小児急性期診療の現場で頼れるシリーズ、第6弾
小児の救命救急・ICU領域における標準的な治療、最新の知見・エビデンスに基づく治療の選択肢を提示するシリーズ第6弾。内科治療の最後の砦として小児重症患者管理にはなくてはならないが、実臨床で学ぶ機会が少ない当該分野の基本から管理のコツ、ホットなトピックスまで幅広く収載。臨床経験が豊富な各筆者の経験を踏まえた教科書にはない知識を提供する。小児科医、集中治療医をはじめ、血液浄化に関わる医療従事者にも役立つ。
総論
① PICUにおける血液浄化
② 治療モードの原理と選択
コラム 個人用透析装置を用いたワンストップ型CHDF法
③ 血液浄化装置・回路・膜の特徴と選択
コラム TR55X-IIの特徴について
コラム TR-2020の良い点と困る点
コラム ACH-Σの良い点と困る点
④ バスキュラーアクセスの選択・留置・管理
⑤ プライミングと導入
⑥ 抗血栓薬とモニタリング
コラム 日本でクエン酸の出番はあるのか? クエン酸の良い点と困る点
⑦ 血液浄化中の実際の管理
コラム 血液浄化中のリハビリテーション治療
コラム 血液浄化療法施行時のカリウム製剤の選択について
コラム 血液浄化は中止できるか?
⑧ PICUにおける臨床工学技士のかかわり
⑨ PICUにおける看護師のかかわり
⑩ 成人施設からみた小児に対する急性血液浄化療法
各論
① 急性腎障害
② 急性肝不全に対する非移植施設における血液浄化について
コラム 私はこうしている(肝移植施設)
③ 先天代謝異常症(早期から実施する施設)
コラム 私はこうしている(慎重に実施する施設)
④ 小児急性血液浄化:敗血症
コラム 私はこうしている “More is more”と“Less is more”の狭間
⑤ ECMO施行中の血液浄化(CRRT組み込み)
コラム 私はこうしている(ダイアライザー組み込み)
⑥ 血漿交換
コラム 遠心式血漿交換(テルモBCT)
PICUで血液浄化が必要になる患者は多くはないですが,それを必要とする患者は重篤で,最善の治療を必要としています。血液浄化は実臨床で学ぶ機会が少ないため,『Rogers’ Textbook of Pediatric Intensive Care』や『小児急性血液浄化療法ハンドブック』などの教科書で学ぶことになりますが,教科書と実際の診療現場での対応が異なることも少なくありません。実際に国内16施設のPICUで実施したアンケート調査では(本書の各章で結果を供覧いただきました),院内マニュアルの有無・血液浄化モードやダイアライザーの選択・急性腎障害に対する適応/導入時の条件などに関して,施設によってさまざまな対応がされていることがわかりました。これらはどれが正しく間違っているではなく,施設の特徴やこれまでの経験の結晶だと考えられます。頻度は低いものの重篤な患者に最善の血液浄化を提供するには,各施設での経験の集合知が役立つと私は信じております。
本書の総論では,集中治療医だけでなく,小児腎臓内科医,臨床工学技士,理学療法士,薬剤師,看護師の,多職種の皆さんのお力をお借りして,血液浄化にかかる大事な基本を深く学んでいただくことを考えました。血液浄化装置のコラムでは,その装置に精通した臨床工学技士と使用経験が豊富な集中治療医がコラボレーションして,大胆にも比較評価していただきました。各論では,国内を代表する小児集中治療施設の専門家に,実際の症例をもとにした実際のプラクティスを共有していただきました。pro-conを意識した構成とすることで,日本のPICUでの血液浄化の現状をなるべく偏らないようにお伝えできたように思います。
本書では,一定の客観性を保ちエビデンスを供覧しつつも,PICUでの血液浄化に関する臨床経験が豊富な専門家の経験から来る感覚・工夫を共有していただきました。教科書では学べない,小児血液浄化の専門家の想いが詰まった作品,専門家が議論を通して創造した「PICUでの実臨床に生かせるマニアック血液浄化!」,読者の皆様に楽しんでいただき,日々の臨床に少しでもお役に立てれば,これ以上の喜びはありません。
2022年10月
井手 健太郎
国立成育医療研究センター 集中治療科
小児透析・血液浄化センター