特集:輸血のすべて
知識の整理と臨床に役立つ23のトピックス
輸血療法は日常診療でも比較的多く経験しますが,貴重な血液製剤を使用し,多くの副反応・合併症に注意が必要な侵襲的治療といえます。
学生時代に学習した基礎知識や生理学は,輸血を安全に行ううえで必要不可欠です。そのうえで,各製剤を実際に臨床で使用していくには,エビデンスに基づいたガイドラインを熟知し,副反応とその対策をも理解しておかなければなりません。また,総合診療医として特殊な状況・環境での対応を求められることもあり得ます。
本特集号は,これを読むことで輸血の基礎が理解できるだけでなく,生理学とエビデンスに基づいた輸血療法が実践できる,日常診療の疑問を解決できる,文字どおり「輸血のすべて」を知ることができる珠玉の一冊を作り上げたいと考えて企画しました。また,厚生労働省などが発表している指針やガイドラインの紹介にとどまるのではなく,生理学やエビデンスに基づいた臨床的考察を加えることで,Hospitalist誌らしい内容を目指しています。
Part 1 輸血療法のすべて
1. 輸血の過去,現在,未来:特集のイントロダクションを兼ねて
松本 雅則 奈良県立医科大学 輸血部・血液内科
2. 輸血用血液製剤:血液採取から製剤供給までの概要
谷 慶彦 日本赤十字社血液事業本部 中央血液研究所
3. 輸血検査:安全な輸血療法の準備と実践
奥田 誠 東邦大学医療センター大森病院 輸血部
[コラム①]血液型不適合妊娠:2つの病態,予防と治療の臨床
三島 隆 札幌厚生病院 婦人科・生殖内分泌科・遺伝相談科
4. 輸血副反応:診断と対処方法,よくある疑問
岡崎 仁・池田 敏之 東京大学医学部附属病院 輸血部
Part 2 血液製剤の使用
5. 赤血球製剤:適応と輸血閾値の考え方・実践
園木 孝志 和歌山県立医科大学医学部 血液内科学講座
[コラム②]溶血性貧血に赤血球輸血は禁忌か?:病勢や併存疾患によっては制限輸血を検討する
藤原 慎一郎 自治医科大学附属病院 輸血・細胞移植部
[コラム③]ヒトはどこまで貧血に耐えられるか?:赤血球輸血の目的である「酸素需給バランス」の視点から
足立 一真 松江赤十字病院 集中治療科
宇賀田 圭 松江赤十字病院 集中治療科
田邊 翔太 松江赤十字病院 救急部
6. 血小板製剤:目標血小板数の考え方・実践
高見 昭良 愛知医科大学 血液内科
[コラム④]血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)に血小板輸血は禁忌か?:血小板補充目的の血小板輸血は有害となる可能性が高い
酒井 和哉 奈良県立医科大学 輸血部
7. 新鮮凍結血漿:大量出血時や,他の手段で賄えない凝固因子の補充に用いる
長谷川 雄一 筑波大学 血液内科
8. アルブミン製剤:ガイドラインにおける適応と使用の実際
野﨑 昭人 横浜市立大学附属市民総合医療センター 輸血部
[コラム⑤]血漿交換:目的と効果,施行の実際
上田 恭典 倉敷中央病院 血液内科
9. その他の血液製剤:血漿に含まれるタンパク質が出血性・血栓性疾患の治療に用いられている
大森 司 自治医科大学医学部生化学講座 病態生化学部門
[コラム⑥]抗凝固薬の拮抗:新たな拮抗薬とその使い分け
窓岩 清治 東京都済生会中央病院 臨床検査医学科
[コラム⑦]免疫グロブリン:感染症:感染症における免疫グロブリンの生理学と,限定的なエビデンス
島田 侑祐・片岡 惇 練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
[コラム⑧]免疫グロブリン:自己免疫疾患:ステロイドや血漿交換にはない強みがある
五島 隆宏 藤田医科大学病院 救急総合内科
Part 3 特殊な状況での輸血
10. 大量出血:産科:実際の出血量と相関するバイタルサインで評価
松永 茂剛 埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター
11. 大量出血:外傷:大量輸血プロトコルを軸とした重症外傷患者への輸血戦略
前澤 翔太 大崎市民病院 救急科
久志本 成樹 東北大学病院 救急科・高度救命救急センター
12. 大量出血:手術:フィブリノゲン値の回復・維持が治療の主軸となる
香取 信之 東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座
[コラム⑨]トラネキサム酸:さまざまな状況下における投与の有効性
林 碧・吉野 俊平 飯塚病院 集中治療科
13. へき地,離島,在宅での輸血:いざというときの院内血輸血と在宅輸血を中心に
小川 将也 隠岐病院 総合診療科
田邊 翔太
[コラム⑩]宗教的理由による輸血拒否:絶対的無輸血か,相対的無輸血か:まずは施設の方針を決めておく
野村 悠 川崎市立多摩病院 救急災害医療センター
【連載】
Clinician Update拡大版①
官澤 洋平・石丸 直人 愛仁会明石医療センター 総合内科
Clinician Update拡大版②
官澤 洋平・石丸 直人