Ai(オートプシー・イメージング)の素朴な疑問に答えます!
死亡時画像診断(Ai:オートプシー・イメージング)を全4章の構成で網羅的に解説した実践書。第1章では「総論:読影に必要な基礎知識」として、死後変化、蘇生術後変化、死後画像の読影について解説。第2、3章は画像診断、病理学、法医学の専門家が50の症例を独自の視点から解説した「Ai症例集(内因死・外因死)」。第4章では「FAQ:Aiに関するよくある質問と答え」として、70の質問を収載。
第1章 総論:読影に必要な基礎知識
1 死後変化
1.1 死体現象
死後画像に反映される死後変化
1.2 血液就下
脳静脈洞
心大血管
肺
1.3 血液凝固・線溶現象
1.4 死後硬直
心,大動脈,肺動脈壁の高吸収化
1.5 画像に現れる他の心停止後変化
脳腫脹と皮髄境界不明瞭化
右心系拡大
気道内液体貯留
胸腔内液体貯留・胸水
皮下浮腫
BOX 心囊水・腹水は?
コラム❶ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「Aiは全国で年間どのくらい施行されていますか?」
1.6 腐敗
1.7 自家融解
2 蘇生術後変化
2.1 胸骨圧迫
肋骨骨折
血管/臓器内ガス
縦隔血腫/心囊内血腫
2.2 人工換気
消化管拡張・腸管壁内ガス
3 死後画像の読影
死後変化,蘇生術後変化を意識する
生前の病態を推定する
可能であれば死因を評価する
第2章 各論:Ai症例集―内因死
Case 1 中枢 解離性椎骨動脈瘤破裂によるクモ膜下出血
Case 2 中枢 小脳出血
Case 3 中枢 脳出血による脳ヘルニア
Case 4 中枢 低酸素性虚血性脳症,高吸収腹水
Case 5 喉咽頭 急性咽頭・喉頭炎
Case 6 肺 粟粒結核
BOX 結核のスクリーニングに死後CTを活用
Case 7 肺 肺炎
Case 8 肺 腺癌,気管支閉塞
Case 9 肺 胸腔内ドレーン脱落による緊張性気胸
BOX Aiや病理解剖で得られること
Case 10 循環器 大動脈解離による心タンポナーデ
Case 11 循環器 大動脈解離による心タンポナーデ
Case 12 循環器 心筋梗塞による心タンポナーデ
Case 13 循環器 心筋梗塞による心タンポナーデ
コラム❷ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「fused CT とは何ですか?」
Case 14 循環器 虚血性心疾患
BOX 虚血性心疾患の死後画像検査
Case 15 循環器 慢性心膜炎による心タンポナーデ
Case 16 循環器 肺動脈血栓塞栓症
Case 17 循環器 多発骨折後の肺動脈骨髄・脂肪塞栓
Case 18 肝臓 アルコール性肝硬変
Case 19 肝臓 生体肝移植後の真菌性腹膜炎・血管炎・肝不全
Case 20 膵臓 切除不能膵頭部癌・胃穿孔
Case 21 消化管 糞便性直腸閉塞
Case 22 消化管 鼡径ヘルニア嵌頓・肝ガス壊疽
Case 23 消化管 胃破裂
Case 24 腹腔内出血 肝腫瘍破裂による腹腔内出血
Case 25 腹腔内出血 十二指腸穿孔による腹腔内血腫
BOX 死後CT画像とマクロ解剖所見の整合性
BOX トポロジー(位相幾何学)とAi
Case 26 腹腔内出血 左胃動脈破裂
Case 27 腹腔内出血 正中弓状靱帯圧迫症候群による腹腔内出血
Case 28 腹膜 胃潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎
コラム❸ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「Ai読影はどのように行われていますか?~読影の時間,読影する医師・専門医がいない施設ではどうしているの?」
Case 29 腹膜 癌性腹膜炎・腐敗
BOX ガスの起源を考える
Case 30 腫瘍 乳癌皮膚浸潤
Case 31 腫瘍 多発性骨髄腫・膝軟部腫瘍アミロイドーマ
Case 32 腫瘍 卵巣境界悪性腫瘍術後・腹膜偽粘液腫
Case 33 小児 小児気管支肺炎
Case 34 小児 S状結腸壊死性腸炎
Case 35 小児 先天性横隔膜ヘルニア・両肺低形成
Case 36 標本MRI 胃癌髄膜播種症例の剖検脳MRI
BOX 剖検脳MRI撮影時の留意点
第3章 各論:Ai症例集―外因死
Case37 外傷 銃創
Case38 外傷 刺創
コラム❹ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「Ai読影のコツはありますか?」
Case39 外傷 胸部打撲による心膜血腫・大動脈断裂(交通外傷)
