名人芸はなく,“ふつうのやり方”しかありません。
「循環器治療薬ファイル」「循環器病態学ファイル」に続く村川裕二先生オリジナルの「ファイルシリーズ」第3弾、10年ぶりの改訂。不整脈の薬物治療について著者独特のポイントを押さえた筆致により解説。ガイドラインは尊重しつつ医師の判断と経験に基づいた治療をサポートする。改訂にともない頁数は3割ほど増量、定価据え置き。循環器科、内科の若手医師や不整脈診療に苦手意識を持つ医師にとっての必読書。
Part 1 総 論
1 最初から「結論」
2 クリアすべき薬物治療
3 プラスアルファの知識とは何か?
4 どの薬剤が使われているか?
Part 2 基 礎
5 心筋の活動電位のベーシック
6 イオンチャネルに関する基本的な知識
7 いろいろあるK+チャネル
8 洞結節は自分で動く
9 房室結節という関所
10 房室結節の伝導を抑制する薬
11 triggered activity,EAD,DAD
12 リエントリー:興奮がまわるということ
Part 3 抗不整脈薬のアウトライン
13 抗不整脈薬とはつまり何か?
14 抗不整脈薬の分類:Vaughan-Williams 分類はまだ生きている
15 たくさんあるⅠ群薬:どこが同じで,どこが違う?
16 淡泊系と粘着系:Na+チャネルからの解離速度
17 チャネルに結合するタイミング:活性化チャネルブロッカーと不活性化チャネルブロッカー
18 Ⅰ群薬の古典派:Ⅰa 群薬
19 Ⅰ群薬のマイルドタイプ:Ⅰb 群薬
20 力が強い。本当は使いやすい:Ⅰc 群薬
21 脇役に見えて出番は多い:Ⅱ群薬(β遮断薬)
22 器質的心疾患があれば:Ⅲ群薬
23 不均一な性格をもつ:Ⅳ群薬
24 何も起きないわけがない:副作用
25 torsades de pointes が起きたら
26 治療薬を選ぶ発想
Part 4 心房期外収縮
27 変行伝導は大事か?
28 治療するかどうか,誰が決めるか?
29 使いたい抗不整脈薬,使ってもいい抗不整脈薬
30 Case 1:訴えの多い中年女性
31 Case 2:ちょっとした僧帽弁閉鎖不全がある
32 Case 3:blocked PAC
33 いろいろなP 波:多源性心房期外収縮
34 Case 4:顕性WPW 症候群でショートランを繰り返す
Part 5 心室期外収縮
35 PVC が“治療対象でない”とはどういう意味か?
36 頻発するPVC は心不全を招くか?
37 子供のPVC はなぜ怖いか?
38 CAST study という歴史
39 Lown の分類を使うか?
40 どの抗不整脈薬を使うか?
41 Case:流出路起源のPVC
42 連発の多いPVC
43 急性心筋梗塞のリドカイン
Part 6 発作性上室頻拍
44 頻拍の呼び方
45 PSVT は2種類と割り切る
46 AVNRT の速伝導路と遅伝導路
47 AVNRT はどう回るか?
48 long RP′ tachycardia がわかると何が得か?
49 WPW 症候群とAVRT
50 WPW 症候群につきものの頻拍
51 WPW 症候群-偽性心室頻拍があるのにカテーテルアブレーションをすぐ行えないとき
52 すぐ止めたいとき
53 ATP 製剤で止める
54 WPW 症候群のPSVT をプロカインアミドで止める
55 WPW 症候群のPSVT をジソピラミドやⅠc 群薬で止める
56 顕性WPW 症候群の慢性期
57 顕性WPW 症候群以外の慢性期はワンパターン
Part 7 心房粗動
58 通常型と非通常型
59 抗不整脈薬で心房粗動を治療できるか?
60 期待薄でも抗不整脈薬による洞調律化を狙いたいとき
61 心房粗動でも血栓塞栓症を生じるか?
