わからないから面白い!議論があるからこそ楽しい!
リウマチ膠原病のみかた・考え方をワクワクしながら学ぼう
ジェネラリストと気鋭の膠原病専門家の熱い対談を通して、診療の本質に迫りつつ、非専門家向けのプラクティスを提示する。症状や検査、コモンな疾患、ステロイドの使い方について、つまづきやすい部分や現場でよくある悩ましいテーマ、議論のあるトピックも収載。対話の合間に臨床知識や手技のポイントをまとめ、知識の整理や振り返りにも役立つ。膠原病領域に苦手意識をもつ初期研修医・内科系専攻医から一般内科医におすすめ。
第1章 総論
1-1 膠原病全体の捉え方・整理の仕方
1-2 膠原病が難しいと感じるワケ
1-3 診断基準ではなく,分類基準であるワケ
第2章 症状
2-1 不明熱からのアプローチ
2-2 関節炎からのアプローチ
2-3 多臓器からのアプローチ
第3章 検査
3-1 炎症をみる検査:CRP,赤沈,フェリチン,血小板
3-2 膠原病疾患に迫る検査:抗核抗体,ANCA
第4章 コモンな疾患
4-1 痛風・高尿酸血症
4-2 ピロリン酸カルシウム結晶沈着症(通称CPPD)
4-3 変形性関節症(OA)
4-4 リウマチ性多発筋痛症(PMR)
4-5 関節リウマチ(RA)
第5章 ステロイドの使い方
5-1 ステロイド治療の原則
5-2 具体的な減らし方
5-3 ステロイドの副作用
はじめに:リウマチ語を会得してもらうために
総合内科医として今まで多くの若手医師の教育に携わってきました。膠原病に関連したことを教えていると,若手医師が「膠原病の考え方=リウマチ語」の基礎を会得していないため,私が伝えたい概念と,彼ら彼女らの理解に距離を感じることがあります。
その距離を縮めるための膠原病の考え方を,わかりやすく教育することができれば,疾患とは,診断とは,そして治療とは何か,という内科学の根幹をなす概念の理解につながり,内科医の彼らに一段上の景色を見せてあげられると感じています。そこで卒後3年目の内科医をターゲットに,彼らの視点に立って,彼らがつまずくポイントに絞って,熱をもった情報を届けたいと考えました。
予防医学者の石川善樹先生が,著書『問い続ける力』の中で,人は「では派」と「とは派」に分かれると書いています。では派とは,「ガイドラインでは」「UpToDateでは」「最新の論文では」「◯◯先生の話では」というように,他人の考えやデータを誇らしく語る人。とは派とは,それを踏まえたうえで,「~とは何か」を自分の頭で考え語る人,新たな概念をクリエイトできる人。
私は「とは派」の人間が大好きです。UpToDateの情報を客観的データと意見とをきっちり読み分け,根拠となる文献を批判的に吟味し,『ハリソン内科学』などの成書で病態生理を押さえ,日々患者から真摯に学ぶ。日々の疑問を“why”から,“how”の形式のクリニカルクエスチョンに置き換えて,疑問を解消するために包括的な学習を継続して行う。これは,まさにAI時代で求められる4C(Critical thinking,Creativity,Collaboration,Communication)のCritical thinking,Creativityそのものです。
今回,萩野先生と「対談」という形式をとったのは,萩野先生の底なしの知識を引き出し,読者の皆さんに披露するとともに,白黒引けずあいまいなことの多いこの分野における「グレー」の本質や,コントラバーシャルな物事の背景を感じてもらえるのではないか,と思ったからです。
