特集:不整脈1 上室性不整脈
「専門医におまかせ」となっていませんか?
我々総合内科医には,循環器疾患に対する苦手意識があります。多くの都市部の大病院では,内科は専門科の縦割りであり,総合内科研修中ですら,循環器疾患の診療に接する機会が少ないという印象があります。特に不整脈に関しては,第一に心電図に対し苦手意識をもち,「不整脈は循環器専門医におまかせ」となりがちではないでしょうか。例えば心房細動患者は日本に80万人いるともいわれ,今後も増えると予想されます。循環器専門医の助けを適宜借りながら,どのように心房細動診療にあたっていくかが重要です。
総合内科医も以下のようなパターンでは的確な対応が求められてきます。
・ 循環器専門医により治療され,安定化した不整脈患者を引き受けたとき
・ ERに不整脈緊急症でやってきたとき
・ ICDやペースメーカ関連感染症の治療にあたるとき
・ ペースメーカ患者のペーシング不全を疑い,コンサルトが必要になるとき
・ 心房細動アブレーション,あるいはペースメーカ留置直後に,病棟で院内迅速対応システムでの対応を迫られたとき
・ 退院後,救急外来や一般外来で合併症をみるとき
・ 感染症,周術期などで心房細動などの不整脈が出たとき
本特集は,これらのパターンに対応できるよう,本格的に学びたい非専門医のために入門から応用までをカバーした内容となっております。さまざまなトピックスがあるため,まず今回の「不整脈1」では主に上室性不整脈を,次回の「不整脈2」では心室性不整脈,徐脈性不整脈を扱います。
はじめに|不整脈診療における総合内科医の役割:「専門医におまかせ」となっていませんか?
平岡 栄治 東京ベイ・浦安市川医療センター 総合内科
Editorial 1|不整脈の基礎と心房細動について
平岡 栄治
1. 心房細動総論:管理の考え方,併存疾患とのかかわりを中心に
鈴木 信也・山下 武志 財団法人 心臓血管研究所
[コラム①] 総合内科医に求められる心房細動治療の包括的マネジメント:なぜ今,多職種介入によるアプローチが求められているのか?
津島 隆太 University Hospitals Harrington Heart & Vascular Institute, Case Western Reserve University School of Medicine
西原 崇創
2. 心房細動治療①:洞調律維持 vs. 心拍数コントロール:議論の本質はどこにあるか?
山下 武志
[コラム②] 心房細動:アブレーションに関して知っておくべきこと:総合内科医が遭遇し得る術後の合併症
林 健太郎 上尾中央総合病院 循環器内科
[ミニコラム①] 抗不整脈薬で慢性維持治療中,抗不整脈薬の中止はいつ考慮するか?:有効性と安全性の2つの側面から考えよう
小田倉 弘典 土橋内科医院
[ミニコラム②] 心房細動合併の慢性心不全患者は全例アブレーションをすべきか?:まずは“No!”だが,その検証は“Half way up the hill”
甲谷 太郎・永井 利幸 北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学教室
[コラム③] 心房細動における除細動:その心房細動,今止めますか? 抗凝固療法はどうしますか?
小島 俊輔 東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科
3. 心房細動治療②:抗凝固療法:血栓形成の病態生理,リスク評価,ワルファリン/DOACの使い方
加藤 武史 金沢大学附属病院 循環器内科
[コラム④] 高齢者の抗凝固療法の注意点:重要な大出血の頻度や意義,多様化する価値観,そして低用量の議論
山下 武志
[コラム⑤] Subclinical AFは塞栓症のリスクになるか?:診断とリスク評価,その過去と未来
妹尾 恵太郎 京都府立医科大学 不整脈先進医療学講座
[ミニコラム③] 弁膜症性心房細動における抗凝固療法:「弁膜症性」と「非弁膜症性」とを分ける意義はあるか
平岡 栄治
[コラム⑥] 心房細動患者に対する経カテーテル左心耳閉鎖術:術後の抗血栓薬は完全に不要となるのか?
猪原 拓 慶應義塾大学医学部 循環器内科
[ミニコラム④] 心房細動を有する血液透析患者の抗凝固療法はどうすればよいか?:実施か見送りか,その判断基準や根拠
北村 浩一 東京ベイ・浦安市川医療センター 腎臓・内分泌・糖尿病内科
Ediorial 2|抗不整脈薬,不整脈モニター,ならびにその他の上室性不整脈について
平岡 栄治
4. 抗不整脈薬総論:不整脈を知り,抗不整脈薬を知る
志賀 剛 東京慈恵会医科大学 臨床薬理学講座
[コラム⑦] さまざまな不整脈モニターとウェアラブルデバイス:種類と適応,注目されるスマートデバイス
野村 章洋 金沢大学附属病院 先端医療開発センター 循環器内科/一般社団法人CureApp Institute
5. 心房粗動:通常型心房細動と非通常型心房細動に分けて考える
山下 賢之介・杉村 和宣 仙台厚生病院 循環器内科
[ミニコラム⑤] ⅠC,ⅠA群薬による心房粗動:Na+チャネル遮断で何が起きているか
山下 賢之介・杉村 和宣
[コラム⑧] 心房頻拍:atrial tachycardiaとは:「ややこしい」頻拍への現実的対処法
杉山 裕章 JCHO星ヶ丘医療センター 臨床検査科・循環器内科
6. 頻脈性不整脈:narrow QRS tachycardiaをみたら:心電図の鑑別ポイントとその対処法
髙橋 尚彦 大分大学医学部 循環器内科・臨床検査診断学講座
7. 発作性上室頻拍:房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT):房室結節内の2つの伝導路を頻拍回路とする不整脈
松永 泰治 大阪労災病院 循環器内科
8. Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群:最も頻度の高い副伝導路,Kent束に起因する
高麗 謙吾 小倉記念病院 循環器内科
[ミニコラム⑥] 無症候性WPW症候群を見つけたら全例不整脈専門医に紹介すべきか?:治療するリスクと治療しないリスクを整理しておく
高麗 謙吾
【連載】
着眼大局のススメ
第4回|パンデミック時代の医療システム
西村 義人 岡山大学病院 総合内科・総合診療科
Clinician Update
官澤 洋平・石丸 直人 愛仁会明石医療センター総合内科