ペコリーノがんの分子生物学 第4版 - メカニズム・分子標的・治療 -

これなら最後まで読める! わかりやすさに定評あるロングセラー、大幅改訂

がんのメカニズムを分子・遺伝子レベルで解き明かし、分子標的治療など臨床に関連づけてわかりやすく懇切丁寧に解説した世界的に定評ある入門書、7年ぶりの改訂。全章にわたりきめ細やかに内容をアップデート。基礎知識と最新知見をバランスよくコンパクトに収載し、とくに近年研究の進展著しい代謝に関する項目を大幅に加筆、更新。読者を飽きさせないコラムもさらに充実。がんの基礎を学ぶ初学者の1冊目として、またがんプロフェッショナル養成プログラムの教科書、がん治療認定医試験の対策書や分子病理専門医の基盤知識の習得にも最適。

¥5,720 税込
原著タイトル
Molecular Biology of Cancer, Fifth Edition :Mechanisms, Targets, and Therapeutics
訳:日合 弘(京都大学名誉教授)・木南 凌(新潟大学名誉教授)
ISBN
978-4-8157-3113-7
判型/ページ数/図・写真
B5変 頁472 図143 写真5
刊行年月
2024年8月
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第1 章 がんの分子生物学への入門
1.1  がんとは何か?
1.2  がんは細胞レベルでのゲノムの異常として発生する
1.3  全身病としてのがん
1.4  ヒトの発がんに影響する因子
1.5  がん治療法の原理
1.6  臨床試験
1.7  がん治療における分子標的の役割
第2 章 がんのゲノム:変異と修復
2.1  遺伝子の構造:調節領域とアミノ酸コード領域
2.2  変異
2.3  発がん物質
2.4  DNA 修復とがん素因
◎治療戦略
2.5  従来の治療法:化学療法と放射線治療
2.6  エストロゲンを標的とする薬
2.7  薬剤耐性と不均一な細胞感受性
2.8  DNA 修復系の標的治療戦略
第3 章 遺伝子発現の調節
3.1  転写因子と転写の調節
3.2  クロマチンの構造
3.3  転写のエピジェネティックな調節
3.4  発がんにおけるエピジェネティクスの役割に関する科学的証拠
3.5  長鎖非コードRNA
3.6  マイクロRNA とmRNA 発現の調節
3.7  テロメアとテロメラーゼ
◎治療戦略
3.8  エピゲノムとヒストンに作用する薬
3.9  診断に利用される非コードRNA
3.10  大腸がんスクリーニングのためのDNA メチル化マーカー
3.11  テロメラーゼ阻害薬
第4 章 増殖因子のシグナル伝達とがん遺伝子
4.1  上皮細胞増殖因子シグナル伝達:重要なパラダイム
4.2  がん遺伝子
◎治療戦略
4.3  薬物標的としてのキナーゼ
第5 章 細胞周期
5.1  細胞周期の概要
5.2  細胞周期の概念
5.3  CDK 制御機構
5.4  細胞周期開始の調節
5.5  G2 期チェックポイント
5.6  有糸分裂(M 期)チェックポイント
5.7  細胞周期とがん
◎治療戦略
5.8  低分子のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬
5.9  その他の細胞周期キナーゼ標的
5.10  有糸分裂紡錘体の阻害薬
第6 章 がん抑制遺伝子
6.1  がん抑制遺伝子の定義
6.2  網膜芽細胞腫遺伝子
6.3  RB 経路の変異とがん