「膠原病を学ぶのは,外国語を学ぶようなものである」と萩野先生に言われたことがあります。膠原病とは何か,診断とは何か,治療とは何か,リウマチ性多発筋痛症とは何かという基本的な問いに対して,萩野先生という「とは派」の論客との議論を通じて,ワクワク・ドキドキ・ハラハラの連続の中から,新たな言語「リウマチ語」をマスターするヒントを見つけていただきたいと思います。
竹之内 盛志
このたび,竹之内先生との対談形式で,リウマチ膠原病の「門前書(入門書の一歩手前)」をお届けできる機会を得られて嬉しく思います。
帝京大学ちば総合医療センターのリウマチ科は歴史も浅く,萩野が赴任してからの約10年間が蓄積のすべてです。それでもその間,多くの若手医師と一緒にたくさんの患者さんと向き合ってきました。同センターを卒業した若手医師は,やがて中堅医師として,ある者は基礎免疫の探求へと向かい,ある者は「帝京ちば流リウマチ診療」の妥当性を自ら確かめる旅に出かけ,さながら蒲たんぽぽ公英の綿帽子が飛び散るように,同センターを踏み台として日本各地に散っていきました。
竹之内先生は日本の中心部・愛知県の一宮西病院で,まさしく地域に求められる形のリウマチ膠原病診療を始めたばかりです。彼や,彼のように日本のあちこちでリウマチ膠原病診療に向き合う先生方へのエールを届けるような気持ちで対談しました。
本書を踏み台として,リウマチ膠原病診療に入門される若手医師が1人でも増えることを祈念しています。
萩野 昇
2022-05-06
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
55ページの表1「関節液の細胞数と分画」:左列の真ん中
(誤)感染性関節炎
(正)乾癬性関節炎
2022-01-28
【正誤表】下記の箇所に誤り・追記等がございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
ixページ:「3-2 膠原病疾患に迫る検査:抗核抗体,ANCA」より4行目
(誤)ANCAは,今はELISAでいきなり測っちゃっていい
(正)ANCAは,今はELISA(EIA)でいきなり測っちゃっていい
3ページ:上から6行目
(誤)膠原病のミニマムエッセンスとして「自己免疫疾患」という要素があると思うのですが,
(正)膠原病のミニマムエッセンスとして「自己免疫疾患あるいは自己炎症性疾患」という要素があると思うのですが,
4ページの図1「症候を軸とした膠原病の分布」:右側中央の「❷関節炎メイン:」の次行
(誤)関節リウマチ,脊椎関節炎,PMR,結晶性関節炎
(正)関節リウマチ,脊椎関節炎,PMR,結晶性関節炎,SLE
5ページの図2「臓器病変の起こり方:リウマチ性疾患における呼吸器病変の場合」:左側の図中文字
(誤)肺胞腔内炎症
(正)肺胞腔内の炎症
8ページ:上から11行目
(誤)ほぼすべての自己免疫疾患に効く副作用の多いステロイドを,
(正)ほぼすべての自己炎症性疾患・自己免疫疾患に効く副作用の多いステロイドを,
30ページ:上から6行目
(誤)単純CTは情報量が少ないですからね。
(正)腹部単純CTは情報量が少ないですからね。
39ページの図2「肘関節の可動域(ROM)」:図中文字
(誤)ぴたっと真っすぐ伸びなければ,何らかの異常がある!
