management, 2nd edition
ISBN
978-4-8157-0176-5
判型/ページ数/図・写真
B5変 頁236 図26 動画60
刊行年月
2020年7月
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Chapter 1 平衡機構に必須の解剖と機能
はじめに
前庭系の解剖と生理
眼球運動
多感覚の統合

Chapter 2 メマイとめまいの症状と検査
症状
身体診察・検査の要点
眼球運動の検査
前庭性眼球運動
頭位変換法
Frenzel眼鏡
姿勢と歩行
聴覚の臨床的評価
起立時の血圧
検査室の検査
末梢性と中枢性前庭障害の鑑別
めまい患者の画像検査

Chapter 3 単回の遷延するメマイ
前庭神経炎
脳幹・小脳病変
耳性帯状疱疹(Ramsay Hunt症候群)
前庭性片頭痛の初回発作
BPPVの初回発作
Ménière病の初回発作
急性持続性メマイのその他の原因
◉手掛かりがないときはどうするか?

Chapter 4 反復性メマイとめまい
反復性メマイ
 前庭性片頭痛
 良性反復性メマイ
 Ménière病
 椎骨脳底動脈系TIAによるメマイ
 前庭性発作症:第Ⅷ脳神経の血管圧迫?
 外リンパ瘻
 反復性メマイのまれな原因
 ◉手掛かりがないときはどうするか?
反復性めまい
 起立性低血圧
 不整脈
 パニック発作
 薬物誘発性めまい
 反復性めまいのその他の原因
 ◉手掛かりがないときはどうするか?

Chapter 5 頭位性メマイ
後半規管BPPV
水平半規管BPPV:半規管結石症タイプ
水平半規管BPPV:クプラ結石症タイプ
前半規管BPPV
前庭性片頭痛
中枢性頭位性メマイ
頭位性メマイのその他の原因
◉手掛かりがないときはどうするか?

Chapter 6 慢性的なめまいとふらつき
慢性のめまいの原因
①メマイの既往のある患者
 視覚性メマイ
 運転手の方向感覚喪失症候群
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
 その他の心因性のめまい症候群
 慢性前庭性片頭痛
 末期Ménière病
②進行性の平衡失調の患者
 両側性前庭機能障害(BVF)
進行性の平衡失調を引き起こす神経障害
③メマイまたは平衡失調の既往のない患者
慢性的なめまい患者の管理
◉手掛かりがないときはどうするか?

Chapter 7 高齢者のめまい,ふらつき,転倒
はじめに
生理学的な老化現象がバランスに及ぼす影響
薬物誘発性めまい
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
起立性低血圧
血管障害
神経疾患
転倒への恐怖と慎重な歩行
不整脈
整形外科的疾患
高齢者の転倒
意識消失(LOC)
転倒患者へのアプローチ
転倒者の管理
◉手掛かりがないときはどうするか?

