2025年2月中旬発売予定!
感染症コンサルトのよくある疑問を解決!
感染症のコンサルトにおいて頻繁に遭遇するトピックをQ&A形式でまとめた実践的ガイドブック。コミュニケーションの重要性に触れつつ、ブドウ球菌をはじめとした各種菌、ウイルスの微生物ごとの項目、心血管系や呼吸器などの解剖学的部位別の病態ごとの項目を全15章に収載。コンサルトする側とされる側、双方の知りたい事柄が満載。感染症医をはじめ総合内科医やそれらを目指す研修医・専攻医、薬剤師など感染症診療に関わる医療従事者の日々の診療に役立つ。
第1章 序章
第2章 ブドウ球菌感染症
第3章 その他のグラム陽性菌感染症
第4章 グラム陰性菌感染症
第5章 真菌感染症
第6章 抗酸菌感染症
第7章 HIV感染症
第8章 ウイルス感染症
第9章 心血管系感染症
第10章 呼吸器感染症
第11章 腹腔内感染症
第12章 頭頸部感染症
第13章 筋骨格系感染症
第14章 皮膚軟部組織感染症
第15章 泌尿生殖器感染症
索引
訳者序文
「感染症科では実際にどのような診療をしているのだろうか?」
私が後期研修医として内科全般,消化器,呼吸器,循環器などの専門科研修をしていた時期に,多くの医師が影響を受けたであろう青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』(医学書院)や岩田健太郎先生の『抗菌薬の考え方,使い方』(中外医学社)に出合い,当時,私の周囲では全く存在していなかった感染症を専門とする医師の診療に興味をもち,それが契機となり,感染症医として診療,コンサルトに携わるようになった。
この20年ほどで,まだまだ充足しているとはいい難いが,感染症を専門にする医師は増え,さらにコロナ禍を経て,感染症医の存在は日本国内でも認知されるようになったと感じる。大学に感染症科が設置されるようになり,医学生の時期から感染症診療の原則や抗菌薬の適正使用などに馴染んできた世代が医師になっており,カンファレンスでの発言内容なども私の学生,初期研修医時代を思い返すと隔世の感がある。
感染症の良書も増えており,時々,研修医からどの本で学ぶべきか問われるが,どれで学んでも間違いはなく,自身の好みで選んで問題ないように感じる。私は臨床医であり,日々の臨床に直接役に立ったと感じるのはこのような医学書や雑誌からであった経験が多い。論文などの原著の大切さはもちろん変わらないが,個人的には今でも医学書の存在は重要視しており(ここに異論がある方がいるかもしれないが,あくまでも個人の感想なのでスルーしていただけると有難い),また,著者の特徴が表れる内容にも興味がある。
海外の書籍も参考になったものは多く,そのなかの1つとして感染症科医が身近にいなかった当時の自分が日常診療の答えを探すような気持ちで通読したものとして“Reese and Betts' A Practical Approach to Infectious Diseases”を真っ先に思い出す。このような洋書は英文であることがネックとなって敬遠されることも見受けられるが,日本語で読みやすいように訳されて書店に並んでいる本も多くみかけるようになり,それぞれの訳者が役立ったと感じた内容を広く届けたいという思いが少なからず存在するのではないかと推測する。
“The Infectious Diseases Consult Handbook : Common Questions and Answers”はそのような私が出合った洋書の1つである。感染症医として診療する場合,他科からのコンサルトは主たる業務となるが,まず,それをタイトルとしていることに興味をもった。原著者が感染症コンサルトで経験した内容をQ&A形式で示し,それに付随する内容が文献を交えて紹介されている。
15章で構成されており,序章として感染症科の日常業務,コンサルタントとしてのコミュニケーションの重要性に触れつつ,第2章からブドウ球菌,グラム陰性菌,真菌,抗酸菌,ウイルスなどの微生物ごと,第9章から心血管系,呼吸器,腹腔内感染症など病態ごとの内容を扱っている。日進月歩の医学の世界で,このような書籍,文献はある一定期間で賞味期限がきれるような感覚をもつ方もいるだろうが,現時点のある程度まとまった内容が1冊でざっくりと確認できることには,それなりに意味があると感じている。
Q&A形式であり,気になる部分から読んでもよいし,章ごとの順番に読んでもよい内容である。感染症診療に興味のある読者であれば誰でも対象になると思っているが,医師だけでなく,抗菌薬適正使用支援チーム(AST)活動にかかわる薬剤師,臨床検査技師,看護師にとっても実践的で,興味をそそられるような内容を含んでいると思う。また,少し注釈をつけたい部分には,私なりのコメントを残しているので,うなずいて読んでもらってもよいし,批判的に人それぞれの違いを感じてもらってもよい。疑問に思った内容に関しても引用文献を実際に確認し,コメントで訂正,追記をしている。
今回1人で翻訳し,正直なかなか骨の折れる作業ではあったが,翻訳につきものの表現の問題はある程度統一感をもたせて,解決したように感じている。また,英語独特の言い回しもなるべく日本語としてスッと入ってきやすいように工夫をしたつもりであるが,そこに抵抗がある人は原著で読んでもらうほうがよいかもしれない(が,私が購入したときは原著が2万5千円弱であり,この翻訳本の4~5倍の定価であったことは言及しておく)。
多くの感染症診療に携わる人に読んでもらい,日々の臨床に活かされることを切に願っている。
渋江 寧
横浜市立みなと赤十字病院
感染症科部長・感染管理室長・医療安全推進室副室長