特集:ホスピタリストに必要な手技
ホスピタリストが一人ぼっちでも安全に戦えるために
ホスピタリストは入院患者の診療を総合的に担当するため,多くの手技を安全かつ確実に施行することが求められます。日本の場合,都市部の病院では専門科で行うことが多い手技であっても,特に地方や僻地の総合病院で特定の専門科医師が不在の場合,急を要する際にはホスピタリストが行わざるを得ないことがあります。
今回の特集では,なかには「骨髄穿刺・生検」のように異論も出るかもしれないコンテンツもあえて含めました。僻地や離島の病院から,血液内科専門医のいる病院に紹介搬送することは容易ではありません。しかしそこで医療を必要とする方たちは間違いなく存在し,実際に医療が行われています。一人でも立ち向かわなければならないホスピタリストが一定数いるものと考えます。
日本版ホスピタリストには,「そこで誰もやりたがらないこと」「必要だができる人がいないこと」も隙間を埋めるように取り込む柔軟性・カメレオン性が求められることがあります。本特集では,そのような場所でも一人で戦えるように必要となる手技について網羅することを目指しました。さらに単なる手技の解説書ではなく,できるだけ文献検索を行い,エビデンスを重視しています。これまでとは一味違う「手技」特集としてご活用いただければ幸いです。
はじめに|ホスピタリストが一人ぼっちでも安全に戦えるために
井澤 純一 沖縄県立八重山病院 内科
教育
1. シミュレーション教育と手技の関係:日本導入の鍵は「ファシリテーター」養成にアリ!
重城 聡 SimTiki Simulation Center, John A. Burns School of Medicine, University of Hawaii at Manoa/亀田総合病院 麻酔科・シミュレーションセンター
野木 真将 The Queen's Medical Center Hospitalist Group
[ミニコラム①] 臨床現場での手技教育のあり方:手技をどう教え,どう評価するか
照屋 周造 沖縄県立八重山病院 内科
尾原 晴雄 沖縄県立中部病院 総合内科
緊急気道管理
2. ホスピタリストにとっての安全な気道管理総論:押さえておきたい気管挿管のキホンとエビデンス
髙橋 仁 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 救急外来部門
3. 麻酔科医不在時に挿管困難に直面したら?:デバイスを用いたトラブルシューティング
菅谷 明彦・舩越 拓 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 救急外来部門
4. 挿管も換気も困難な症例に直面したら?:最終手段としての輪状甲状間膜アプローチ
木庭 茂 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門
片岡 惇 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
ライン確保
5. 中心静脈カテーテル総論:できるだけ入れず,入れるなら必ず安全に留置し手順を守って管理する
中山 泉 沖縄県立中部病院 集中治療部
6. 超音波ガイド下血管穿刺のピットフォール:立体的な血管走行を正確に把握するための近道
松島 久雄 獨協医科大学埼玉医療センター 救命救急センター・救急医療科
7. 内頸静脈と大腿静脈への留置方法:手技の実際からトラブルシューティングまで
杉木 大輔 獨協医科大学埼玉医療センター 救命救急センター・救急医療科
8. 鎖骨下静脈穿刺の達人になろう:習熟するうえで欠かせない勘所とは?
江本 賢・吉野 俊平 飯塚病院 総合診療科
9. 意外と難しいPICC:CVCとは異なるポイントやコツをつかむ!
柏木 克仁 東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センター(感染症科)
佐々木 陽典 東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センター(内科)
10. 緊急時ライン確保:外頸静脈路,骨髄路確保の手順と秘訣を中心に
糟谷 智史・坂本 壮 国保旭中央病院 救命救急科
11. 末梢静脈路確保:特別器用でない人が,より高率に,より安全なルート確保・管理をするための戦略
森 寛行 兵庫県立丹波医療センター 内科
12. 動脈穿刺と動脈ライン確保:重症患者,周術期患者の管理における必須の手技
平瀬 優三 国立循環器病研究センター 心臓血管内科/沖縄県立八重山病院 内科
井澤 純一
胸腹腔穿刺・ドレナージ
13. ①胸腔穿刺(診断):漏出性と滲出性を区別し,鑑別を想起して検査項目を選択する
樋口 直史・八重樫 牧人 亀田総合病院 総合内科
13. ②胸腔ドレナージ(治療):手技の実際と気胸の治療,合併症の対応
津山 頌章 亀田総合病院 感染症科
八重樫 牧人
14. ①腹腔穿刺(診断):注意すべき症例と腹水検査からの鑑別を整理しておく
山田 篤史・佐々木 陽典 東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センター(内科)
14. ②腹腔ドレナージ(治療):エコーガイド下で行い,アルブミンで予後の悪化を予防する
山田 篤史・佐々木 陽典
腰椎・関節・骨髄穿刺
15. 失敗しない腰椎穿刺:正しい体位を維持し,針が常に正中を通ることを心掛ける
小森 大輝 順天堂大学医学部 総合診療科学講座
山田 徹 東京医科歯科大学医学部附属病院 総合診療科
16. ホスピタリストが行う関節穿刺:見て学び,「素振り」に慣れて実際の診療に臨みたい
六反田 諒 亀田総合病院 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
17. 困ったときの骨髄穿刺と骨髄生検:適応と手技を理解すれば,困難症例に対する有効な切り札となる
安部 涼平 国家公務員共済組合連合会 立川病院 内科
[ミニコラム②] 僻地離島で役立った骨髄穿刺と骨髄生検:「地域における医療の限界」を担う立場から
中島 知・井澤 純一 沖縄県立八重山病院 内科
その他ホスピタリストに求められ得る手技
[コラム①] 皮膚生検:皮膚科医の視点からみた皮膚生検の判断基準
江原 瑞枝 東京ベイ・浦安市川医療センター 皮膚科
[コラム②] 心囊ドレナージ:専門外でも「もしも」に備えておきたい
伊志嶺 徹 沖縄県立中部病院 心臓血管外科
[コラム③] 胃管留置:合わせ技で挿入位置もしっかり確認し,合併症を回避せよ
酒井 達也 沖縄県立八重山病院 総合診療科
井澤 純一
[コラム④] 尿道カテーテル留置:不要な留置を避けたうえで,留置後は日々,抜去可能か検討する
酒井 達也
井澤 純一
【連載】
根拠のない習慣
第5回|神経学的異常所見のない失神に対して頭部CT検査は必要か?
中島 悠貴 独立行政法人国立病院機構 埼玉病院 消化器内科
Clinician Update
官澤 洋平・石丸 直人 愛仁会明石医療センター 総合内科