NeuroICUブック

これからのICUのスタンダード、初の日本語版

定評あるneurointensive care領域の包括的テキスト、待望の翻訳。症例を交えた解説で、日常臨床に直結する知識が得られる。ICUケア実践に際して、脳神経系も含む全身の管理・機能予後を前提にする考え方と知識の重要度が増してきている中で、、集中治療に必要な全身管理だけでなく神経学までを1冊にまとめた本書は貴重。ベストセラー「ICUブック」との併読でさらに理解が深まる。これから集中治療を学ぶ初学者から、中堅・ベテラン医まで最適。



書評「2022.05.23 週刊医学界新聞(通常号):第3470号掲載_(評者)西山和利先生



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¥13,200 税込
監修:黒田泰弘(香川大学医学部救急災害医学 教授/香川大学医学部附属病院救命救急センター センター長)・永山正雄(国際医療福祉大学大学院医学研究科・医学部脳神経内科学 教授/国際医療福祉大学熱海病院脳神経内科 教授,脳卒中・神経センター センター長) 監訳:横堀將司(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 教授/日本医科大学付属病院高度救命救急センター センター長)・江川悟史(医療法人社団武蔵野会 TMGあさか医療センター 神経集中治療部 部長,集中治療部 部長/脳神経外科・脳卒中てんかんセンター)
ISBN
978-4-8157-3010-9
判型/ページ数/図・写真
A5変 頁1184 図524
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Section 1 集中治療で診る脳神経疾患
1 くも膜下出血
2 脳内出血
3 てんかん重積状態
4 神経外傷
5 急性虚血性脳卒中
6 神経筋疾患
7 発作性交感神経活動亢進
8 中枢神経系感染症
9 脳腫瘍のICU管理
10 中枢神経系炎症性脱髄疾患
11 心停止と無酸素性脳傷害
12 劇症肝不全
13 脳症と譫妄

Section 2 ニューロモニタリング
14 頭蓋内圧上昇への対応
15 ICUでの持続脳波モニタリング
16 マルチモダリティ(ニューロ)モニタリング
17 高度な血行動態モニタリング
18 手術室およびICUにおける誘発電位
19 神経生理学的意思決定支援システム
20 鎮静
21 発熱と体温の管理

Section 3 脳神経系の外科的手術
22 脳室ドレナージの管理と脳室腹腔シャント
23 血管内外科治療,神経放射線学
24 脳動脈瘤,動静脈奇形,バイパス術
25 頸動脈内膜剥離術と頭蓋外-頭蓋内バイパス術
26 開頭術後の合併症管理
27 脊椎外傷
28 小児脳神経外科

Section 4 外傷と手術
29胸部外傷および心臓胸部集中治療室での管理
30 腹部外傷
31 外傷性血管損傷
32 腹部救急
33 泌尿生殖器の緊急疾患
34 集中治療の超音波検査

Section 5 循環器疾患
35 急性冠症候群
36 重症患者における不整脈
37 急性非代償性心不全
38 心原性ショックと大動脈内バルーンパンピング
39 終末期における呼吸・循環補助装置の扱い方
40 成人の呼吸循環不全におけるECMOの役割

Section 6 呼吸器疾患
41 NeuroICUにおける気道管理
42 人工呼吸
43 急性呼吸促迫症候群
44 深部静脈血栓症,肺塞栓症
45 経皮的気管切開術
46 NeuroICUにおける気管支鏡検査

Section 7 腎疾患と電解質異常
47 急性腎障害
48 腎代替療法
49 水分の恒常性の障害:低ナトリウム血症と高ナトリウム血症
50 NeuroICUにおける血圧管理

Section 8 血液疾患
51 播種性血管内凝固症候群
52 出血性疾患と凝固異常の拮抗
Section 9 感染症
53 敗血症と敗血症性ショック
54 ICUにおける抗菌薬治療
55 カテーテル関連血流感染症
56 ICUで一般的な感染症

