遺伝医学・ゲノム医学 はじめに読む本

  • 未刊

2024年7月末発売予定!



見開きで完結、これなら読める!



臨床の幅広い分野で「遺伝子」を扱う場面が増え、治療可能な遺伝性疾患も増えてきているが、苦手意識がある・時間も作れない、という初学者にとって遺伝医学・ゲノム医学の全体像を知る「きっかけ」となる書。取り上げるテーマは全90、それぞれ見開き2ページで完結し、左頁に本文、右頁に図表を配置。コンパクトなボリュームで通読しやすく、知りたい項目から気軽に読み進めることもできる。遺伝学の解説に力点を置きすぎることなく、実際の臨床場面での関心が高い、遺伝性疾患、検査、遺伝医療・ゲノム医療、医療制度についての記述が充実。

¥2,970 税込
渡邉淳 金沢大学附属病院 遺伝診療部 / 遺伝医療支援センター
ISBN
978-4-8157-3111-3
判型/ページ数/図・写真
A5 頁224 図113
刊行年月
2024年7月
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第1章 遺伝子・ゲノムの変化で起こる病気─遺伝性疾患
1 遺伝性疾患① 遺伝性疾患とは? 
2 遺伝性疾患② ライフステージと遺伝性疾患 
3 遺伝性疾患③ 出生前─流産,不育症 
4 遺伝性疾患④ 先天性疾患 
5 遺伝性疾患⑤ 小児期から成人期 
6 遺伝性疾患⑥ 難病 
7 染色体疾患① 染色体量(コピー数) 
8 染色体疾患② 数的異常 
9 染色体疾患③ 数的異常の発生メカニズム 
10 染色体疾患④ 構造異常─均衡型と不均衡型 
11 染色体疾患⑤ 転座 
12 染色体疾患⑥ 構造異常の子への影響 
13 表現型 
14 モザイクとキメラ 
15 遺伝型と接合性─ホモ・へテロ,シス・トランス 
16 メンデルの法則① 顕性の法則 
17 メンデルの法則② 分離の法則と独立の法則 
18 単一遺伝子疾患① 遺伝形式 
19 単一遺伝子疾患② へテロ接合体─保因者・未発症者 
20 単一遺伝子疾患③ 検討する際に考慮されること 
21 単一遺伝子疾患④ 常染色体顕性遺伝 
22 単一遺伝子疾患⑤ 浸透率・新生変異 
23 単一遺伝子疾患⑥ 表現促進 
24 単一遺伝子疾患⑦ 常染色体潜性遺伝 
25 単一遺伝子疾患⑧ 片親性ダイソミー 
26 単一遺伝子疾患⑨ 性染色体が関わる遺伝様式─ X 連鎖遺伝,Y 連鎖遺伝
27 単一遺伝子疾患⑩ X 連鎖潜性遺伝 
28 がん① がんと遺伝子 
29 がん② それぞれのがん関連遺伝子 
30 がん③ 遺伝性腫瘍(1) 
31 がん④ 遺伝性腫瘍(2) 
32 ミトコンドリア① ミトコンドリア病
33 ミトコンドリア② ミトコンドリア遺伝病 
34 エピジェネティクス① エピジェネティクスとは? 
35 エピジェネティクス② インプリンティング疾患 
36 多因子疾患 

第2章 遺伝子・ゲノムを用いて解析(検査)する─遺伝子関連検査・染色体検査
37 遺伝子関連検査・染色体検査① 検査の種類 
38 遺伝子関連検査・染色体検査② 医療における位置づけ,保険適用の拡大 
39 遺伝子関連検査・染色体検査③ 妥当性と有用性 
40 検査の能力① 感度・特異度 
41 検査の能力② 適中率 
42 ゲノムの変化が起こる時期─生殖細胞系列と体細胞 
43 個人遺伝情報の扱い 
44 遺伝子関連検査の手法① 塩基配列決定 
45 遺伝子関連検査の手法② 次世代シークエンサー(NGS) 
46 染色体検査の手法① 分染法 
47 染色体検査の手法② FISH とマイクロアレイ染色体検査 
48 バリアント① ゲノムの変化とバリアント 
49 バリアント② タンパク質への影響 
50 バリアント③ 疾患との関わり 
51 バリアント④ アレル頻度とVAF 
52 ハーディ・ワインベルグの法則 
53 DNA 損傷・修復 
54 遺伝学的検査と体細胞遺伝子検査 
55 遺伝学的検査① 確定診断 
56 遺伝学的検査② 非発症保因者診断 
57 遺伝学的検査③ 発症前診断 
58 遺伝学的検査④ 出生前診断 
59 遺伝学的検査⑤ 着床前診断 
60 遺伝学的検査⑥ 疾患感受性検査 
61 体細胞遺伝子検査─単一遺伝子の検査から網羅的解析へ 
62 消費者直結型(DTC)遺伝子検査 
第3章 遺伝子・ゲノムを医療に活用する─遺伝医療・ゲノム医療
63 遺伝医療・ゲノム医療の歴史─研究から医療へ 
64 遺伝カウンセリング 
65 臨床遺伝専門職 
66 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」
2022 
67 遺伝性疾患の支援─医療費支援制度,社会福祉制度 
68 患者・家族会,患者支援団体 
69 遺伝性疾患の治療① 概論 
70 遺伝性疾患の治療② 遺伝子治療 
71 遺伝性疾患の治療③ タンパク質補充療法 
72 遺伝性疾患の治療④ 新生児マススクリーニング 
73 遺伝性疾患の治療⑤ 分子標的薬 
74 遺伝性疾患の治療⑥ 治療効果の個人差─薬理遺伝学 
75 遺伝性の評価① 血縁者の関係─近親度 
76 遺伝性の評価② 家族歴,家系図 
77 遺伝性の評価③ 再発率(リスク) 
78 心理的影響 
79 ELSI(倫理的・法的・社会的課題) 
80 遺伝差別 
81 ヒトの遺伝リテラシーと教育 
付録 読み解くための知識─遺伝子,染色体,ゲノム,細胞
82 ゲノム① ゲノムとDNA 
83 ゲノム② 染色体 
84 ゲノム③ 染色体の構造と分類 
85 細胞分裂① 体細胞分裂と減数分裂 
86 細胞分裂② 体細胞分裂 
87 細胞分裂③ 減数分裂,組換え 
88 遺伝子の発現① セントラルドグマ 
89 遺伝子の発現② タンパク質 
90 遺伝子の発現③ 遺伝暗号─塩基配列とアミノ酸の対応関係 
日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」2022 全文 
ゲノム医療法 条文 
索引

