現場目線ですぐに役立つ
日本の医療安全対策の普及に努めてきた「医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ“」の知見の集大成。事例分析や再発防止策、チームSTEPPS、患者参加を促すための取り組みなど、医療安全に関するあらゆる事項を網羅。過去の事例を踏まえた現場目線での医療安全対策やフローチャートなど現場ですぐに役立つ知識を収載。医療安全管理者をはじめ医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士等、医療従事者必読の一冊。
献辞
ご挨拶 ―『患者安全・医療安全 実践ハンドブック』刊行に当たって
「医療安全全国共同行動“いのちをまもるパートナーズ”」とは
執筆者一覧
総論 「患者安全」の新時代を拓く“いのちをまもるパートナーズ”の挑戦
行動目標1 危険薬の誤投与防止
行動目標2 肺塞栓症の予防
行動目標3a 危険手技の安全な実施:経鼻栄養チューブ挿入時の位置確認の徹底と管理
行動目標3b 危険手技の安全な実施:中心静脈カテーテル留置・管理に関する安全指針の遵守
行動目標4 医療関連感染症の防止
行動目標5a 医療機器の安全な操作と管理:輸液ポンプ・シリンジポンプの安全管理
行動目標5b 医療機器の安全な操作と管理:人工呼吸器の安全管理
行動目標6 急変時の迅速対応
行動目標7 事例要因分析から改善へ
行動目標8 患者・市民の医療参加
行動目標9 転倒・転落による傷害の防止
行動目標S 安全な手術―WHO指針の実践
行動目標W1 医療従事者を健康被害からまもる:抗がん剤曝露のない職場環境を実現する
行動目標W2 医療従事者を健康被害からまもる:医療従事者を医療関連感染症からまもる
チームSTEPPS 安全文化を醸成するチームとしての協働:エビデンスにもとづいた「チーム医療 2.0」のすゝめ(チームSTEPPS)
索引
付録 技術支援部会委員一覧
ご挨拶─『患者安全・医療安全 実践ハンドブック』刊行に当たって
このたび,「医療安全全国共同行動」企画委員会および技術支援部会各位の熱意により,新版『患者安全・医療安全 実践ハンドブック』の刊行が実現しました。装丁も一新し,医療の安全管理における最新の動向を反映した画期的な手引書として,自信を持ってお届けします。
本書の原型は,2015年に刊行された『医療安全 実践ハンドブック』ですが,「医療安全全国共同行動」の「行動目標」ごとに推奨対策を記述する構成は踏襲したものの,内容は,新たに就任していただいた技術支援部会のメンバーも含めて,その後に追加された「行動目標9」(転倒・転落による傷害の防止)など,大部分の項で新たに書き下ろしていただきました。執筆の労を取っていただいた技術支援部会メンバーの皆様に深謝します。
今回の本書制作に当たって特に留意したのは,以下の4点です。
(1)現場の医療安全管理者や第一線の医療従事者(医師・歯科医師・看護師・薬剤師・臨床工学技士など)にとって,その場で役立つ実践的な内容とする。
(2)“いのちをまもるパートナーズ”の標語を活かし,多職種の連携と協働(職種横断的アプローチ)に加えて,患者・家族・市民(地域社会)との協働を目指す内容とする。
(3)医療コミュニケーションを重視し,組織の中でチームコンセプトや安全文化を醸成するのに有効なさまざまな手法を紹介する。
(4)安全な医療を実現するには患者の積極的な役割が重要であることを力説し,医療の有効性とともに,そのリスクについても,医療の受け手側を啓発する内容を積極的に取り入れる。
折しも,本書の編集作業が大詰めにさしかかっていた2022年3月24日,髙久史麿前議長の訃報に接し,一同,深い悲しみに包まれました。医療界のトップリーダーとして,「医療安全全国共同行動」の設立をはじめ,安全な医療を実現するための制度改革・システムづくりに尽力して来られた先生の存在の大きさを改めて実感するとともに,毅然とした指導者でありながら若輩の意見にも耳を傾けられてきた優しいお人柄に接することが叶わなくなったと思うと淋しい限りです。
安心・安全な医療は,医療を受ける側にとっても医療を提供する側にとっても切なる願いです。その一方で,人のいのちに直結する診療行為が大きな危険と紙一重であることは医療に携わる誰もが常に肝に銘じておかねばなりません。医療の現場がシステムとしての安全性を確立するには,まだまだ道遠しの感がありますが,本書が,患者さん本位の安心・安全な医療を目指して日夜,努力されている現場スタッフの方々に座右の書として活用され,ケアの現場が少しでも安全になることを願って止みません。
一般社団法人 医療安全全国共同行動
議長 小泉 俊三