6.4  p53 経路
6.5  p53 経路の変異とがん
6.6  DNA ウイルス性タンパク質産物のRB やp53 との相互作用
◎治療戦略
6.7  p53 経路の標的化
第7 章 アポトーシス
7.1  アポトーシスの分子機構
7.2  アポトーシスとがん
7.3  アポトーシスと化学療法
◎治療戦略
7.4  アポトーシス誘導薬
第8 章  がん幹細胞,自己複製と分化の経路の制御:大腸がんと白血病に焦点をあてて
8.1  がん幹細胞
8.2  遺伝子発現による分化の制御
◎治療戦略
8.3  WNT 経路の阻害薬
8.4  ヘッジホッグ(HH)経路の阻害薬
8.5  ポリコーム群(PcG)タンパク質の阻害薬
8.6  白血病と分化誘導療法
第9 章 転移
9.1  腫瘍はどのように広がるか
9.2  転移のプロセス
9.3  浸潤と上皮‒間葉転換(EMT)
9.4  脈管内侵入
9.5  輸送
9.6  脈管外遊出
9.7  転移巣形成
◎治療戦略
9.8  メタロプロテアーゼ阻害薬(MPI)
9.9  転移抑制因子を回復させるための戦略
9.10  転移の複数の段階を一度に標的にする
第10 章 血管新生
10.1  血管新生スイッチ
10.2  血管新生発芽の機序
10.3  腫瘍血管新生の他の方法
◎治療戦略
10.4  抗血管新生療法
10.5  脈管破壊薬により脈管を標的にする
第11 章 代謝の再プログラミングと食事
11.1  がん細胞にみられる代謝の再プログラミング
11.2  代謝産物はエピジェネティックスを介して影響を及ぼす
11.3  食事に関するイントロダクション
11.4  原因因子
11.5  食事から得られる予防因子
11.6  遺伝的多型と食事
11.7  ビタミンD:栄養素,がん,ホルモン作用との関連
◎治療戦略
11.8  代謝経路を標的とした薬剤戦略
11.9  がんの化学的予防に向けた“強化”食品とサプリメント
11.10  NRF2:予防と治療の標的
第12 章 がん免疫と免疫療法
12.1  リンパ球:B 細胞とT 細胞
12.2  免疫系のがん抑制の役割
12.3  免疫チェックポイント
12.4  がんの免疫編集と腫瘍の促進
12.5  免疫による破壊を回避するメカニズム
◎治療戦略
12.6  治療用抗体
12.7  がんワクチン
12.8  免疫チェックポイント阻害薬
12.9  養子T 細胞移入,修飾T 細胞受容体,キメラ抗原受容体
12.10  腫瘍溶解性ウイルスとウイルス療法
12.11  自然免疫を標的とした戦略
第13 章 炎症,感染,微生物
13.1  炎症とがん
13.2  発がん物質としての感染性因子
◎予防と治療戦略
13.3  炎症の抑制
13.4  がん予防のためのワクチン接種
13.5  Helicobacter pylori の除菌と胃がん予防との関係
第14 章  研究と臨床応用に向けた戦略と技術(研究戦略と技術および臨床開発)
14.1  染色体外DNA を理解する過程で用いられた科学的手法
14.2  マイクロアレイと遺伝子発現プロファイル
14.3  診断と予後判定用のバイオマーカーの解析
14.4  CRISPR‒Cas9 を用いたゲノム編集
14.5  がんナノテクノロジー
14.6  イメージング
14.7  薬剤開発の戦略
14.8  改良された臨床試験のデザイン
14.9  精密医療と個別化医療
14.10  本当に進歩しているのだろうか
付録1:細胞周期の調節
用語解説
索引

