特集:Respiratory ECMO2.0
2009年のH1N1インフルエンザパンデミック以降,呼吸ECMOの実施数は世界的に増加しました。日本の集中治療の現場でも「ECMO」が認識され,日本集中治療医学会および日本呼吸療法医学会によるECMOプロジェクト参加施設を中心に,長期管理向きの機器の普及,教育による人材育成,呼吸ECMO症例の集積と精力的な活動が展開されました。この時代は我が国にとってver 1.0であったと言えます。
未曾有のCOVID−19パンデミックでは,日本国内各地域のECMOサージキャパシティを大きく上回る重症呼吸不全患者が発生し,未経験もしくは経験の乏しい施設でもECMOの導入・管理をしなければならない災害医療的状況に陥りました。これらに対し,NPO法人日本ECMOnetによる継続的な教育活動や診療支援活動が行われ,重症COVID−19患者に対するECMO治療は欧米と比較しても良好な成績を残すに至りました。本邦の呼吸ECMOは診療の裾野を大きく広げ,質の維持向上もはかられ,ver 2.0へ大幅に進歩したと言えます。本特集は,本誌を読み終えたときに呼吸ECMOの知識がワンランク上にアップデートされるように構成しました。「COVID−19によるARDS」だけでは経験できなかった呼吸ECMOの真髄,伸び代,奥深さを存分に味わうことのできる1冊になればと考えています。
INTENSIVIST0号(創刊当時の座談会の模様)はこちら
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1.巻頭言:COVID−19パンデミックを経たrespiratory ECMOの現在地
竹田 晋浩 かわぐち心臓呼吸器病院/日本ECMOnet理事長
ECMO合併症を治療段階で整理する
2.VV ECMO管理総論 :respiratory ECMO管理の鍵は安全の担保である
清水 敬樹 東京都立多摩総合医療センター ECMOセンター
3.導入期 重症ARDS患者に対するVV ECMOの導入とタイミング:ECMO:First“R”
市場 晋吾 日本大学医学部附属板橋病院 麻酔科・集中治療室
4.導入期 configurationとcannulationを「深く」考える :理想(理論値)と現実(実臨床)
藤田 健亮 済生会宇都宮病院 救急・集中治療科/栃木県救命救急センター
小倉 崇以 済生会宇都宮病院 救急・集中治療科/栃木県救命救急センター
5.維持期 御せよ!ECMO装置のトラブル:サーキットチェックを制する者はECMOを制す
濱口 純 東京都立多摩総合医療センター ECMOセンター
6.維持期 抗凝固管理の基礎と合併症:治療と評価の手段を識り,患者と病態を知る
服部 憲幸 千葉大学大学院医学研究院 救急集中治療医学
7.維持期 VV ECMOにおける肺保護戦略:完全lung restから個別化時代へ
岩永 航 浦添総合病院 救命救急センター
8.長期ECMO 合併症の予防とawake ECMO:prolonged ECMOからawake ECMOへ,でもその前に
原 嘉孝・中村 智之・西田 修 藤田医科大学医学部 麻酔・侵襲制御医学講座
Respiratory ECMOの生理学:人体とECMOの相互作用を理解する
9.ECMO開始時の生理学的変化:ECMO初期設定のコツとリスク管理:臨床応用への実践的アプローチ
大下 慎一郎 広島大学大学院 救急集中治療医学
10.respiratory ECMO管理中の低酸素血症はなぜ起こるのか?:DO2,VO2の構成要素から考える
文屋 尚史 札幌医科大学医学部 救急医学講座
11.VV ECMOにおける右室傷害:心肺連関に基づいた右心保護戦略
萩原 祥弘 済生会宇都宮病院 救急・集中治療科/栃木県救命救急センター
12.安全ですみやかなweaningのためのアートとサイエンス:いつ開始して,何を見るのか? 知られざる合併症の実態は?
谷口 隼人 横浜市立大学附属市民総合医療センター 高度救命救急センター
13.ECMO管理中の出血原因として忘れてはいけない4つの病態:出血性合併症の上流には何が隠れているのか?
星野 耕大 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 救命救急センター
14.特別企画:エキスパート施設に聞く!respiratory ECMO管理の11の質問
大下 慎一郎・清水 敬樹・濱口 純・萩原 祥弘・文屋 尚史
コメンテーター:岩永 航・萩原 祥弘・櫻谷 正明 JA広島総合病院 救急集中治療科
【コラム】海外ECMOセンター紹介:ECMO基礎研究と海外留学
劉 啓文 The Prince Charles Hospital, Critical Care Research Group/
The University of Queensland, Institute for Molecular Bioscience/
NPO法人集中治療コラボレーションネットワーク
【コラム】海外ECMOセンター紹介:米国におけるmechanical circulatory supportトレーニングの開放
小畑 礼一郎 Cardiothoracic Critical Care Anesthesiology Fellowship
Cleveland Clinic Foundation
連載
■え?知らないの?ネブライザの使い方
〈シリーズ構成:上岡 晃一 東京医科大学病院 臨床工学部〉
礒本 泰輔 兵庫医科大学病院 臨床工学部
■ 集中治療に関する最新厳選20論文
田邊 翔太 松江赤十字病院 救急部
吉田 英樹 聖マリアンナ医科大学 救急医学
2024-09-26
【正誤表】下記の箇所に誤りがございました。ここに訂正するとともに, 読者の方々に深くお詫びいたします。
378ページ,見出し「VV ECMOの管理中のPEEP設定」の本文1行目
(誤)ARDS患者にへのVV ECMOを導入すると
(正)ARDS患者にVV ECMOを導入すると
379ページ,左段の本文 下から11行目
(誤)PEEPを負荷るべきかという疑問の
(正)PEEPを負荷するべきかという疑問の
414ページ,左段の本文 下から7行目
(誤)モニやリング
(正)モニタリング
429ページ,図7の横軸のラベル
(誤)ひろげる 時間(min)
(正)時間(min)