明日からの臨床に役立てる「動機づけ面接」のテクニックを紹介します!
外来診療で役立つカウンセリング技法「動機づけ面接」の実践入門書。外来で出会うアルコール依存症等「やめたいけれど,やめたくない」両価性をもつ患者の根本的問題を改善するためのテクニックを多数収載。動機づけ面接のスキル「OARS」について、禁煙指導の猛者である著者のわかりやすく読みやすい解説で、実践的技法のエッセンスを学べる。とりわけ「是認」や「聞き返し」について著者ならではの解説は必見。総合診療医、産業医をはじめ幅広く有用。
はじめに
第 1 章 動機づけ面接との出会い
第 2 章 心理学の基礎知識
2-1 心理学は科学なのか
2-2 ヤーキーズ・ドットソンの法則―過度な危機感はやる気をなくす
2-3 心のなかの綱引き―アンビバレントとは
2-4 変えてあげようという感情―間違い指摘反射とは
2-5 行動を変える人が受けてきた面接とは
2-6 広がる動機づけ面接の適用
第 3 章 動機づけ面接の骨格:PACE
3-1 動機づけ面接のスピリッツとは
3-2 P:パートナーシップ(協働)
3-3 A:アクセプタンス(受容)
3-4 C:コンパッション
3-5 E:エボケーション(喚起)
第 4 章 動機づけ面接のスキル:OARS
4-1 プロセス:EFEP とは
4-2 O:開かれた質問
4-3 A:是認
4-4 R:聞き返し(基礎編)
4-5 R:聞き返し(応用編)
4-6 S:サマライズ
第 5 章 EPE手法と面接評価
5-1 EPEという手法
5-2 面接を評価する
第 6 章 終わりに:学びの場のススメ
索引
Column
●ワクチン接種①:ブツブツ出たけど,困ってはいない
●ワクチン接種②:ブツブツ出たけど,2 回目を打ちたい
●返事をすると怒られる!?
●残業を減らしたくない長時間労働者
仲間を集めて練習しよう
1:アンビバレンス編
2:行動変容編
3:「福祉の向上」と「来談者の希望」の差を探る編
4:アンビバレンスおさらい編
5:閉じた質問を開く編
6:非言語的コミュニケーション編
7:聞き返し編(ステップ1,伝え返して反応をみる)
8:聞き返し編(ステップ2,語尾を下げる)
9:聞き返し編(ステップ3,情報を加味した聞き返し)
10:チェンジトークには弱めに聞き返す編
11:カウンセラーの行動カウント編
本書は,喫煙者やアルコール依存者をはじめとした行動を変えられない(やめたいけれど,やめたくない)患者に効果的といわれる動機づけ面接(motivationalinterviewing:MI)についてまとめています。
私が講師を務めるセミナーの流れをもとに,書籍として読めることを意識しながらまとめたものですから,ある程度テンポよく読み流せることを意識しています。
そのため,冒頭の第2 章こそ心理学の科学性に言及しているものの,全体を通じて多くのエビデンスを示したり,開発背景を紹介しきれたりはしていません。教科書のたった1 行の記載の裏に,膨大な数の論文があるように,それらを紹介し尽くそうと思ったら,とてもではありませんが1 冊の本にまとめることはできないでしょう。
また,動機づけ面接に限らず,面接法は実技ですから,理論を学ぶだけでうまくできるようにはなりません。それは,水泳の教科書を読んで,畳の上で練習をしても,うまく泳げるようにならないのと同じです。そこで,実際のセミナーでは,演習に時間をかけるわけですが,書籍のうえではそういうわけにもいきません。期待を込めて本書を手にしていただいた皆さんには大変申し訳ないのですが,「読めば動機づけ面接ができる」というわけにはいかないのです。技法の習得には実技が必要となってきます。
そこで,本書では,第3 章で解説している面接の骨格となるスピリッツをもとに,第4 章では面接の技術となるスキルを重点的にまとめています。また随所に「仲間を集めて練習しよう」というエクササイズを挿入してあります。そこには練習するうえでのポイントも書いていますので,ぜひ「声に出して」練習をしてみてください。もちろん,本来であれば,それの演習を通じて,うまくいったこと,うまくいかなかったことを確認し,上級者を交えてフィードバックをし,さらなる上達を目指していくのが望ましいのですが,とりあえずやってみて,お互いの感想をシェアするだけでも全くやらないよりはいいかもしれません。本書が,皆さんの日常や診療に少しでもお役に立つことを願い,はじめの言葉とさせていただきたいと思います。
2021 年11 月
清水 隆裕