Chapter 8 めまい患者の治療
患者の安心感,情報提供,カウンセリング
リハビリテーション
メマイ,悪心,嘔吐の薬物治療
メマイの外科的治療


参考文献
索引

めまいはありふれた症状である。プライマリ・ケアの現場においても,救急外来においても,あるいは脳神経内科の外来においても,非常によく遭遇する。
 初療する機会の多いプライマリ・ケア医や救急医は,中枢性か末梢性か迷うことが少なくないだろう。中枢性か末梢性かの鑑別が難しいケースでは,脳神経内科医も内耳疾患ではないか,耳鼻科医も神経疾患ではないか,互いに不安を抱えながら診療しているのが現状である。
* * *
本書の著者の1人は,水平半規管型の良性発作性頭位めまい症における耳石再配置法のLempert法(いわゆるバーベキュー回転)に名を残す,めまい診療の大家である。これは,私が本書の翻訳を決めた最初のきっかけであるが,さらに中身を読んで気づいたこの本の大きな魅力は,単一の視点にある。
 本書は,内耳疾患にも神経疾患にも精通した神経耳鼻科領域の専門家が執筆している。すなわち,「脳神経内科医目線」「耳鼻科医目線」がなく,単一の視点でめまい診療のすべてを知ることができるのである。
 また,第1章には理解に必要な解剖学的あるいは生理学的な基礎知識が,第2章には臨床症状や検査による患者評価が,それぞれ読むのにちょうどよい量で解説してある。これらは,以降の章を理解するのに役立つ。第3~7章は,めまいを「単回の遷延するメマイ」「反復性メマイとめまい」「頭位性メマイ」「慢性的なめまいとふらつき」「高齢者のめまい,ふらつき,転倒」に分けて解説しており,非常に実践的である。病名で章立てするのではなく,「臨床的な特徴からどういう疾患を鑑別に挙げていくのか」というアプローチなので,臨床現場で使いやすい。
 めまい診療で評価が欠かせない眼振や眼球運動などは動きを伴うため,写真で理解するのが難しいが,これらについては,豊富な動画がある。なお,最後の第8章では治療をまとめている。
 最近話題の持続性知覚性姿勢誘発めまいのほか,アルコール誘発性めまい(酔っ払うとグルグルと景色が回るようなめまい)などに触れている点も,この本の魅力といえよう。
* * *
本書は森松暁史氏と私がそれぞれ全文を翻訳し,最終的に私がまとめた。「めまい」の訳語については,少し工夫がある。原著には,vertigo/vertiginous,dizziness/dizzyという表現が繰り返し登場し,また“vertigo and dizziness”という表現があるなど,同じ「めまい」ではあっても,明らかにvertigoとdizzinessを使い分けている。
 Vertigoは「回転性めまい」,dizzinessは「浮動性めまい」と翻訳されることが多いが,そのように単純に翻訳すると意味が通りにくい箇所が多々あった。そのため,vertigo/vertiginousは「メマイ」,dizziness/dizzyは「めまい」と翻訳し,総称としての意味合いで用いられているときや疾患名は,vertigoであっても「めまい」とした。日本での日常診療では,区別せずにカルテに「めまい」として記載されるが,英語圏での微妙なニュアンスの違いを感じていただきたいと考え,あえてこのような表現とした。
 多くの方々に本書を手に取ってもらい,苦手なめまい診療に自信をもてるようになっていただければ幸いである。

2020年7月
井口正寛


はじめに ―本書の使い方―



この本を最初から最後まで読み通すようなことはしないでほしい! 本書は,めまい患者を診る非専門家に向けて書かれたもので,めまいの鑑別と治療のクイックガイドを必要とする医師を対象にしている。従来の本は,そうした状況で常に役立つとは限らない。なぜなら,疾患別に書かれていて,最後まで読まないと,実際の患者で何が問題になっているのかわからないからである。この本は症候別のアプローチをとっている点で,従来の本と一線を画する。
 本書は2つの導入章から始まる。前庭系の重要な解剖と機能を扱う章と,めまい患者の評価に関する章である。これら2章は,めまい患者を診るうえで地固めとなるため,ぜひ読んでほしい。その先は,特定のめまいの問題を解決したいなら,その問題を扱っている各論に直接進んでもらって構わない。臨床に関する各論は,頭位性メマイや反復性めまいなど,よくある識別しやすい臨床状況に合わせて章タイトルを付してある。各章では最初に,関連する疾患の主な特徴による鑑別診断の表があり,そのあとに,表中の記載と同じ順で簡潔な解説が続く。ほかにも数多くの表が,鑑別診断の助けとなる。よくみる疾患は詳細に説明してあり,まれなものは簡単に触れるに留まっている。各論の章末には「手掛かりがないときはどうするか?」という項があり,非常に難しい臨床状況を乗り越えるためのヒントやアドバイスが示してある。
 最終章の「めまい患者の治療」では,前庭抑制薬の使用やさまざまな疾患に共通する前庭リハビリテーションの原則など,治療の一般的な側面について説明されている。治療の具体的な部分については各章で扱う。付属の動画コンテンツには,よくみる臨床所見の実例のほか,診察のしかたや,良性発作性頭位めまい症(BPPV)の診断・治療のための頭位変換手技,また前庭リハビリテーションが含まれている(動画は,表紙の次々頁のシールをはがしてユーザー名とパスワードを入力のうえ閲覧できる)。各章で,該当する動画の閲覧を促されるが,どのようにめまい患者に対処するかという「実践的な」導入として,すべての動画を一気に見たくなるかもしれない。
 前庭性片頭痛や,BPPVのバリアント,めまいの精神医学的な原因など治療可能な新しい症候群が同定され,めまいの世界はこの20年間で完全に変化した。本書がめまいとバランス障害に関する読者の興味を刺激し,次にめまい患者に遭遇したときには,楽観的に考えられることを願っている。

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