アレルギー疾患学のスタンダード、 初の日本語版!
全身的、包括的な管理・治療を目指して
出でよ! 世界標準のTotal Allergist(総合アレルギー医)
アレルギー疾患全般にわたり包括的かつ実践的に解説した定評あるロングセラー、初の日本語訳。近年の治療法の進展を踏まえ、免疫系や治療薬の作用機序など基礎知識から紐解き、疾患別に病理、診断、治療を詳述。全身的・各科横断的に診ることが求められるようになったアレルギー疾患を、専門医はもちろん、呼吸器科・小児科・皮膚科・耳鼻咽喉科・眼科・消化器科等各科医師が連携して治療する際に共有すべき知識を網羅。
Section I
免疫系:生物学的および臨床的観点
1 免疫学総論
2 IgE依存性および他の過敏反応の免疫学
3 アレルギー反応の生理活性メディエーター
4 アレルギー診療における免疫不全の評価と管理
5 好酸球増加の評価
Section II
アレルギーと喘息における病因および環境要因
6 アレルギー性疾患を誘発する抗原などについて
7 米国における空中花粉の飛散状況
Section III
検査と治療の原則
8 即時型過敏症の診断
9 アレルギー性肺疾患の生理学的・生物学的評価
10 上気道のアレルギー疾患および関連疾患の放射線学的評価
11 下気道のアレルギー疾患および関連疾患の放射線学的評価
12 慢性鼻副鼻腔炎:鼻腔内視鏡検査と手術の役割
13 外来抗原によるアレルギー疾患の免疫学的管理の原則
Section IV
アナフィラキシーとその他の過敏反応
14 アナフィラキシー
15 有刺昆虫に対するアレルギー
16 多形紅斑,Stevens–Johnson症候群,中毒性表皮壊死症
17 薬物アレルギー
PART A イントロダクション,疫学,有害反応の分類,免疫化学的基盤,リスク因子,評価方法,患者の管理
PART B 個々の薬物に対するアレルギー反応:低分子医薬品
PART C 高分子医薬品に対する免疫反応
18 食物アレルギー
Section V
喘息
19 喘息
20 乳幼児の喘息
21 急性重症喘息
22 喘息臨床研究
Section VI
その他の呼吸器免疫疾患
23 過敏性肺炎
24 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
25 職業性免疫性肺疾患と職業性鼻炎
Section VII
上気道疾患
26 アレルギー性鼻炎
27 鼻ポリープ,鼻副鼻腔炎,および非アレルギー性鼻炎
28 眼と耳のアレルギー疾患
Section VIII
皮膚のアレルギー性疾患
29 アトピー性皮膚炎
30 接触皮膚炎
31 蕁麻疹,血管性浮腫,遺伝性血管性浮腫
32 瘙痒を有する患者へのアプローチ
Section IX
薬理
33 抗ヒスタミン薬
34 β刺激薬
35 アレルギー性疾患におけるステロイド治療
36 他の抗アレルギー薬:クロモグリク酸,nedocromil,抗ロイコトリエン薬,抗コリン薬,テオフィリン
37 吸入薬の送達デバイス
38 生物学的製剤を含む新規免疫学的治療
Section X
特殊な状況
39 妊娠中のアレルギー性疾患
40 好酸球性食道炎
41 慢性咳嗽
42 アレルギー患者の睡眠障害
43 心理的合併症をもつ患者の管理
44 アレルギーと免疫に関するin vivo,in vitro検査
45 アレルギーの診断と治療における議論のある未確証の方法
46 アレルギー・免疫学における個別化医療
索引
アレルギー疾患は世界的にも増加の一途をたどっている。わが国においても国民の約半数が咳嗽,鼻閉,発疹,かゆみなど何らかのアレルギーに関連した有訴症状があり,今や“ 国民病" と言っても過言ではない。そして症状を伴うアレルギー疾患は個人の生活の質,活動あるいは勤労意欲の低下の原因となり,ひいてはこれらに起因するプレゼンティズムは社会全体の労働生産性の低下につながりかねない。また喘息の増悪,アナフィラキシーショックな ど死に至るケースも少なからずあり,社会的インパクトの大きい疾患である。このような背景から2015 年に「アレルギー疾患対策基本法」, 2019 年に「免疫アレルギー疾患研究10 か年戦略」が施行・策定されるなど,わが国においてもアレルギー診療の均てん化,疾患研究促進への本格的な取り組みが始まっている。
