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 徹底分析シリーズ

術後回復力増強(ERAS)プロトコール

ERAS(enhanced recovery after surgery)プロトコールは,ヨーロッパ静脈経腸栄養学会を中心に手術患者の術後回復力を高めるために,それぞれにエビデンスのある各種の管理方法を集学的に実施することで,安全性の向上,術後合併症の減少,回復力の強化,入院期間の短縮,経費節減を目指したものです。周術期管理をチーム医療として見なすこのプロトコールのなかで,麻酔科医の占める役割は決して小さいものではありません。

今回,さまざまな視点から ERAS プロトコールを概説しましたが,すべてを日本で実施することには無理があるでしょう。しかし,取り入れることのできることは取り入れ,手術患者管理の質向上に向けることは大切です。本徹底分析をたたき台にして,日本版 ERAS プロトコールが作成され,外科医と麻酔科医,さらには看護師,管理栄養士,理学療法士など多職種の協力により周術期管理チームが構築され,手術患者の予後改善につながることを願っています。

大分大学医学部 麻酔科学講座
岩坂 日出男