本書“Molecular Biology of Cancer: Mechanisms, Targets, and Terapeutics”は,正常細胞がどのようにしてがん細胞へと変化するか,そしてその知識がどのように新たな診断や治療に適用されてきたのか,それらについて学びたい学生や大学院生(医学生を含む),そして製薬企業ではたらく人々に向けて書かれたものである。正常な細胞では,シグナル伝達経路は環境の変化を検出してこれに対応し,細胞活動を制御している。細胞は細胞膜上に多くの受容体をもち,増殖因子などの細胞外からのシグナルを細胞内に伝えている。シグナル伝達経路は,他の分子と相互作用する分子群から構成されていて,1 つの分子が次の分子の活性化をもたらすといった,リレー競争をするチーム内の選手のようにはたらいている。情報のリレーは細胞のふるまいや遺伝子発現の変化を引き起こし,細胞増殖などの細胞の応答をもたらす。このシグナル伝達経路が障害されると,制御なき細胞増殖といった重大な結果がもたらされ,正常細胞ががん細胞へ形質変化する原因となる。発がんにかかわる特定の経路の不具合を同定することは,新しいがん治療の創造に利用できる分子標的の提示につながる。本書では,がんの分子生物学を解説するにあたって,新しい抗がん剤のデザインへの応用を意識して内容を選び,記述してきた。したがって,この本の多くの章で,章の前半ではがんに特有の細胞や分子生物学について述べているが,後半では「治療戦略」について述べている。章の前半で述べた特定の分子標的と後半の治療戦略を関連づける一助として,標的の記号( )を頁の欄外に示した。各トピックを学ぶうえでの興味と意欲を刺激することを願って記した。
がん生物学は近年めざましい成長を続けており,この第5 版では新たな基礎となる概念の誕生を含めた変化がみられ,既存の概念を再強調している。新しいトピックには,がん遺伝子の発現と腫瘍の不均一性の主因である染色体外環状DNA や,RNA の転写とスプライシングにおけるエラーの利用,ワクチン用の新しいネオアンチゲンの新たな源としての利用,およびがんイメージングへの人工知能の応用を含んでいる。
章の名前を変更して題された第11 章の「代謝の再プログラミングと食事」では,このがんの特質が前面に出されている。「研究と臨床応用に向けた戦略と技術(研究戦略と技術および臨床開発)」の第14 章では,症例研究と実験手法を使用して研究のプロセスを説明している。最も心揺さぶるであろうトピックは,多くの章に新たに承認された治療法が数多く追加されていることだ。
 図表やイラストは学習手段として非常に有効な手段であり,「百聞は一見に如かず」である。Joseph Pecorino による巧みな図とともに楽しみながら学んでほしいと強く思う。「用語解説」の用語や新しいがん治療はゴシック体で示しており,分子標的を表すために標的の記号( )を使用している。図の詳しい説明は本文中で述べている。今回の版でもカラー表示を採用しており(訳注:翻訳版は2色。),主要な研究論文に示された実験データも含まれている。
 学習と興味をそそるために本書をとおして活用されているいくつかの特長を以下に述べる。

PAUSE AND THINK
 このコラムは本文の脇に掲載していることが多い。読者にさらなる考察をうながしたり,核となる概念について補足的に解説した。質問が設定されているものもあって,答えが与えられていることもあれば,本文を再読するようにうながすこともある。
どう発見されたの?
 科学文献に示された実験的な証拠を検証するコラム。読者に,データの分析や実験プロトコールの詳細について理解を求めている。

特別コラム
 興味がわくような特別なトピックに焦点をあてたコラムである。第2 章の「皮膚がん」がその例。また,本文にある解説や複雑なトピックについて補足説明するためのコラムもある。第2 章の「活性酸素種って?」,第4 章の「MAP キナーゼファミリーって?:MAP キナーゼキナーゼキナーゼ,MAP キナーゼキナーゼ,MAP キナーゼ」がその例。

生活アドバイス
 最新知識をもとに,がんのリスクを最小にするための生活習慣や,またその選択について解説している。

……研究の先駆者
 本書のコンセプトは,世界中の研究者から影響を受けている。本書のコンセプトをさらに広げたこのコラムでは,特定のトピックの先駆者であり,私たちがもつがん生物学の知識に影響を与えた科学者たちを数名とりあげた。本書に人間らしさを加味することを想定して執筆したが,もちろん,すべてを書ききれてはいない。専門家としての知識として活用できるよう,興味のあることをさらに文献で調べてみてもいいだろう。

……の研究法
 生物学的,細胞学的に解析する際に用いられる分子生物学的な技術について説明している。科学や医学の専門家にとって「どう発見されたの?」と絶えず自問するのは重要なことだ。現在の知識の基盤になっている主要な個々の概念は,細胞に関する有力な学説とメカニズムを示すデータを生んだ,沢山の実験のおかげである。得られる情報は解析に用いられる研究法によって異なってくるのである。