Part 8 心房細動
62 肺静脈が心房細動の起源
63 AF はAF を招く(AF begets AF)
64 基礎疾患のある発作性心房細動(PAF)
65 急性心筋梗塞と心房細動
66 AFFIRM study:洞調律化群 vs. レートコントロール群
67 心不全の心房細動
68 なぜ抗凝固療法?
69 CHADS2 スコア
70 CHA2DS2-VASc スコア
71 抗凝固療法の疑問
72 洞調律化とその維持
73 静注抗不整脈薬によるAF 停止は意味があるか?
74 レートコントロールは十分か?
75 レニン-アンジオテンシン系(RAS)抑制薬の役割
76 Case 1:持続の短いPAF
77 Case 2:はじめての発作
78 Case 3:半日近く続いている動悸
79 電気的除細動 vs. 静注薬
80 Case 4:1 日続いているAF を静注抗不整脈薬で止めたいとき
81 顕性WPW 症候群(偽性心室頻拍)の心房細動
82 Case 5:経口ピルシカイニドによる停止
83 Case 6:弁膜症がある
84 Case 7:夜間に好発する
85 Case 8:心房粗動も認めるとき
86 Case 9:倒れる心房細動
87 Case 10:肥大型心筋症に血栓塞栓症を生じた
88 Case 11:レートコントロールが難しい
Part 9 wide QRS tachycardia
89 外見からは4種類
90 wide QRS tachycardia の鑑別と房室解離
91 wide QRS tachycardia 鑑別法を「覚えられるレベル」に単純化する
92 まず特発性VT を考える
93 ベラパミル感受性VT に出会ったとき
94 流出路起源VT(左脚ブロック右軸偏位型VT)の病態
95 流出路起源VT(左脚ブロック右軸偏位型VT)を停止させる
96 根拠はないが,なんとなくVT のような気がするとき
97 血行動態が安定しているVT:プロカインアミドの復活
98 「もしかしたら上室性頻脈かもしれない」と思ったとき
99 急性心筋梗塞や拡張型心筋症:ニフェカラントを使う
100 静注アミオダロンを使う
101 器質的心疾患を背景にしたVT/VF 予防
102 経口アミオダロンを陳旧性心筋梗塞や不整脈原性右室心筋症のVT/VF に使う
103 非虚血性心筋症のVT
104 QT 延長症候群とtorsades de pointes
105 21 世紀のβ遮断薬:静注β遮断薬ランジオロール・貼付型β遮断薬ビソプロロール
Part 10 心室細動
106 総 論
107 electrical storm とは?
108 electrical storm への対策
109 特発性VF
110 心不全の不整脈とレニン-アンジオテンシン系抑制薬
Part 11 徐脈性不整脈
111 薬剤による洞徐脈
112 洞徐脈:注射薬による治療
113 洞徐脈:経口薬での対処
114 発作性房室ブロック:アデノシン感受性と房室ブロック
Memo
“偽性”洞不全症候群
James 束とMahaim 束
頸動脈洞マッサージを試して意味があるか?
AF のカテーテルアブレーションについて
特発性VT の急性期治療
ニフェカラントのあとにメキシレチンを投与した検討
J-Land Ⅱ study
不整脈の薬物治療について学ぶための本です。
抗不整脈薬を使う機会があるかたを対象にしています。
不整脈には「すばらしい薬物治療」はありません。
深く追求しても,浅く考えても「治療効果」に差がないこともあります。
しかし,ロジックがないと「不都合な結果」を招きます。
カテーテルアブレーションや植え込みデバイスが進歩した現在でも,抗不 整脈薬は少なからず使用されています。
抗不整脈薬の基本的な薬理,不整脈の生理学,ふたつの要素を知って好ま しい結果に至ることは臨床の醍醐味があります。
ガイドラインは尊重していますが,個人的な思い込みもたくさん書きました。
「文献的な裏付け」はかなりあるのですが,隘路を避けるようにシンプル に書きました。
初版は2010 年。
10 年を経て,第二版。
共感していただけるところがあれば嬉しいです。
令和2 年著者