RRSを導入し、効果的に運用するためには?
急性期充実体制加算の算定要件に組み込まれ、多くの施設において導入が求められているRRS(Rapid Response System:院内迅速対応システム)。これからRRSを導入する、あるいは導入できたが効果的に運用されていない施設の救急・集中治療分野の医師・看護師等に向け、運用に必要な要素をストラクチャー、プロセス、アウトカムに分けて押さえておくべき項目を解説。RRSの障壁に対する解決方法や運用のコツ、実際に使われているマニュアルや記録用紙など、日本独自の知見と資料も盛り込む。
プロローグ
なぜRRSが急性期充実体制加算に組み込まれたか
Part 1:どんなRRSが求められているのかを理解しよう〜急性期充実体制加算の目的は?〜
防ぎ得る死亡をゼロにするRRS
医療の質を向上させるRRS
医療費を抑えるRRS
働き方改革を支えるRRS
医療安全文化を醸成するRRS
患者中心の医療を推進するRRS
Part 2:押さえておくべきポイントと項目を考える
概論:RRSの4要素と概略
◆ストラクチャー
RRS運営委員会の役割
対応チームの構成
起動基準:track and triggerの方法
コラム EWSに潜む問題点と対応策:起動の課題はバイタルサインの機械的測定で解決されるか
必要な物品の確認
運用時間および対象病棟
◆プロセス
運営マニュアルの作成
起動方法とその周知方法
RRSの院内への教育と定着
◆アウトカム
起動時の記録記載およびデータ収集
測定すべきアウトカム指標
レジストリ参加の考慮
Part 3:運用例
運用例1 千葉大学医学部附属病院
運用例2 北里大学病院
運用例3 神戸市立医療センター中央市民病院
運用例4 聖マリアンナ医科大学病院
運用例5 南部徳洲会病院
Part 4:RRS導入後にまつわる問題とその解決方法
RRSの導入に反対するスタッフがいる
対応チームの人員が確保できない
起動件数が増えない
起動が遅い
何をもって効果があるとするか
DNAR指示にまつわる対応はどうすればよいか
エピローグ
RRSの今と未来
用語集
索引
1995年にオーストラリアより初めてmedical emergency team(MET)の報告がなされ,今年で約30年が経過する。すでにRRSは医療安全の重要な柱としてその地位を確立しており,2022年度の診療報酬改定における急性期充実体制加算の新設を受けて日本でも院内迅速対応システムrapid response system(RRS)の導入は急速に進んでいる。筆者がRRSに携わるようになった2012年当時は,RRSという単語すら知らない医療従事者が多く,その発展には万感の思いである。
しかし,RRSの導入はしたが,うまく運用ができておらず,課題を抱えている施設も多い。RRSは,導入するだけでは効果は乏しく,形だけのRRSとなってしまっている現状に困っている仲間も多い。『RRS運用サポートブック:実践ですぐに使える運用のコツ』は,効果的にRRSを運用し,かつ,急性期医療において非常に重要な病院収益源となる「急性期充実体制加算」を的確に取得することを目指すための手引き書である。RRSの基本的な知識から,具体的なマニュアルや対策,エビデンスではみえてこない各施設のノウハウなどを,日本で先進的にRRSに取り組んできた多くの仲間たちが語り尽くしている。ガイドラインなどでは記載できない現場の声は,実際に直面するであろう課題や問題点に対して答えを探す一助となるであろう。
RRSは近年,院内心停止を予防するセーフティネットの役割から,よりよい医療を提供するための重要なツールへとその目的を進化させてきている。本書を通じて,読者がRRSの運用に関する理解を深め,実践的なスキルを身につけることで,急性期医療の現場においてより効果的かつ持続可能なRRSを構築していただけることを願っている。そして,予期せぬ悪化により不幸な転帰をたどる患者とその家族,そしてその診療にあたっていたことで心を痛める医療従事者が一人でも減らすことができればと期待する。
監修者・編集者を代表して
内藤 貴基