まとめ―記憶の整理
 重要な概念を整理し,その章を簡単にまとめるために,要点を一覧にした。試験に向けた復習に便利だろう。

テスト!・やってみよう
 本文で述べた特定の概念について理解を深めるために工夫した。「テスト!」ではたったいま述べた話題について補強することを求めており,多くは図に言及している。読書を少し休んで,自発的に学べるようにした。「やってみよう」は特定の概念についての理解を深め,自発的な学習をうながすことを狙って章末に設けた。ウェブ検索をうながすものもあるが,多くは考えることに重点を置いている。多肢選択式の設問は紹介してあるウェブサイトで見つけることができる。

注目しよう!
 ここでは,知識と研究の領域をより広く発展させるような最近のユニークな観察に注意を向けるよう意図してある。

参考文献など
 本書の概念が科学的文献に基づいていることを強調しておくことは重要である。各章の終わりにある「参考文献」には,一般的な文献の一覧をあげた。この文献の多くは総説で各章の内容に沿ったものである。ただし,本文中では引用していない。
 「さらに興味のある人へ」は本文中で引用された原著研究論文の一覧であり,さらなる興味を追求することができる。関連のあるウェブサイトも掲載した。
 「付録1」は,主要な分子経路と細胞周期の関連を示した図である。

用語解説
 学生が慣れない用語に出合ったとき,参考となるよう200 以上の項目について,明解かつ簡潔に定義した。
 
読者が,新しいことを学び,分子生物学に興味をもつようになり,そして最終的にはがん生物学の研究でなんらかの貢献をするようになってくれることが私の望みである。この分野の研究は驚くほどの速さで進展しており,本書の印刷が終わるころには情報をいくつか更新しなければならないかもしれないほどである。しかし,たいしたことではない,と思っている。私の狙いは科学の断片がどのように築き上げられ,その知識をどのようにがん治療に応用しようとしているかというプロセスを示すことにある。多くの新薬は失敗に終わるかもしれないが,成功するものもきっとあるだろう。そのごく少数の限られた成功こそが,多くの人々の生活の質を著しく改善することにつながるのだ。

今回の改訂ポイント
・原著研究情報の追加
・DNA 修復の仕組みを示す図表の追加・改良
・取り上げられた新しいトピックには,
 ・ がん遺伝子発現の主要な供給源としての環状染色体外DNA および腫瘍の不均一性
 ・ RNA の転写とスプライシングのエラーにより生じるワクチンに対する新たな因子ネオアンチゲン
 ・ がんイメージングへの人工知能の応用
 ・ CRISPR の用途の拡大
 などが例に挙げられる
・「……研究の先駆者」の数の拡大

2024-08-26

【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。

p.321 上から4行目
骨髄系共通前駆細胞→骨髄系共通前駆細胞

p.356 図13.3の図説(5行目)
HTLV-1:ヒトTリンパ球向性ウイルス1型→HTLV-1:ヒトT細胞白血病ウイルス1型

p.366 上から15行目
E2Fの隔離が防止され,→E2Fの隔離が解除され,

p.395 上から6行目
Raf→RAF

p.397 下から1行目
(p.373)→(p.372

p.423(索引) 右段下から1行目
HPV(ヒトパピローマウイルス)  12 → HPV(ヒトパピローマウイルス)  12,365

p.427(索引) 中段上から10行目
T細胞白血病ウイルス1型,――  366 → T細胞白血病ウイルス1型,ヒト――  366

p.431(索引) 左段下から2行目
子宮頸がんの予防  373 → 子宮頸がんの予防  372

p.433(索引) 左段上から15行目
予防的がんワクチン  373 → 予防的がんワクチン  372

p.438(索引) 右段下から14行目
がん――  333,373 → がん――  333,372

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