臨床試験方法論 - エビデンス創出のための試験デザインと統計解析 -

  • 未刊

2025年2月中旬発売予定!



幅広い分野のさまざまなニーズに応える、臨床試験の道しるべ

医師等の医療従事者や治験の実務担当者、医学系大学院生など臨床試験に関心のあるすべての方に対し、臨床試験の計画、実施、解析に関する基礎知識をコンパクトに体系立てて解説する教科書。試験デザインや統計解析法など臨床試験の方法論を理解することに特化。数式は多用せず、概念の明確化を助けるもののみに使用。また、入門書では触れられることの少ない新しい試験デザイン(B a y e s 流アプローチ、アダプティブ臨床試験、マスタープロトコル試験)も収載。

¥3,520 税込
平川 晃弘 東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 臨床統計学分野 教授
ISBN
978-4-8157-3122-9
判型/ページ数/図・写真
A5変 頁176 図52 2色
刊行年月
2025年2月
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1章 臨床試験概論
 1.1 臨床試験の原理・原則
 1.2 臨床研究の種類
 1.3 臨床試験に関する規制
 1.4 医薬品開発における臨床試験

2章 臨床試験の基本デザイン
 2.1 対照群の必要性
 2.2 医薬品開発におけるプラセボ群の設定
 2.3 並行群間比較試験
 2.4 クロスオーバー試験
 2.5 被験者内同時比較試験
 2.6 被験者内前後比較試験  
 2.7 外部対照比較試験 
 2.8 ランダム化中止試験 
 2.9 エンリッチメントデザイン
 2.10 要因デザイン
 2.11 クラスターランダム化試験

3章 医薬品開発における用量反応関係の評価
 3.1 用量反応情報
 3.2 用量範囲試験と用量反応試験
 3.3 用量反応関係を評価する並行群間比較デザイン
 3.4 用量反応関係を評価する統計手法
 3.5 抗悪性腫瘍剤の用量探索デザイン

4章 優越性試験,非劣性試験,同等性試験
 4.1 比較の形式
 4.2 優越性試験
 4.3 非劣性試験
 4.4 同等性試験

5章 盲検化とランダム化
 5.1 盲検化
 5.2 非盲検試験
 5.3 二重盲検試験
 5.4 ランダム化

6章 評価項目の設定
 6.1 評価項目の設定
 6.2 評価項目のデータタイプ
 6.3 複合エンドポイント
 6.4 代替エンドポイント
 6.5 患者報告アウトカム

7章 統計解析法の選択
 7.1 PICECARの設定
 7.2 統計解析計画書の作成
 7.3 統計解析法の選択
 7.4 検定の多重性
 7.5 解析対象集団
 7.6 Estimand

8章 サンプルサイズ設計
 8.1 サンプルサイズ設計の必要性
 8.2 仮説検定と検出力
 8.3 サンプルサイズの計算

9章 臨床試験のためのBayes流アプローチ
 9.1 頻度流アプローチとBayes流アプローチ
 9.2 事前分布と事後分布
 9.3 Bayes流アプローチを利用する理由
 9.4 Bayes流アプローチ利用時の留意点
 9.5 Bayes流アプローチの利用が想定されるケース

10章 アダプティブデザインに基づく臨床試験
 10.1 アダプティブデザイン
 10.2 群逐次デザイン
 10.3 サンプルサイズ再設定
 10.4 シームレス第2/3相デザイン
 10.5 アダプティブランダム化
 10.6 アダプティブ・エンリッチメントデザイン
 10.7 臨床試験シミュレーション
 10.8 データモニタリング委員会

11章 マスタープロトコルに基づく臨床試験
 11.1 臨床試験の効率化
 11.2 抗悪性腫瘍剤開発の変遷とマスタープロトコル
 11.3 マスタープロトコル試験
 11.4 バスケット試験
 11.5 アンブレラ試験
 11.6 プラットフォーム試験

参考図書
索引

はじめに

臨床試験方法論(clinical trial methodology)とは,科学的かつ倫理的な枠組みのなかで,医薬品などの新規治療法の有効性および安全性を評価するための試験デザイン,統計解析,データ管理,試験運用,規制要件など,臨床試験に関する原理・原則と手法・技巧を扱う学問です。
 本書は,日本における臨床試験方法論の教育の現状をふまえ,その発展と推進を目指して執筆しました。近年,医療技術の進歩とともに新薬の開発や医療機器の革新が急速に進んでおり,それに伴い臨床試験方法論の重要性も一層高まっています。しかしながら,日本における臨床試験方法論の教育や研究開発は,依然として欧米諸国に後れを取っているのが現状です。筆者は,日本の創薬力を向上させ,産業競争力を強化するためにも,臨床試験方法論の教育と研究開発が極めて重要であると考えています。しかし日本において,これらに精力的に取り組んでいる大学や研究機関はごくわずかです。
 医師や研究者が質の高い臨床試験を実施しエビデンスを創出するためには,臨床試験の計画,実施,解析に関する基礎知識と実践的スキルが不可欠です。また,製薬企業や開発業務受託機関(CRO),治験施設支援機関(SMO)は,それぞれが医薬品開発において重要な役割を担っており,これらの企業などで臨床試験(治験)に従事する方々には,臨床試験の計画から結果解釈に至るまでの一貫した高水準の専門知識が求められます。さらに,規制当局の審査官には,臨床試験の原理・原則の理解に加え,最新の臨床試験方法論に関する深い専門知識と豊富な審査経験が必要とされます。それにもかかわらず,日本において臨床試験方法論に関する教育の機会がほとんどないのは,憂慮すべき事態であると考えています。
 本書は,筆者が東京大学大学院医学系研究科 生物統計情報学講座に所属していた際に開講した修士課程向け大学院講義「臨床試験方法論」の内容に,最新の試験デザインと統計解析に関する解説を加えた入門~中級レベル向けの教科書です。現在,本書の内容を基礎とした講義は,東京大学だけでなく,東京科学大学や東京理科大学などでも実施されています。本書が,これから臨床試験方法論の基礎を学びたいと考えている方,すでに臨床試験に従事しているものの試験デザインや統計解析を体系的に理解したい方,アダプティブデザイン,Bayes 流アプローチ,マスタープロトコルといった発展的な試験デザインや統計解析のリテラシーを身に付けたい方など,それぞれのニーズに応える一助となることを心より願っています。
 本書は幅広い分野の読者を対象としているため,統計学的な条件や前提についての説明を割愛している部分や,統計学的な正確性,厳密性よりもわかりやすさを優先して解説している箇所があります。また,筆者の経験や考えに基づく主張も含まれており,臨床試験方法論としての客観的事実のみに依拠するのではなく,筆者自身の視点が反映された内容となっています。本書に不明瞭な箇所や主張の根拠が不十分な部分があれば,それはひとえに筆者の力量不足によるものであり,皆様からのご批判とご指摘を賜り,今後改良を重ねる所存です。
 筆者の目標は,日本の臨床試験の質と効率を向上させることです。本書が臨床試験にかかわるすべての方々にとって,実践的かつ有用な道標となることを心より願っています。そして,本書を通じて日本の臨床試験の発展に寄与できることを期待しています。
 最後に,東京科学大学大学院 臨床統計学分野の佐藤宏征先生,花澤遼一先生,北林遼先生には,原稿を丁寧に査読いただき,数多くの有益な意見をいただきました。また,本書の企画,編集,出版に際しては,株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナルの荻上朱里氏,金子史絵氏にご尽力いただきました。末筆ながら心より感謝の意を申し上げます。

2025 年1 月吉日
平川 晃弘

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