Hospitalist(ホスピタリスト)2023年4号

特集:STI/HIV



STI/HIVは、ある日突然、あなたを訪れる



性感染症(STI)は、性活動性のある集団においてはコモンディジーズですが、確実に拾い上げられているとはいいにくく、過小評価されている可能性があります。医師の「専門外だから自分の前には来ないであろう」という認識の低さも影響していると感じます。日本でも近年では特に梅毒の増加が大きな問題になっていますが、ある日突然、自分の前に患者が訪れても不思議ではない状況となっています。

 STIの診療では早期の確実な診断が重要です。患者は、もちろん最初から専門家を直接受診することもありますが、STIという認識がないままプライマリ・ケア医を受診したり、出ている症状に合わせて臓器別診療科を受診したりすることも少なくないのです。このような非専門医の臨床の場で、早期診断と確実な診断を行い、治療につなげるためには、医師があらかじめSTIの正しい疾患知識をもち、一般的なアプローチの方法を理解して、常に備えをしておくことが重要です。

 また、STIのなかでもHIV感染症は特に専門性が高く、多くの非専門の医師は敬遠しがちです。HIV治療の領域の進歩は目覚ましく、抗レトロウイルス療法(ART)で使用される薬剤がアップデートされてきたことで予後が大幅に改善し、「長期合併症を管理する時代」に突入しています。すなわち、ARTが導入されて軌道に乗り安定していれば、定期外来では他の慢性疾患を抱えている患者と同様の総合内科的アプローチが大きなウエイトを占めるようになってきていることを感じます。AIDSの診療は専門性が高く、治療にはそれ相応の知識や経験が必要になってきますが、初診医が拾い上げて診断し専門家につなげることがやはり重要で、その判断を行う場所が非専門家の臨床の場であることもしばしばあります。

本特集は読者の皆さんにSTIとHIVをより身近に感じてもらい、「自分の前にこれらの患者が来るかもしれない」という問題意識が芽生えることで、実際に臨床現場で「ピンときて」診断ができ、治療につなげてもらうことを目標にしています。

¥5,060 税込
責任編集:織田 錬太郎(東京都立多摩総合医療センター 感染症内科)・野木 真将(亀田総合病院 総合内科/The Queen’s University Medical Group)・清田 雅智(飯塚病院 総合診療科)
ISBN
978-4-8157-2046-9
刊行年月
2024年10月
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はじめに|STI/HIVは、ある日突然、あなたを訪れる:より身近に感じるための1冊
  織田 錬太郎 東京都立多摩総合医療センター 感染症内科

Part 1 STI:症状からのアプローチを中心に
1. STIの初期アプローチ:“Silent Pandemic”をもたらしている要素に注目する
  椎木 創一 沖縄県立中部病院 感染症内科
2. 梅毒:古くて新しい“The great imitator”―最近の傾向と対策
  谷崎 隆太郎 市立伊勢総合病院 内科・総合診療科
[コラム①]風土病性トレポネーマ症:yaws(イチゴ腫)、bejel(べジェル)、pinta(ピンタ)
  篠原 浩 京都大学大学院医学研究科 臨床病態検査学/京都大学医学部附属病院 検査部・感染制御部
3. 淋菌、クラミジア:疫学、臨床像、診断と治療のポイント
  嶋崎 鉄兵 杏林大学医学部付属病院 感染症科
4. STIを症状からアプローチする① 咽頭炎・扁桃炎・口腔内病変とSTI:耳鼻科医が診るSTI
  余田 敬子 東京女子医科大学附属足立医療センター 耳鼻咽喉科
5. STIを症状からアプローチする② 排尿時の違和感・痛みをみたら:尿道炎におけるSTIのマネジメント
  的野 多加志 佐賀大学医学部附属病院 感染制御部
6. STIを症状からアプローチする③ 性器に潰瘍があったら:原因疾患ごとの特徴と診断方法
  長命 友梨・西村 翔 兵庫県立はりま姫路総合医療センター 感染症内科
7. STIを症状からアプローチする④ 腸炎から疑うSTI:感染部位の4つの分類から整理する
  松尾 裕央 大阪大学医学部附属病院 感染症内科
8. エムポックス(Mpox):基礎知識と日本での対応状況の整理
  石金 正裕 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター/WHO協力センター
9. 女性における陰部のトラブル:帯下異常、腹痛、ならびに妊娠と性感染症
  柴田 綾子 淀川キリスト教病院 産婦人科
[コラム②]STIガイドラインの国際比較:包括的ケア、経験的治療開始の扱いの差に注目
  三高 隼人 Division of Allergy and Infectious Diseases、 Department of Medicine、 University of Washington School of Medicine

Part2 HIV
10. HIV感染症の診断:早期診断・早期治療のためのポイントと診断後のケア
  福島 一彰 がん・感染症センター都立駒込病院 感染症科/感染制御科/感染対策室
  柳澤 如樹 柳沢クリニック/国立国際医療研究センター
[Special Article]私が経験してきたHIVの歴史
  青木 眞 感染症コンサルタント
11. ART概論:「全例早期治療」「U=U」「PrEP」の時代
  塚田 訓久 埼玉医科大学総合医療センター 感染症科・感染制御科
12. AIDS総論・日和見感染症の初期評価:CD4数のモニタリングが重要なパラメータになる
  吉川 寛・谷口 俊文 千葉大学医学部附属病院 感染症内科
13. おさえておきたい日和見感染症(臓器別)①
  呼吸器疾患(ニューモシスチス肺炎):日本のHIV感染者の日和見感染症の半数近くを占める
   黒田 浩一 神戸市立医療センター中央市民病院 感染症科
  呼吸器疾患(ニューモシスチス肺炎以外):細菌性肺炎・クリプトコッカス症・CMV肺炎を中心に
   黒田 浩一
14. おさえておきたい日和見感染症(臓器別)② 中枢神経疾患:臨床症状/経過、CD4数、画像的特徴の3つの軸で鑑別を絞り込む
  北浦 慧 東京大学医学部附属病院 感染制御部
  岡本 耕 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野/東京医科歯科大学病院 感染症内科・感染制御部
15. おさえておきたい日和見感染症(臓器別)③ 消化管疾患:CD4数が低いからといって、慌ててすべての検索をする必要はない
  村上 義郎・大路 剛 神戸大学附属病院 感染症内科
16. おさえておきたい日和見感染症④ 抗酸菌感染症(結核・非結核性抗酸菌症):残存免疫の応答性の違いにより、非HIV症例とは異なる非典型的な症状となる
  照屋 勝治 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター
17. おさえておきたい日和見感染症⑤ ヘルペスウイルス関連疾患:CMV、EBV、HHV-8を中心に
  村松 崇 東京医科大学病院 臨床検査医学科
18. HIV陽性者と悪性腫瘍・悪性リンパ腫:ART時代にクローズアップされる重要なトピック
  田中 勝 がん・感染症センター都立駒込病院 感染症科
19. HIV感染者の外来診療・ワクチン:非AIDS関連疾患のマネジメントがフォーカスされてきている
  三輪 俊貴 東京大学医学部附属病院 感染症内科
  高松 茜 聖路加国際大学 公衆衛生学研究科
  本田 仁 藤田医科大学 微生物学講座・感染症科
[コラム③]米国におけるHIV研修の実際:感染症フェローシップのなかでHIV研修は中心的な役割を果たしている
  松尾 貴公 テキサス大学ヒューストン校/MDアンダーソンがんセンター 感染症科

【連載】
Clinician Update
  官澤 洋平・石丸 直人 愛仁会明石医療センター 総合内科

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