一方で多くのアレルギー疾患の基本病態は臓器間で共有され病状が出現することを特徴としていることから,診療科を越えた横断的な診療が必要とされる。また,小児から成人まで管理が必要な症例もあり垂直的な診療にも目を向けなければならない。このため,アレルギー疾患全体を俯瞰的に診ることができるTotal Allergist すなわち総合アレルギー医の育成が求められている。すでに海外では数十年以上も前からアレルギー病態の包括的かつ専門的な管理・治療を行うアレルギー科の診療・教育体制が確立されている。しかし,日本ではいまだアレルギー科としてのシステムが円滑に運営されている施設は少ない。今後のアレルギー診療においては1人の患者さんに起きている病態を全身的・包括的に管理,治療を行うことが重要であることは言うまでもなく,さらには異なる多くの分野の人々が協力しながら診療体制を構築していく必要がある。
そのような中, 2018 年8 月当院でも呼吸器内科,消化器内科,小児科,皮膚科,耳鼻咽喉科,眼科とともにアレルギーセンターの開設に至った。英国Guy's & St Th omas' Hospita(l Department of AdultAllergy)への留学で1 年間総合アレルギー診療を学んだ正木克宜君が,このセンターの最初の共同作業として各科の壁を越え広くアレルギーについて学ぶために,診断と治療に関する包括的かつ実用的である本書「Patterson's Allergic Diseases」の翻訳を提案してくれた。そして,およそ1年の年月を経てついに本書上梓の運びとなった。この間予想もしていな かったコロナ禍にも見舞われ,普段以上の緊張と時間を日常臨床に割かれる中,監訳者,訳者の皆さんには献身的に力を尽くしていただいた。そして,出版社の星山様の多大なご尽力によって翻訳を完成することができた。関係者皆様に深謝申し上げたい。
是非,多くの医学生,研修医,そして専門医・非専門医を問わずアレルギー診療に興味のある先生方に本書を手に取っていただきたい。本書がアレルギー学の門をたたき,その世界をともに広げていくきっかけとなることを心から願っている。
慶應アレルギーセンター センター長
慶應義塾大学医学部 内科学(呼吸器) 教授
福永興壱
Patterson's ' Allergic Diseases第8版(本書『パターソン臨床アレルギー学』の底本)でのわれわれの目的は, Dr. Roy Patterson ただ一人の編集によって1972年に出版された第1版と同じように,今日における実用的で優秀な情報源となることである。彼は非常に才能あるアレルギー・免疫科の臨床医であり,研究者であり,教育者であり,真に三拍子そろった人物であった。われわれはこの最新版で, Roy からの伝統であるアレルギー・免疫学の素晴らしさをさらに伸ばすことに注力した。この最新版は,アレルギー学という魅力的な分野で飛躍的に拡大し続ける知識で満ちていると信じている。われわれは特に, 1989 年に結成され,米国アレルギー・喘息・免疫学アカデミー(American Academy of Allergy, Asthma, and Immunology: AAAAI)および米国アレルギー・喘息・免疫学会(American College of Allergy, Asthma, and Immunology: ACAAI)のメンバーで構成される合同タスクフォースの治療ガイドラインなどの,最新のエビデンスにもとづくガイドラインへの参照を含めるように努めた。
これまでの版でもそうであったように,本書は主に医師や医療従事者のための指針となるように書かれている。患者の評価と管理を目的としたものだが,基礎となる免疫メカニズムや病態生理学,薬理学,診断技術についても議論されている。アトピー性疾患が一般的になり,ますます広がってきていることから,われわれは,さまざまな医療従事者がアレルギー性疾患やその他の免疫疾患のある患者を治療する際に,この版を役立ててくれることを願っている。今回の版では,アレルギー・免疫学の臨床検査とアレルギー・免疫学分野における個別化医療を扱う2つの章を新たに追加した。
われわれはアトピー性疾患の患者のケアは,他の専門医との協力によって最も効果が高まると信じている。したがって,約4分の1の章は,アレルギー・免疫科の診療において協働すると考えられる他の分野の専門医によって書かれている。これらの専門分野には,皮膚科,消化器科,耳鼻咽喉科,精神科,呼吸器科, 放射線科が含まれる。われわれはPatterson's Allergic Diseases第8版へ参加してくれた各著者に心から感謝する。
Leslie C. Grammer, MD
Paul A. Greenberger, MD