心臓麻酔の経験知、本っ気で伝えます
エキスパートのノウハウを学べるMS(麻酔に差がつく)ブックスシリーズの第2弾。心臓麻酔の基本的な流れから標準的な術中管理方法、そして困難症例まで、段階を踏んで理解できる5Stepで構成。エビデンスにもとづく麻酔の理論と著者の経験にもとづく臨床のコツを交えた明瞭な解説は統一感があり読み進めやすい。心臓麻酔デビューを終え、さらに踏み込みたい麻酔科医必読の書。「じんべえ先生」の呼び名の由来となったコラムも収載。
Step1 心臓麻酔の「型」を覚える
1-1 心臓手術の流れ
1-2 術前評価と麻酔計画
1-3 麻酔準備
1-4 患者入室から血管穿刺
1-5 麻酔導入
1-6 手術開始から体外循環開始
1-7 体外循環中
1-8 大動脈遮断解除から体外循環離脱
1-9 プロタミン投与からデカニュレーション
1-10 閉胸から申し送り
Step2 モニター・機器を使いこなす
2-1 人工心肺と循環補助装置
2-2 循環モニター
2-3 経食道心エコー(TEE)
2-4 血液凝固モニター
2-5 脳脊髄モニター
Step3 基礎知識を固める
3-1 心臓麻酔のキモ
3-2 循環器の解剖と発生
3-3 循環生理
3-4 血液凝固の生理
Step4 病態に合わせた麻酔管理を行う
4-1 冠動脈疾患
4-2 大動脈弁狭窄症
4-3 大動脈弁閉鎖不全症
4-4 僧帽弁狭窄症
4-5 僧帽弁逆流症
4-6 三尖弁逆流症
4-7 胸部大動脈瘤
4-8 腹部大動脈瘤に対する開腹手術
4-9 ステントグラフト内挿術
4-10 成人先天性心疾患
Step5 問題症例・緊急事態に対応する
5-1 術前問題点への対応
5-2 トラブルシューティング
5-3 ハイリスク手術の麻酔管理
5-4 危機的状況の管理
5-5 緊急手術の麻酔
コラム じんべえ先生,心臓のかたちを語る
エピソード1 心臓は左右対称!?
エピソード2 研究室の門を叩く
エピソード3 サメに麻酔とCT
エピソード4 心臓はどうして今のかたちになったのか?
索引
本書に興味をもっていただき誠にありがとうございます。
本書は私が普段研修医の方々に行っている指導内容を明文化したものです。主に麻酔科専攻医から心臓血管麻酔をサブスペシャリティにしようと勉強を始めた方に向けています。
本書は心臓麻酔を5つのStep(パート)に分けました。各Step扉に「到達目標」を,各章の冒頭にcheck point を設けています。日々の臨床研修における目標設定・自学自習の目安としてお役立てください。
Step 1では基本的な心臓手術の麻酔管理の流れについて解説しています。心臓麻酔を始めて間もない方はまず本パートで全容を把握してください。Step 2では人工心肺・循環補助装置,心臓麻酔で用いられるモニター,経食道心エコー(TEE)について解説しています。知っておくと差がつく知識を盛り込みました。Step 3では解剖と発生,循環生理,血液凝固の生理など心臓手術の麻酔管理をする際に根幹となる重要な理論を学ぶことができます。Step 4では標準的な心臓手術の麻酔管理について解説しています。各症例を担当する際に参照してください。Step 5では困難な症例やトラブルへの対応法について解説しています。いざという時に役に立つ知識を詰め込みました。
本文中で特に重要な点は「ここがポイント」,重要かどうかはさておき私が実際の指導で頻繁に口にするフレーズを「ひとこといいですか?」と銘打って強調しています。
Step 2以降の終わりには「コラム:じんべえ先生,心臓のかたちを語る」を収載しました。これは雑誌『LiSA』2022 年2 月号に掲載された「快人快説:心臓の比較解剖学:サメと心臓と私」を一部改訂したものです。「じんべえ先生ってどういうこと?」と思われた方はこちらをお読みください。
私は1995(平成7)年に大学卒業後,麻酔科医としてキャリアを積むことを選択しました。TEE をはじめとするモニター機器が十分に普及していなかった当時,心臓麻酔はできれば避けて通りたい分野でした。しかし,先達の教え,テクノロジーの進歩,新設された日本心臓血管麻酔学会での学びを通じて心臓麻酔の指導を生業とするまでになりました。時代と環境に恵まれたと感じます。これまで辛抱強くご指導いただいた先生方に心より御礼申し上げます。なかでもプロフェッションとして進むべき道を示してくださった野坂 修一 先生(滋賀医科大学麻酔学教室 前教授),心臓血管麻酔専門医としての修練の場を与えてくださいました野村 実 先生(東京女子医科大学麻酔科学教室 名誉教授)にこの場をお借りして御礼申し上げます。
本書制作にあたり企画・編集に多大なご尽力をいただいたメディカル・サイエンス・インターナショナル編集部の高木 健太 様・江田 幸子 様,原稿のレビュアーとして有意義なコメントをくださいました塩 久 先生(鳥取赤十字病院 麻酔科)・武石 健太 先生(聖路加国際病院 麻酔科),装丁してくださった臼井 弘志 様,イラストを作成してくださった榛澤 典子 様,日本グラフィックス社スタッフの皆様に御礼申し上げます。
最後になりましたが,済生会宇都宮病院 麻酔科をはじめ,これまでにご一緒した多くの先生にも御礼申し上げます。本書が将来の心臓血管麻酔を担う皆様の一助になれば幸甚です。
2024年5月
済生会宇都宮病院 麻酔科
“じんべえ先生”こと
平﨑 裕二