Section 10 栄養と内分泌
57 栄養および代謝サポート
58 重症患者における内分泌疾患

Section 11 倫理と人生の終末段階における課題
59 脳死と臓器提供

本書の監修者でかつ執筆者のKiwon Lee教授は, ひとことでいうととにかくエネルギッシュ。関西人かと思うくらい役者でしゃべりまくり, 聴衆を全く飽きささない,いつも人だかりができる人気抜群の講演(質疑で爆笑シーンも多い)をされる先生です。海外で聴く講演では珍しいタイプと思いますし, 私はこのKiwon styleが何か馴染んでいます (私が関西の西 端の姫路生まれだからでしょう)。2021年2月に私が学会長を拝命した第48回日本集中治療医学会学術集会でもweb上でライブ講演をいただきました。そんなKiwonの人柄をふまえつつ本書の目次を見てもらうと, 神経学に限らず集中治療医学の全般にわたって, それぞれの領域の世界的リーダーである著名な先生方が集まって詳細に記述されていることがわかります。すなわち, 編集にあたりKiwonが卓越した指導力・調整力を発揮したこと, そして初版の発刊(2012年)から短期間で第2版(2018年)をだしていることからも, その気合いの入りようが伝わります。早く第2版の訳本(本書)をださないと原書第3版が出てしまうよと今でも心配しています。 本書が誰をターゲットにしているのかは, Kiwon自身の挨拶文(「はじめに」)を読んでください。米国のneurointensivistは脳神経内科出身の先生が多いと聞いております。つまり, 神経学の基本を学んだ人が集中治療医学を研鑽しているということです。それを念頭におくと, 本書の章立てが神経学を中心にしながら, 集中治療医学全般をdeepに記述している理由に納得いただけると思います。 一方, 米国以外では欧州にしても日本にしてもオーストラリアにしても neurointensivistの制度はありません。日本では, neurointensive careに興味がある場合はまず集中治療全般を勉強すると思いますが, 集中治療医になるのは麻酔科医, 救急医がほとんどで脳神経外科医や脳神経内科医からはまだ少ない。すなわち, 神経学をちゃんと勉強した集中治療医は少ないということです。私も救急科, 麻酔科, 集中治療の道をすすみ, 大学院のテーマが脳であったことを端緒に今はneurointensive careをしていますが, 神経学は学んでいません。その意味では日本の読者, 特に集中治療医は,本書の神経系の項を重点的に勉強し, すべての項目を等しく学ぶ必要はないかもしれません。ただ, Kiwon Lee教授の熱い講演を想像しながら,「脳神経内科の先生にとっても“neurointensive care”と言うからにはこれだけdeepな知識が必要なんだ」と思って読んで下さればと思います。 各章では,冒頭にとてもリアルな症例が提示され, 時間経過とともに変化していきます。本文はその症例の変化に対する質疑と回答から構成されています。読み進めるうち, 読者はまるでNeuroICUをラウンドしているように感じるはずです。各質問に対する回答は詳細に記載されていているので, 一気に読むのは難しいかもしれません。でも,これをものにするとneurointensive careに関する基本的な知識がカバーされるのでご安心下さい。 最後に,ご多忙の中,翻訳・監訳をしていただいた多くの先生方に感謝いたします。横堀將司先生, 江川悟史先生にはご多忙の中, 監訳もお引き受けいただき, 厚く御礼申し上げます。そして, 本書は日本の集中治療医と脳神経内科医のタッグをさらに強化する意味で, 以前から大変お世話になっている永山正雄先生にもご監修いただきましたこと, 改めて深く感謝申し上げます。 本書は日本の脳神経集中治療の発展に貢献するものと確信しております。
2021年9月
黒田泰弘 香川大学医学部救急災害医学 香川大学医学部附属病院 救命救急センター


Mayo Clinic,Mayo医科大学神経学のEelco F. M. Wijdicks教授主催のNeuroICUおよび救急部門を私が初めて訪れたのは1998年春であった。この米国を代表する施設に直に接して感じたことは, Critical Care Neurologyの米国神経学における台頭と, われわれの従来の臨床スタイルとの類似性であった。わが国ではその名前さえも知られていなかったこの領域を, わが国に適したスタイルで導入, 体系化する必要性を強く認識し, 帰国後に日本脳卒中学会シンポジウム「Stroke Care UnitとNeuro-ICUの 対比検討―いまどちらを選ぶべきかを開催(2000年,永山正雄・篠原 幸人), 本邦初のテキスト『神経救急・集中治療ハンドブック― Critical Care Neurology』(医学書院, 2006年)を出版, 本邦初のNeuroICUを設置・運営した(旧横浜市立脳血管医療センター, 2007年)。 この頃, 米国ではCritical Care Neurologyが神経学のsubspecialtyとして 確立され, 主要大学・病院に急速にNeuroICUが設置され,Neurocritical Care Societyが創設(2002年)された。その後, とくに米国神経学界では Critical Care Neurologyをsubspecialtyに選ぶものが最も多く, 優れた教材も相次いで出版された。その一つが本書であり, 2017年(平成29年)9月, 国立京都国際会館で開催された第23回世界神経学会(WCN2017)の折に, 編者のKiwon Lee先生やほかの先生方から日本語版作成を依頼された。当初, 翻訳という作業の意義と仕事量からすぐには着手せず, むしろ台頭著しいこの領域におけるわが国のプレゼンスを高めるためにも,日本の読者には原書を読み, 英語に触れて欲しいと考えていた。しかし本書の評判 が高まったこともあり, ともにこの領域を推進してきた黒田泰弘教授にご相談し最終的に今回の出版に至った。 監修にあたり改めて熟読して気付いたことは, 本書は主に米国の第一人 者の先生方により的確に記載されていること, そして非常に多数の先生方にご活用いただいた『神経救急・集中治療ハンドブック― Critical Care Neurology』との構成の類似性であった。欧米におけるNeuroICUおよび Neurocritical Care Societyの運営は, 脳神経内科医が中心となり関連各科, 多職種が連携して, すべての重症神経疾患, 潜在的に重症化しうる神経疾患,神経学的合併症を有する患者さんに高度の救急・集中治療が行われている。このことは単に機器を扱えること,処置・手技ができることだけでは不十分であり, 脳神経内科医, 脳神経外科医, 内科医としての十分な研鑽と, 救急医, 集中治療医としての研鑽の両者の融合が, 難治性の脳神経疾患・病態患者の管理, 重症化予防を行うために必須であることを歴 史が物語っているといえよう。 ご多忙の中, 編集作業を担当戴いた横堀將司先生,江川悟史先生, 翻訳を担当し監修者からの多くの指摘に対応していただいたこれからの Neurocritical Careを担う先生方, 株式会社メディカル・サイエンス・イ ンターナショナル(MEDSi)編集部各位に深く感謝申し上げるとともに, 本書がわが国のCritical Care Neurology, 神経救急・集中治療医学と医 療の質の向上, 国際的プレゼンスの向上に大きく資することを願って監修の序としたい。なお,本書についてご意見・ご感想などあれば nagay001@iuhw.ac.jp までお寄せいただければ幸いである。
2021年 9月
永山 正雄 国際医療福祉大学大学院医学研究科・医学部脳神経内科学 国際医療福祉大学熱海病院脳神経内科,脳卒中・神経センター

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