この数年,医療において遺伝子検査(この本では遺伝子関連検査・染色体検査)の受検を提案される機会が増え,ゲノムを調べることは一般化しつつあります。ときに検査の対象者は,治療方針の選択の目的で受検するため,家族歴もないのに,突然「遺伝の可能性」に直面することになる方もおられます。20年前には保険適用となっている遺伝子検査はなかったことから,この間に成人前教育にも「ヒトの遺伝」が取り上げられることはありませんでした。したがって患者・家族だけでなく医療者も,検査時には遺伝や遺伝子検査にも準備ができておらず,対応に困ってしまうこともあります。

 昨今,遺伝医学・ゲノム医学に関連する書籍が数多く出版されるようになりました。しかしながら,翻訳書であるため日本の現状については記載・整理されていない,あるいは内容が充実しすぎていてどこから読めばよいかわからない,全体を読むには時間と労力が必要となることが多い印象もあります。最近は,医療者養成課程にも遺伝医学・ゲノム医学の内容が入ってきましたが,現場で実務についている医療者の多くは現状を知りません。説明をする医療者も,遺伝医学・ゲノム医学の全体像を一度は知っておくことが重要と考え,その「きっかけ」となればとの思いから,書名を『遺伝医学・ゲノム医学 はじめに読む本』として執筆しました。

 本書の特徴として,遺伝医学・ゲノム医学の全体像がわかるようないくつかの工夫をしています。90の単元を遺伝性疾患,検査,遺伝医療・ゲノム医療の3章(+生物学の基礎)に分けています。1つの単元を見開きで完結するようにして,左ページに本文,右ページに関連する図・表を配置しています。また,関連する単元は参照できるように欄外に示しました。関心がある単元から読み始めて,関連するほかの項目も参照することで全体を鳥瞰できるようにもなります。初学者にとっても,遺伝医学・ゲノム医学の専門家にとっても,改めて遺伝医学・ゲノム医学を整理・活用する機会になると期待しています。

 また,原典を学ぶことが重要と考えております。本書の巻末には,2022年に改訂された日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」本文,2023年に施行されたゲノム医療法全文を掲載いたしました。本文を読むと同時に,これらの原典を照らし合わせることで遺伝医学・ゲノム医学の現状を振り返り,見直す機会にもなります。

 本書は,あくまでも遺伝医学・ゲノム医学の全体像を整理していただくことを目的にしています。それぞれの項目に関心を持ち詳しく知りたい際には,『トンプソン&トンプソン遺伝医学 第2版』,『新 遺伝医学やさしい系統講義19講』,『ヒトの分子遺伝学 第5版』といった成書を紐解いてください。

 本書企画の最初のメールは2020年1月でしたので,開始から4年半が経ってしまいました。メディカル・サイエンス・インターナショナル(MEDSi)の星山大介様には,本書の執筆の機会をいただき,また辛抱強く見守り,またさまざまなご支援をいただきました。この1年は,毎月第1金曜日にMEDSi本社に伺い,遅筆な私に叱咤激励をいただいた日々を懐かしくも感じております。改めて感謝の意を表する次第です。今回,本書におきましては,遺伝医学・ゲノム医学の日本における中心におられる札幌医科大学医学部遺伝医学(日本遺伝カウンセリング学会理事長)の櫻井晃洋先生,横浜市立大学大学院医学研究科遺伝学(日本人類遺伝学会理事長)の松本直通先生にご推薦文をいただきました。私自身も長年遺伝関連学会での活動等においてもヒトの遺伝リテラシー向上への取り組みを行っており,日頃よりご指導いただいている先生にご推薦文を頂戴しましたことはとても幸甚の至りです。

 今回,本書にお目通しいただきありがとうございます。私にとって遺伝に関する単著は,本書が2冊目になります。前回は2017年に上梓しましたが,改訂ができないまま時間が経ってしまいました。単著にこだわる理由の一つとして,著者が多いと各項目の関連がうまく繋がらないことが気になったためです。一方で,単著ならではの内容の不十分さ,不適切さもあるかと存じます。さらに,今後も遺伝医学・ゲノム医学は日々進展していきます。ぜひ皆さんが読まれてみて,ご質問や不足している内容,整理するために適切な図・表がありましたらご提案をいただけますと幸いです。本書も,さらに読者の皆様にも育てていただき,定期的に見直しもして長く読まれる書籍になるとありがたいです。今後ともよろしくお願いいたします。

2024年7月  渡邉 淳

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