特集:ARDSの今を語り尽くす
2024年は,初めての急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の国際的な定義「AECC定義」が発表されてから30年の節目を迎えます。AECC定義が発表されて以降,ARDSを対象とした臨床研究が多く行われ,大きな発展を遂げてきました。この30年の臨床研究で示されたのは,ARDSそのものを根本的に改善させる治療法は原疾患の治療以外になく,人工呼吸器管理そのものが肺を傷害する人工呼吸器関連肺傷害の予防が生命予後改善に寄与する,ということです。
一方で生理学的な観点からは,生命予後の改善に寄与すると考えられる介入は複数あるものの,ランダム化比較試験で有効性が明確には示されていないか,確かめられていない状況です。また,COVID-19パンデミックを通じて重症呼吸不全に対するネーザルハイフローを主とした非侵襲的呼吸療法が広く一般化し,COVID-19肺炎に対するステロイドおよび免疫調整薬の予後改善効果が示されたことで,ARDS全体においても特定の薬物治療が有効なフェノタイプを同定する試みが加速しています。
本特集は,エビデンスやガイドラインと実臨床の溝をどのように埋めながら臨床を行っているかが読者に伝わるような構成としました。“Evidence”の羅列だけではなく,豊富な“Experience”を存分に語り尽くします。
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1.巻頭言:コロナ禍を乗り越えた今こそ,ARDSを語り合おう
片岡 惇 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
2.新しいARDSの定義と今後の展望:我々はDr. Ashbaughの呪縛から解放されるのか?
則末 泰博 東京ベイ・浦安市川医療センター 救急集中治療科 集中治療部門/呼吸器内科
3.ARDSのフェノタイプとprecision medicine:COVID-19パンデミックを経た薬物治療の未来
片岡 惇
4.急性低酸素性呼吸不全に対する非侵襲的呼吸補助:蓄積してきたエビデンスと実際
櫻谷 正明 JA広島総合病院 救急・集中治療科
岡野 弘 聖路加国際病院 集中治療科
5.肺保護換気のこれまでとこれから:生理学的背景と1回換気量/プラトー圧,適切な指標とは何か?
中島 幹男 東京都立広尾病院 救命救急センター
【コラム】メカニカルパワーとは?:Dr. Gattinoniのメッセージを読み解く
川村 篤 大阪母子医療センター 集中治療科
6.ARDSにおける適切なPEEPとは? ARDS=high PEEPは真か?:経験的なPEEP設定と経肺圧に基づく設定との整合性をはかる積み重ねが重要
高橋 慶彦 前橋赤十字病院 集中治療科・救急科
加茂 徹郎 東京都立墨東病院 集中治療科
7.リクルータビリティとリクルートメント手技:呼吸生理学的解釈と臨床実践のエッセンス
中山 龍一・文屋 尚史 札幌医科大学医学部 救急医学講座
後藤 祐也 札幌医科大学医学部 集中治療医学
【コラム】EITによるPEEP設定法:PEEP設定の実際と解釈上の注意点
吉岡 晃佑・片岡 惇 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
8.危険な自発呼吸とは何か:安全な自発呼吸を温存するための方法
星野 太希・吉田 健史 大阪大学大学院医学系研究科 生体統御医学講座 麻酔・集中治療医学教室
【コラム】横隔膜機能不全と横隔膜保護換気:自発呼吸を意識した人工呼吸器管理と横隔膜エコー検査の実際
木庭 茂 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
9.腹臥位療法中の管理を語り尽くす:生理学的背景とエビデンス,実臨床におけるポイント
對東 俊介 広島大学病院 診療支援部 リハビリテーション部門
志馬 伸朗 広島大学大学院 医系科学研究科 救急集中治療医学
10.「ARDSの“今”を語り尽くす」アンケート結果:日常の管理に関する回答者の本音とエキスパートの戦略
中島 幹男
11.座談会:ARDSの今を語り尽くす
片岡 惇(司会)
則末 泰博
中島 幹男
竹内 宗之 国立循環器病研究センター 集中治療部
連載
■え?知らないの?手術支援ロボットの使い方
〈シリーズ構成:上岡 晃一 東京医科大学病院 臨床工学部〉
山田 二三歩 横浜市立大学附属病院 MEセンター
■集中治療に関する最新厳選20論文
田邊 翔太 松江赤十字病院 救急部
吉田 英樹 聖マリアンナ医科大学 救急医学