Case40 外傷 上大静脈症候群による運転中の意識障害に基づく交通事故
Case41 中枢 亜急性硬膜下血腫
Case42 中枢 外傷性クモ膜下出血
BOX 頭部コンベンショナルスキャン
Case43 脊髄損傷 頚椎過伸展による頚髄損傷
Case44 脊髄損傷 頚髄損傷
コラム❺ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「Aiを学ぶのにオススメの情報源があれば教えてください」
Case45 中毒 農薬(パラチオン)中毒(身元特定のためのCT)
Case46 窒息 餅による窒息
Case47 窒息 砂泥吸引による窒息
Case48 窒息 溺水
Case49 焼死 焼死
BOX 法医学用語解説
Case50 低体温症 低体温症
Case51 低体温症 胃潰瘍による上部消化管出血を伴う低体温症
第4章 FAQ:Aiに関するよくある質問と答え
1 Aiの基本事項
コラム❻ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「オートプシー・イメージング(Ai)の名前の由来は?」
コラム❼ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「Aiに関する法律はありますか?」
2 Aiと解剖との比較
コラム❽ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「Aiと解剖で所見が異なる確率はどれくらいですか?」
BOX 画像解剖病理相関
3 国内外の現状
4 Aiの種類(臨床Ai・法医Ai・病理Ai)
5 撮影・読影
コラム❾ 死亡時画像診断(Ai)の素朴な疑問に答えます!
「生体と遺体では撮影方法が異なりますか?」
6 その他(Aiの応用・教育ほか)
索引
編者らはベクトル・コア社からAi(オートプシー・イメージングAutopsyimaging)症例集の第1巻を2012年に,第2巻を2018年に出版しました。しかし,書籍は絶版となり,現在はメディフレックス社から電子版のみ配信されています。この間にも死亡時画像診断・Aiに関する知見は増加し,新しい書籍を出版する必要性を強く感じていました。
そんな折,2019年10月に愛知で開催された第55回日本医学放射線学会秋季臨床大会でメディカル・サイエンス・インターナショナル社の後藤様からAiに関する本の出版について相談されました。当初は,“Aiに関する素朴な疑問”として1年後に出版の予定でした。しかし,Ai学会を通じてAiに関する疑問を募集したところ,内容に重複が多く1冊の本として出版することは商業的に難しいことが判明しました。さらに,追い打ちをかけるように,2019年末に中国で発生した新型コロナウイルス感染症が瞬く間に,世界中に拡大しました。コロナ禍の初期には日常業務をこなすことで精一杯となり,出版の準備をする余裕はまったくありませんでした。コロナ禍も落ち着いたころ,内容を見直しAi症例を中心とする書籍として出版することとしました。
Ai所見は死因,死後変化,蘇生術後変化に大別されます。生体の画像診断と異なり,死後変化,蘇生術後変化の知識が必要となります。これらの知識がないと,蘇生術後変化として発生した血管内ガスを空気塞栓症と判断してしまうなど,所見を誤って解釈することになりかねません。第1章は「総論」として,死後変化,蘇生術後変化に関する多数の論文や講演など実績が豊富な石田尚利先生に執筆をお願いしました。
第2章と第3章は,それぞれ内因死,外因死の「各論」Ai症例集です。ここでは,総論の知識を前提として生前の病態を推定し,死因を評価しています。以前のAi症例集では症例を全国から募集していました。しかし,今回はコロナ禍のために,そうすることが難しかったため,5施設(五十音順に,筑波剖検センター,東京大学,鳥取大学,新潟大学,福井大学)からそれぞれ10症例の症例報告をご執筆いただきました。これらの症例は病理解剖と法医解剖の混成で,各施設の特徴がよく現れています。
第4章はAiに関する「FAQとそれらに対する回答」です。当初募集したAiに関する疑問の中から読者の関心が高いであろうQ&Aを精選し収載しました。疑問への回答は第1~3章内にもコラムとしてまとめてあります。
前述の通り,この本は計画から出版まで約5年の歳月がかかりました。難産の末に完成した本書は,Aiに携わる方々にとって非常に有用なものとなったことと自負しています。その間,方向性を示してくださった後藤様,内容の変更を快く承諾し,新たに症例をご執筆していただいた先生方に深く感謝します。
2024年6月
塩谷清司・髙橋直也