(正)正常なら真っすぐ伸びて さらに5°伸展する
47ページの図4「多関節炎・多関節痛の捉え方」:図説明文の「注:」の末尾
(誤)…STDである〕。
(正)…STDである〕。なお,急性少(2~3)関節炎の鑑別診断は以下のとおり:播種性淋菌感染症,脊椎関節炎(反応性関節炎など),レフグレン症候群,IgA血管炎,ベーチェット病,多関節炎の初期
54ページのBOX4「滑膜生検で診断がつくもの」:上から2行目
(誤)(ライム病,梅毒),ホイップル病,クラミジア,関節内異物
(正)(ライム病,梅毒),ホイップル病,クラミジア
54ページのBOX4「滑膜生検で診断がつくもの」:上から3行目
(誤)その他:サルコイドーシス,結晶性関節炎,腫瘍など
(正)その他:サルコイドーシス,結晶性関節炎,腫瘍,関節内異物など
70ページ:本文の上から6行目
(誤)腎炎は腎機能障害,尿蛋白に尿潜血を認めたら疑いますので,
(正)腎炎は腎機能障害,尿蛋白に尿潜血*16を認めたら疑いますので,
70ページ:側注(追記後,以降の注釈番号は1つずつ増える)
(追記)*16 目視で変形赤血球(通常>10%が有意)や赤血球円柱を確認し,あれば糸球体性血尿を疑う。
78ページのBOX2「CK上昇・筋炎のアプローチ方法」:上から1行目
(誤)CK上昇をみたら,激しい運動,薬剤性(スタチンなど),
(正)CK上昇をみたら,激しい運動,薬剤性(スタチン,フィブラートなど),
82ページ:上から7行目
(誤)手指の“teardrop sign”が有名ですね。下肢では大腿でも足節の屈曲が障害され,
(正)手指の“teardrop sign”*44が有名ですね。下肢では大腿に加え足節の屈曲も障害されることがあり,
82ページ:側注(追記後,以降の注釈番号は2つずつ増える)
(追記)*44 深指屈筋の障害によりつまむ力が弱くなり,母指と示指で正円が作れなくなるサイン。
84ページの図7「2つのリペド」:図説明文の上から4行目
(誤)血管炎などよりも重症度が高いことを示唆する。
(正)血管炎などによる細動脈の閉塞を疑い,より重症度が高いことを示唆する。
92ページ:本文の上から1行目
(誤)いわゆる「炎症反応」といわれるCRP
(正)いわゆる「炎症反応」としてよくみるCRP
94ページ:下から7行目
(誤)反映しにくい傾向があります。
(正)反映しにくい傾向があります*3。
94ページ:側注(追記後,以降の注釈番号は1つずつ増える)
(追記)*3 2021年11月25日,SLEの治療薬としてⅠ型IFN受容体抗体であるアニフロルマブが発売された。
103ページのPOINT:下から3行目
(誤)間接蛍光抗体法からELISA法のANCAになって偽陽性は減った
(正)間接蛍光抗体法からELISA法(EIA)のANCAになって偽陽性は減った
109ページ:見出し
(誤)ANCAは,今はELISAでいきなり測っちゃっていい
(正)ANCAは,今はELISA(EIA*12)でいきなり測っちゃっていい
109ページ:側注(追記後,以降の注釈番号は1つずつ増える)
(追記)*12 enzyme immunoassay(酵素免疫測定法)。以前はELISAが多用されていたが,近年はCLEIA(chemiluminescent immunoassay)やFEIA(fluorescence enzyme immunoassay)が主体になっている。慣習的にELISAと呼ぶことも多い。
109ページ:下から9行目
(誤)今はELISA*14法で
(正)今はELISA法で
109ページ:側注(削除後,以降の注釈番号は変わらず)
(削除)*14 enzyme linked immunosorbent assay
109~112ページ
(誤)ELISA
(正)EIA
(誤)ELISA法
(正)EIA
110ページ:上から7行目
(誤)またはELISA法で低値陽性の場合は,間接蛍光抗体法を行うことが勧められています。
(正)またはEIAで低値陽性の場合は,その他のEIAで測定することが勧められています。
136ページ:側注*4の4行目
(誤)もやはCPPDではなく,
(正)もはやCPPDではなく,
138ページ:下から5行目
(誤)高齢者にくる急性単-少関節炎(1~4関節程度)
(正)高齢者にくる急性単-少関節炎(1~3関節程度)
142ページ:下から12行目
(誤)ただ,よくいわれる三角靭帯,
(正)ただ,よくいわれる三角線維軟骨複合体,
160ページ:側注*18の1行目
(誤)勝呂 徹(かつろ・とおる)
(正)勝呂 徹(すぐろ・とおる)
2021-12-16
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
40ページのBOX1「自動時と他動時の可動時痛を比べて,関節炎か関節外かを見極める!」:下から2行目
(誤)対して,関節外であれば自動時よりも他動時に,痛みもROM 制限もより強い傾向にある。
(正)対して,関節外であれば他動時よりも自動時に,痛みもROM制限もより強い傾向にある。
143ページ:上から10行目
(誤)エコーは手首の三角靭帯,膝や足首など当てるだけなので,
(正)エコーは手首の三角線維軟骨複合体,膝や足首など当てるだけなので,